青春その後
あ、でも冷静に考えてみたらエリオも一緒かな。ほんと、この二人は一緒にいると楽しそ
うなんだよな。喧嘩友達みたいな感じかな?外から見たらじゃれ合ってるようにしか見え
ないけど。
「うん、分かった。今からお伺いします。エリオも一緒でいいんだよね?」
『あ、いやいや!りゅうこさんのお部屋はとってもせませまなんですよ!人二人がせーいっぱい!それ以上入室するとお部屋の床がすっぽんぽんに!』
床が抜けるってか?どんなお部屋ですかそれは。まあ、リュウシさんが無理だと言うなら
エリオを連れて行くわけにもいかないな。幸いエリオは今夢の中に逆戻りしてるから電話
の話も聞こえてないみたいだし。聞こえてたら「私もなんとかリュウシと遊ぶ」とか言っ
て聞かないに決まってる。
しかし、女の子の口からすっぽんぽんとか聞くとエロちっくポイントの上昇が・・・そん
なポイントないんだけど。あれだな、エリオにずっと付きまとわれてたお陰でエロい本も
全然見てない所為だなきっと。
「どうゆう違法建築か分かりかねますが、そうゆう理由なら俺一人で行かしていただきますよ。ぜひ喜んで。」
あ、また最後にいらない事を。本音がぽろぽろ過ぎていかん。
『そ、そうですか!!ではでは、りゅうこさんはキャベツやイチゴやリンゴなどを用意して待ってますゆえ!!』
よかった、気にしてない。ってか、なんでイチゴやリンゴと並んでキャベツなんだ?
いまだにフルーツストの感覚は謎である。
その後すぐ電話を切り外出する準備に取り掛かる。っと言っても服着替えるだけなんだ
けどね。いやー、エリオの付き添いで田村商店行く以外、久しぶりの外出だなー
着替えもすぐ終わり、ルンルン気分で玄関に向かった。
っと、その前に今だリビングで夢の中のエリオに一言言って行かないとな。なんせ、今は
女々さんもいないからあいつ一人になっちゃうし。
「エリオ。起きろーエリオー」
「・・・んん。ん?」
眠たそうに眼を擦りながらこちらをボーっと眺める。
「俺ちょっと出かけて来るけど、ちゃんと留守番しとけよ?」
「イトコ、どこいくの?わたしも行く」
あー、これ言いだすと思った。さて、どーしたもんかなー・・・
「いや、春から通う大学の手続きにちょっと抜けがあってさ。それ確認しに行かなきゃいけないんだ。エリオが行ってもつまらんだろうし、留守番頼むよ。誰も家にいないのも心配だろ?」
いやー、見事に口から出まかせだ。いつの間にこんなに嘘つきになったんだろうな俺。
しかし、これが妖怪スマキンならば足蹴りにして有無を言わさず外出するのだが、今は布
団から脱皮した藤和エリオだ。どーしても強くは出れない。やっぱしこいつの出す粒子の
せいだろうか?
