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楽園

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「私の傍にあったのはあの男だけだった!あの男だけが残っていたのにそれすら私を裏切り貶めたのだ!」
「残ったからこそお前のことを思ったのだ。ワシは刑部の執った策を断じて認めない。だが最後を見たからわかる。お前のためだ、お前を生かすことを考えた。世にある総てを呪い続けたあの男の真実がそれだ、……ワシにわかることが、お前にわからないはずはない」
「私のために私の手を裏切りに染めさせたと?私のために私を裏切り偽りを吐いたとでも!」
 刺し貫く視線を向けられても家康は動じない。
「そうだ。身勝手だ、我儘で卑劣で弱い行為だ、それでもそれが人間なんだ三成、……あの男は誰より人らしくお前を守ろうとした」
 かつてであれば綺麗事をと吐き捨てるだけで済んだ家康の言葉に、不意に眼から激昂をかき消した三成は小さく首を振って力無く告げた。
「貴様に何が、わかる……」
「ああ、……そうだな、三成。本当は、知っているのは、わかるのはお前だけのはずなんだ」
 だめだ、諦めるな。願いながら言い募る家康に、三成は疑いの眼を向けた。
「長曾我部を欺きこの地を潰し、貴様にその罪をなすりつけた。……なぜ貴様がその男を庇い立てする」
「そのつもりはない。……ただ、ワシはお前が」
 家康はふと言葉を切った。
 家康もまた、見えない答えを探している。それは今日の再会を決めた日からでもあったし、遠い昔に同じ旗の下で背を預け合い拳を振るう、あの頃からずっと抱えていたものかもしれなかった。
 この男を縛る鎖を断ち切るには、どうすれば。
「……お前をお前のままに生かすにはどうすればいいのか、……ワシは」
 言いかけた途端に三成が蹴りあげた砂が飛び、家康の眼を打った。子供の癇癪のような真似をした男は、家康が思わず眼を擦った隙に掴まれた腕をもぎ離し、身を翻すと振り向きもせず走り去ってしまった。



作品名:楽園 作家名:karo