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骨に刻んだ約束の証

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 白い頭蓋骨の額部分には何かしらの紋が刻み付けられていて、それを首の無い女が胸に抱く眼前の光景に帝人は、ほぅ、と息を吐く。
『私のじゃない、君の骨だ』
 セルティ・ストゥルルソンと名乗った首の無い都市伝説に国道沿いのマンションへ連れて来られ、白骨を見せられ、部屋の主である岸谷新羅という白衣の男を加えて招かれた理由として説明された話は、
「つまり僕の前世は異形使いの女の子で、貴女とも契約していたので再契約を、ということですか?」
物凄いオカルトだった。帝人の要約にセルティは影を揺らめかせる、どうやら肯定しているらしい。
「ごめんなさい、信じられません」
『まあそうだろうな』
目の前にいる女性に首が無かろうと、それにも拘らず活動していようと、白骨に読めない何かが刻まれていようとも、帝人にとって彼女の語る話が真実である証拠には成り得ない。首無しも白骨も非日常ではあるが、それとオカルトとは彼の中で完全な一致をしなかった。なので正直にそう伝える。
「証拠もないですし」
『この骨じゃ証拠にならないか?』
 余談だがセルティが説明している間に隣で僕も契約したい、寧ろ契りたい、と騒いだ新羅が殴られ影で縛り上げられ部屋の隅に放り出された。こちらも立派な非日常だがあまり深入りはしたくない類のそれなので見ず聞かずという事にしておく。なので新羅がそんな仕打ちを受けて尚、やや恍惚とした表情をしている気がするのも、セルティへの愛を喚きながらイモムシの如く這って来るのも全力で無視だ。ツッコミを入れたら限がないのでもう何があっても放っておく。
「石膏とかで作れそうじゃないですか」
『それもそうだが、そんな事を言われたら何もかも証拠にならなくなる』
「なら話を変えますけど、契約したとしてどんな利点があるんですか? 僕にだけでなく、貴女にも」
 おいしい話より信じられない事は無い、と強い口調で言いながら帝人はしかし、やはり口元に笑みを浮かべていて、そしてそれに気付いていない。非日常と親交が結べるのなら騙されたと思って契約しても良いとさえ思っているが、その反面で彼は常識を手放さない。ともすれば矛盾するその気性が、化け物でありながら例えば新羅よりは常識的なセルティに好ましく思われている事を帝人が知る由は無いが。
『ああそれは――――、その前に確認したいんだが、君は男の子だよな?』
「ええ、間違いなく」
 やっぱり、とセルティは分かり易く肩を落とす。
『私にとっての利点は自己満足なんだ、罪滅ぼしとでも思ってくれ。君にとっての利点、というか……』
これが私の目的でもあるんだが、という前置きに続く文章は、

『君が強姦されるのを防ぎたくて』

帝人の理解を超えていた。
「…………は、ぃ? え、何……?」
 彼女は何と言った、強姦、文面からすると襲われる側、襲う側でも問題だが己は男だ、どういう事だ、何事だ。
 理解を超えていた、というより理解したくなかったという方が正しいかも知れない。数え切れない程の疑問符が頭の中を埋め尽くす。
『子供を作る、って契約を結んでる奴がいたんだ。それが果たされる前に君は死んでしまった。多分、奴はまだ君を探してる』
ライダースーツを着込みフルフェイスのヘルメットを被った人物に肩を掴まれ見ず知らずのマンションに連れ込まれ首の無かったその人物に白骨を見せられても平然と、寧ろ目を輝かせていた帝人は本日初めて蒼白になった。
『女の子だったらそれはそれで危なかったけど事情が違うし、元はと言えばコレの所為だから』
コレ、と指されている方を見ればソファの下で未だにイモムシ状態で転がっている新羅がいる。
「僕が何かしたんじゃないさ、全くを以って身に覚えが無いよ。ただ今生で俺が男に生まれたのが君の言う前世の僕の仕業だというなら私に対してよくやったと言わざるを得ないかな、君と僕との間を阻む壁なんか無いに等しいからね。ああでも多少なりとも障害があった方が恋は燃えグハァッ」
セルティに蹴り飛ばされる新羅を見て帝人はいろいろと察した。
 恐らく新羅もセルティの言う前世は女性だったが何をどうしたのか彼女に恋をして今生が駄目なら来世でと何か仕出かした結果、帝人を、否、周囲にいた他者を巻き込んで現世に至るのだろう。話を聞いた今でも前世を信じていない帝人は己の性別など当然として気に留めた事すらなかった故に新羅を恨む心算はなかったが、
『男が孕むと出産の激痛でショック死するって言ったよな!? アイツが母体の都合なんて考えるわけないだろ! あの娘が女の子の儘だったら嫁にやるのは悔しいけど晴姿も見れたし死ぬ事も避けられたのにお前の所為で!!』
とてつもなく不安になった。
作品名:骨に刻んだ約束の証 作家名:NiLi