「うー・・・イトコ、いつ帰ってくる?」
げ、目が潤んでる。ざ、罪悪感が・・・こいつに嘘を付いて泣かしてしまいそうな自分
に罪悪感が・・・しかし、ここで挫けていては素敵な同級生でフルーツストのお部屋には
到達できない。ここは涙を飲んでエリオをなだめて行くしかないだろう。
「晩飯までには帰ってくるよ。そんなに遅くならないから。」
「ん。分かった。約束ね」
少し潤んだ水色の瞳でにこやかに笑顔を作って俺と約束をした。
こいつはほんとに表情が豊かになったな っと実感。2年の文化祭。あの二条オワリ
のステージ以来、こいつは飛躍的に表情が多くなった。周りから話しかけられる事が多く
なったお陰だろうか。人見知りはまだまだ直るには至ってないが、ここまで表情を多く作
れるようになったのはこいつの一番の成長だと思う。
数週間前からの自由登校から一緒にいる時間が格段に増えたが、そこで改めて気付かされ
たのである。ほんと、いい感じに地球人・藤和エリオだ。
「ああ。じゃあ、いってきます。」
「いってらっしゃい」
豊かになった表情を惜しみなく使い、俺にそう言って送り出してくれた。
少しの罪悪感と初めてお邪魔する素敵な同級生のお部屋に対するドキドキを抱えながら、
自転車を引っ張りだして全力でペダルを漕ぎ、まだ少し寒い町を駆け抜けて行った。
自転車を全力疾走して約20分。俺は今、御船家の前にいる。
この町は都会サイドと田舎サイドに別れていて、藤和家は田舎サイド、御船家は都会サイ
ドなので多少時間がかかるのだ。ちなみに、都会サイドと田舎サイドは微妙に対立がある。
まるでとあるラノベみたいだよね。俺の右腕になんちゃらブレイカーがあれば、この対立
の仲介役になれたりするのかな。なにをブレイカーするかわからんけど。
さあ、ドキドキする!今目の前にあるインターホンをピンポンすれば、ほっぺぷにぷに
で少し茶髪で直毛を気にしてる素敵な同級生でフルーツスト・リュウシさんが出てくるの
だ。しかも、いまさらながら初お部屋拝見。どんな匂いするのかなー。やっぱり、フルー
ツな香りかなー。断じて匂いフェチではないのだが、そんな妄想が広がってしまう。
よし、行こう!いざ、禁断(?)のエリアへ!
インターホンを押した。ピンポーンと家の主へ来訪者を知らせる電子音が鳴る・・・・
はずなのだが、なぜかそれと同時に玄関が開いた。ごかいちょーう。うーん、すごいな御
船家は。来るもの拒まずでインターホンを押したら玄関が開くのか。オープンなのは素晴
なのだが、防犯的にどうなんだろう?
予想外の事態に、一瞬にして妄想モードへ突入した脳みそは扉から出てきた人影を捉え、
すぐに現実に戻ってきた。
「うおう!にょにょにょにょにょわくん、マジかにゃー!」
扉を開けたのはリュウシさんなのだが、なぜかあちらも驚いている。どうやら、インター
ホンに反応して出てきたわけではないらしい。
「リュ、リュウシさん、どっかから見てた?」
「いやいや!実はですね、そろそろにゃわ君が来るんじゃないかーってりゅうこさんの予知能力が作動しちゃったらぴったりだった訳ですよ!さすがりゅうこさんやっちゅーに!」
どうやら偶然らしい。そして、いつでも名前の訂正は忘れない。素晴らしきやっちゅーに
魂ではないか。
ちなみに、服装はジーンズにキャミソール、カーディガンを羽織っいる。寒くないのかな?
部屋の中は暖かいから薄着とかなのかな。可愛い。
「驚きの偶然はさて置いといて!まま、お上がりください!」
「あ、うん。ではでは遠慮なく。」
玄関を一歩入った。ほのかに甘―い匂いがした気が・・・いかんいかん!あまりクンクン
してたら匂いフェチ説が現実味を帯びてしまう!自重自重。
「えーっとね、私の部屋は二階上がって一番奥だから先に行っといてくだせい。お茶用意してから行きますゆえ!」
あいよー っと出来るだけ動揺を察知されないように返事をしながら二階を目指した。
あくまで冷静に!部屋の香りとか興味ないですから!
ふらふらと二階に上がりリュウシさんの部屋と思わしき扉に手を掛ける。迷わなかったの
かって?そんなの、一番甘い感じの匂いがする部屋・・・げふんげふん。勘で大丈夫。
「お邪魔しまーす」
部屋の主が居ないのだが、一応の挨拶はしておく。
・・・・・うわ、本当にあったよこれ。キャベツとイチゴとリンゴ。しかもキャベツが大