Love little and love long.
「へえ…なんだか面白そう」
そう嬉々として俺が見ていたのは、パソコン。画面に映る「ラブ、大特集!」なんてありきたりな特集を見ていた。
いつもなら特に触れずに流すだけなのだが何故だか今日はチラリと目に入れてみようと思った。そういう気分だったんだ。
「えーと、なになに?」
あまり期待はしていないがこういうことにも多少は興味を持っている。
それが恋人がいるなら尚更だ。そして画面をスクロールしていき、目に留まったのがそれだった。
「“ヤキモチ大作戦”?」
そこの記事はどうやら恋人を妬かせてみようという内容だった。
興味を引かれた俺はそこにあった記事をすべて読破した。
「帝人君が妬いてくれたら嬉しいんだけど」
前髪を弄りながら一人呟いた。ヤキモチ大作戦、やってみたいな。
特集にあったのは長い髪の毛を用意して、彼女が自分の服を洗濯しようとしたら自分以外の女らしい長い髪が服に引っ付いていたとして、それで彼女が怒るか悲しむかどちらだろうという、まあ実に不誠実な内容だった。
しかし、彼女が自分にどういった反応をするのかは気になる。
「…人間、興味尽きたら終わりだしね」
やってみるか。にやり、普段自分が泥沼に追い込んだ人間を見るときと同じように口端を吊り上げた。
時刻は午後五時。日も暮れ、学校も終わり用のない生徒は下校している頃だろう。
もうすぐ帰ってくるであろう彼女のことを思うと顔のにやけが治まらない。
彼女はここに帰ってくる前にスーパーで買い物をしてくるのだろう。
そう確信して、それまでは寝ることにしよう。
──…これがいけなかった。
「帝人君…」
彼女を思うあまり夢と現実の区別までつかなくなってしまうとは、この時の俺は知る由もない。
俺は夢で自分がその“ヤキモチ大作戦”を決行しているのを見た。そしてそれが、夢ではなく、自分の無意識の内での行動だったことに、俺は気づかなかったんだ。
惰眠を貪っていたと思っていた自分がまさか、半分寝ぼけて洗濯するコートにダミーである恋人以外の髪の毛をくっつけていたなんて──。
作品名:Love little and love long. 作家名:煉@切れ痔