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田舎のおこめ
田舎のおこめ
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青春その後

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 「それはそうと転校生。開店まで少しだけ時間がある。少し早いけど晩飯でも食べるかい?」
おお、それは素敵なお誘い。前川さんの料理はホントに美味しい。
しかし、食べる選択肢は目の前に無かった。残念残念。
 「あー、お誘いはうれしいんだけど、ちょっと約束があるんだ。ごめん!」
 「ほうほう約束。リュウシ・・・違うか。藤和かな?」
あ、ニヤニヤしながら楽しそうな笑顔だ。
いつもの前川さんに戻ってる。こっちの方がらしいかな。しかし、見抜かれてるのはいつ
もながらビックリするなぁ。
 「ま、まあ大した約束じゃないんだけどね!ではでは、帰るとするよ!」
 「そうかい。じゃ、藤和によろしくね。」
これ以上一緒にいると何を見抜かれるかわからん。
店の前で見送ってくれている前川さんに手を振りながら急ぎで藤和家へ向けて自転車を漕
いだ。


手を振って転校生を見送る。
うーん、もうちょっと引きとめたかったけど仕方ないか。藤和との約束みたいだし。
ああそうだ、電話しなきゃいけなかったね。
携帯を開いて掛ける相手を探す。相手は女の子。転校生が転校してきてから縁ができた友
達だ。
『も、もしもし!!どうだったたたたたた?』
「やあリュウシ。相変わらず元気そうだね。」
 『りゅうこやっちゅーに。そんな事はいいの!で、にわ君はなんて言ってた!?』
 「リュウシと同じだよ。転校生は『寂しい』以上の事は言ってくれなかった。」
 『そっか・・・じゃあ、やっぱにわ君は藤和さんなのかな?』
私とリュウシは二人して転校生を試していたのだ。
私かリュウシか藤和。彼は誰を選ぶのか。
今までの日常なら、まずこんな事はしなかっただろう。私だって、四人で集まるのは楽しかった。それに亀裂が入るような可能性のある事は極力したくない。
ただ、今は卒業目前と言う、ある意味非日常だ。
知りたくなった。彼が誰を一番必要としてるのかを。
そんな好奇心を抑えきれなくなって試したのだ。まあ、ただ単に面白そうってのもあったんだけど。
けど、直接的に聞いたんじゃおもしろくない。そもそも、彼は選びたがらないだろう。
だからリュウシと相談して、違う日に呼び出して同じ質問をぶつけようって事になった。内容は間接的に。
藤和に関しては、とりあえずほっとく事にした。あの子に隠しごとは無理だろうし、バレた時がめんどくさい。
結果、私とリュウシは選ばれなかった。『寂しい』とは言ってくれたがそれ以上はなかった。これで結論付けるのは早計かもしれないが、なんとなくそんな気がした。
 「まあ、選ばないって事もあるかもだけどね。リュウシは、もし転校生が藤和を選んだらどう思う?」
 『うーん・・・すっごい悔しい。もー悔しくて悔しくてりゅうこさん爆発!・・・でも、なんとなく納得もしちゃうかな。ああ、なるほどって。そしてりゅうこやっちゅーに。』
 「そうか。確かに、納得はしちゃうな。じゃあ、リュウシは転校生が藤和を選んだら諦めるのかい?」
 『りゅうこさんはね・・・諦めない!別に結婚した訳でもないし!藤和さんは確かに反則的だけど、なんか付け入る隙ありそうだし・・・悪いりゅうこさんがでちゃうやっちゅーに!』
 「あはは、そこも同感だね。気が合うじゃないか。」
 『りゅうこさんは前川さんにも負けないんだからねー!!とりあえず、にわ君の目の前で日本一になってりゅうこさんのすごさをアッピしまくる!!』
 「むむ。じゃあ、私は居酒屋で酔わして介抱する事でお姉さんアピールを」
 『むー! その時は私も一緒のはずだから、りゅうこさんが介抱するし!』
 「いやいや、リュウシも酔わすから。介抱は父さんに任すから安心してくれ。」
 『りゅうこやっちゅーに!!じゃあまた卒業式に!!』
からかい過ぎたかな? 電話を切ってしまった。まあ、面白かったからいいか。
正直安心もしている。彼がリュウシも私も選ばなかった事を。
もしどちらかを選んでいたら、こんな風リュウシと笑って話していなかったかもしれな
い。どちらかを選んでいたなら、今までの関係は破綻していたかもしれない。
そうならなかった事をホッとしている。
彼に必要とされたい。でも、彼がキッカケで出来た縁も大事にしたい。
世の中って難しいなぁ。同じくらい面白いけど。



