二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
田舎のおこめ
田舎のおこめ
novelistID. 26644
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

青春その後

INDEX|5ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

ああそうそう。リュウシさんの部屋、別に普通だったよ? 手抜きで床が抜けそうとか無
かったし。エリオを呼ばなかった理由はなんだったのかな・・・二人で雑談したかったと
かだったら、ちょっとうれし照れし。



ほげーーー
俺は今田村商店の奥で田村さんとお茶を飲みながらボケーっとしている。
 「おいそこの抜け殻。ババァとボケーっと過ごすのが趣味なのかい?ババ専だね。」
 「相変わらずですね田村さん。あと50年は生きれますよ。」
スパーン!!
スリッパで殴られた。どっから出したんだよ。
 「ボケーっとババァからかってる暇あるなら、店のエリオでも手伝ってきな。若い内から脳みそ停止してるんじゃないよ。」
ほんと口の悪い婆さんだ。死ぬとこなんて想像もできやしない。
リュウシさんの部屋にお邪魔した次の日。
今日はエリオの付きそいで田村商店に来ている。予定にはなかったんだけど、これは約束
を破った罰なんですよ。

リュウシさんとのお喋りが楽しくて少し帰るのが遅くなった。楽しい時はあっという間。
すっかり暗くなった道のりを鼻歌を歌いながら藤和家へ到着。・・・エリオの部屋が暗い。
おかしいな、この時間ならエリオは部屋にいる事が多いのだが・・・
 「・・・あ」
エリオとの約束を思い出した。晩飯までに帰るはずだった。
怒ってるかなあいつ・・・少し前に見た泣き顔を思い出す。無理だ。あんな感じで泣かれ
たらどうしていいかわからん!!どーしたもんか・・・
自転車を倉庫に押し込んでから少し足を止めて考えたが、結局なにも浮かばない。土下座
しかない。なんせ、全面的にこちらが悪いのだ。嘘を付いて出た罪悪感も多少はあるし。
覚悟を決め、藤和家の玄関へ。
どんなエリオがいるのか心配だが、覚悟は決めた。よし。
ガチャ・・・パタン。
開けて閉めた。俺はまだ外にいる。一度は扉を開けたにも関わらず藤和家へは入っていな
い。だってさ、予想外の物が玄関にあったんだもの。
玄関にはエリオがいた。いや、正確にはスマキンがあった。
初めて藤和家に来た時に見た、あのスマキンがあの時同様、玄関の隅っこで転がってる。
マジか・・・約束を破った所為でまた電波に逆戻りとかないよな、いくらなんでも・・・
意を決してもう一度玄関を開ける。スマキンがそこにある覚悟はできた。
 「ただい・・・のわ!!」
今度は目の前にスマキンがあった。隅っこに転がっていたはずのスマキンが立ち上がり、
俺の侵入を拒むかのようにそこに棒立ちになっている。
 「・・・おいスマキン、入れないのだが。」
あ、やっぱり罪悪感があってもスマキンには強気でいれる。よかったよかった。
 「・・・・」
 「・・・どいてくれないと入れないんだ。妖怪スマキン。」
 「・・・・」
な、なんだ・・・妙な威圧感がある・・・しかし、藤和エリオではないスマキンに負けて
られない。
 「なんか言ったらどうだ、スマキン」
 「・・・もふ」
『約束』っと呟かれた。うむう・・・外はスマキンでも中身はエリオ。約束は覚えている。
ただ、ちゃんと覚えてるって事は電波に戻った訳でもないようだ。安心安心。
 「い、いやぁ・・・忘れてた訳じゃないんだ。ただ、ちょっと手続きに手間取ったり電車が遅れたり・・・そう、運が悪くてさ!!いやー、さんざんな一日だったな、あはははは」
 「・・・もふも」
『でも、約束は約束』と来たか・・・いやまったくおっしゃる通り。約束って大事だよ。
常識常識。
ただ、それをスマキンに言われるとどうもな・・・常識外の格好した奴から当たり前の事
を言われても受け入れ難い。なにより、そろそろ解読が面倒になってきた。
 「うむ、言っている事は実にもっとも。ただ、そろそろ布団を取って話話し合おうではないか!」
スポッと、特に抵抗なく布団が取れた。
あれ? おかしい。必ず抵抗があると思っていたのに。
特に抵抗するでもなく布団を取られたエリオ。そこに現れたのは完全な『無』表情 なに
これ怖い。
ただでさえ整い過ぎて人形に近いような顔してるのに、それじゃホントに人形じゃん。
泣いても、怒っても、もちろん笑ってもいない。その圧力のみで怒りを表現している。
すごい事できるんだな、元宇宙人。自称だったけど。
あーあ、スマキン相手にしてた方がよかったかも・・・・
その後の俺、詳細を書きたくない程情けない事情けない事。
完全な『無』表情なエリオを相手に強く出れる訳もなく、いろいろ言い訳をしていたがそ
れを片っ端から「約束」の一言で片づけられもう泣きそう。
そんな感じで15分程玄関に二人突っ立っていたら珍しく大人女々さんが助け舟を出して
くれた。
恐らく、出会って初めてこの大供の感謝した瞬間である。一回くらい女々たんって呼んで
あげてもいいかも。
その後直ぐ、女々さんの仲介により俺はエリオに素直に謝罪。
エリオはそれに渋々納得し、次の日は一日中エリオの付き添いで田村商店に居る事を約束
した。

