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吉野ステラ
吉野ステラ
novelistID. 16030
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たとえばいつか哀しい空が 6-8

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ロイ・マスタング。彼の身体を。
「……大総統!!!」
レベッカは瞬時に銃を構えて撃ち放つ。影は刀を手放して、その身を翻した。
「行かせるか!」
パン! 両手を弾ませエドワードは地面に手を置いた。影の身体をめがけて地面から次々と鋭い牙がむく。
しかし連続攻撃にも影は見事に避ける。エドワードの練成した障害物を足場に、建物の屋上へと飛び移った。
「待て!!」
「エドワード!戻れ」
踏み出した足がその声に止められる。
ぎり、と歯を軋ませて、エドワードは声の主の下へと駆け寄った。
「ロイ!」
「エドワード君、早く大総統を車へ!出すわよっ」
「…ああ!」
しゃがみ込んでいるロイの横に膝をつく。ロイは腹部に刺さった刀を自分で引き抜いていた。
レベッカは女の子を助手席に乗せて、運転席へ回り込んだ。
「…大丈夫だ。血はとめた」
ロイはエドワードの肩を借りて立ちあがり、眉をゆがめてそう言った。
「それくらいの錬金術はかじっている」
しかし地面には鮮やかな血の色が広がっていた。青い軍服は腹部から下半身まで紫色に染まりきっていた。
「…しゃべるな」
エドワードは車にロイを乗せて、自分も乗り込んだ。ロイの肩を抱いて搾り出すようにうめいた。
「はやく病院へ…!」



ロイよりも自分の手の方が震えていた。
刀の一糸の乱れもない冷徹な輝きが、ただ背筋を凍らせた。


(ちくしょうっ…!)



自分に怒りすら覚えた。