前川さんの手伝いをしてから2日後。卒業式当日の朝になった。
ちなみに、昨日は筋肉痛で一日家に閉じこもってました。あれだけでなんと情けない事・・・
エリオと女々さんは朝からおめかしが忙しそうだ。
二年の文化祭までは学校には来たがらなかったエリオだが、その日以降はイベントがあれば学校に遊びに来るようになった。
前にも言ったと思うが、周りがエリオを受け入れてくれるようになったのだ。
ただ、それも今日で最後だと思うと感慨深いものがある。今日を境に、高校に行く事はないのだ。エリオもそれを分かってるのか、それともただ卒業式だからなのか、いつもは女々さんが強引にやっている髪のセットやらなんやらを自分から進んで申し込んでいる。
俺はそんな二人を横目に、のんびり朝食を食べている。
卒業生は式までに学校に行けばいいので、急ぐ必要はない。準備も特にない。ちょっと寝癖を直して制服を着るだけ。
 「まこくーん。折角の卒業式なのにそんな格好でいいのー?」
エリオの髪を弄りながら叔母が余計な事を言ってくる。
 「卒業式に制服以外の服で行く奴なんているんですか?」
 「やーん、違う違う。髪型よう。なんなら、女々たんが格好よくセットしてあげようか?」
 「遠慮します。」
即答。卒業式だからっていきなりおしゃれなんてしたら意識してると思われるじゃないか。
そんな状態で写真とか撮ってみろ。ほら、軽く黒歴史の出来上がり。
あくまでいつも通り。その上でイベントがあれば青春ポイントに結びつくね。
第二ボタン的なあれね。期待はしてないけど。
 「エリちゃんはまこたんの卒業式だからって、こんなに気合入れてるのにねー。釣れないまこちん。」
女々さんの言葉でエリオを見る。
・・・うお。これは地球人ですか?
女は化粧をすると変わると言うが、エリオは髪型を工夫するだけですごくなるな。顔は元々
化粧とか必要ないし。
普段は垂れ流しの長い髪を今は後頭部辺りでまとめ上ている。長いポニーテールといった
所だろうか。
うしろから見ると、細い首筋からうなじがよく見える・・・
いかんいかん。あまり凝視しないようにしよう。匂いフェチだけでは済まなくなる。
 「イトコ、どう?」
ポニーテールの尻尾を振りながら笑顔で訪ねてきた。どうってあんた・・・
 「う、うん。いいんじゃないか?」
できるだけ無難な言葉を選んだ。変な事を口走っても困る。
 「ん」
笑顔で頷いてくれる。俺の評価に満足してくれたみたいだ。
 「まこちんがエリちゃんに見とれてるー!!女々ちんも見てみてー!!」
うるせぇ四十路妖怪。よりによってエリオと同じポニーテールかよ!
年を考えろよ・・・今さらか、この人は。
 「とりあえず、式の間に騒がないでくださいよ。」
流した。叔母の髪型なんてどうでもいいし。
 「エリちゃーん!!まこちんが冷たーーーい!!」
あー聞こえない聞こえない。
作品名:青春その後 作家名:田舎のおこめ