そんな訳で、朝からずっと田村商店。
いつもは付き添いと言っても、一日中居る訳じゃないんだよな。
何時間かエリオが働いてるのを見学した後、先に帰っている。
まあ、こんな日があってもいいかな。どれだけ社会に復帰できているか、一日のんびりエ
リオ観察と行こうじゃないか。
10時:店を開ける

11時:客が来ないので掃除。なんと自主的だ。

12時:田村さんが昼食。エリオ店番。

13時:田村さんと店番交代。エリオ昼食。なんと、俺の分までインスタントラーメンを
作ってくれた。まさか、料理まで成長してるとは・・・インスタントだけど。

14時:田村さんと店番交代。客が来ないので、店の在庫チェックみたいなのしてた。
素直にすげー。

15時:今日初の来客。小学生数人。元気よく「いらっしゃーせー」 おお、声が出てる。
実は、客来てるとこあんまし見た事なかったんだよな。

16時:初来客の後数人客が来たが、また暇そう。再び自主的に掃除。

17時:今日はここで田村さんと交代で帰るようだ。お疲れさまでしたー。

ぶっちゃけ、見てよかったと思う。
恐らく、普通のバイトよりも遥かにのんびりしてるだろう。拘束もないし、怒られる訳でもない。
それでも、エリオはしっかり仕事をこなしていた。自分のペースで。自主的に。
最初は「いらっしゃーせー」すらまともに言えなかったんだよな、あいつ。
最初はずっと座ってただけなんだよな、あいつ。
最初俺に料理作った時なんて、ハム乗っけただけのハム丼だったんだよな、あいつ。
父親は娘が成長するとこんな気持ちなんだろうか?
一人立ちして行く姿を見てうれしい半面、自分の手の必要な場面が減って行き寂しいような感覚。
もうエリオは一人でも大丈夫かもしれない・・・
いかんいかん、なぜか老婆心丸出しで感傷に浸りかけてた。
なにはともあれ、あいつが成長してる場面を見れた訳だから卒業直前の過ごし方としてはかなりいい部類に入るのではないのだろうか?青春ポイントにはならないけどね、目線が保護者だから。
 「イトコ、帰ろ」
今日は自転車ではない。エリオが歩いて行くと言って聞かなかったのだ。
 「そうだな。」
エリオが目を細めて笑う。
作品名:青春その後 作家名:田舎のおこめ