二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
吉野ステラ
吉野ステラ
novelistID. 16030
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

FAアニメ派生集

INDEX|13ページ/17ページ|

次のページ前のページ
 

第十六話<星の空と少女>





決して晴れない気分とは裏腹に、夜空には星が瞬いていた。
力の入らない身体を何とか動かして、ウィンリィはホテルの自室を出て隣の扉をノックする。
カチャ、と扉が静かに開かれた。
「ウィンリィ…、眠れないの?」
「うん…。エド、いる?」
顔を出したのはアルフォンスだった。ウィンリィの問いに少しの間沈黙を作る。表情がわからない鎧姿でも、その曇った雰囲気は不思議とウィンリィにも伝わった。
「兄さんは、まだ戻ってないんだ」
控えめにアルフォンスが答えた。
ウィンリィはぎゅ、と胸元を握りしめる。
「あたし…エドを追い込むようなこと言っちゃった…」
「ウィンリィ、入りなよ」
アルフォンスの優しい言葉の響きにウィンリィの目頭はじわ、と思わず熱くなる。込みあげたものがこぼれないように必死でこらえた。
私だけが辛いのではないのに、私は彼ら兄弟に気遣ってもらってばかりだ。
ウィンリィは涙をひかせるように深呼吸して、部屋に入った。

窓から星の光が見える。リゼンブールほどではないにしろ、都会の真ん中でこんなに星が見えるなんて皮肉な話だった。新月のせいだからかもしれない。
「ごめんね。あたし、泣いてばっかり。あんた達は泣いてないのに」
「僕だって泣けたら泣きたい気分だよ。だけど兄さんはね、ああいう人だから」
アルフォンスは肩をすくめて淋しそうに言った。
ウィンリィもこくんと頷く。
誰にも頼ろうとしない、辛い思いや悲しみを表に出そうとしない幼なじみ。
「エドはちゃんと泣ける場所、あるのかな…」
面倒をかけてばかりで、エドワードの負担はふえるばかりなのではないだろうか。ただでさえ痛いものは何でも自分が抱え込もうとする奴なのに。
ずっと気を張って、いつか壊れてしまうのではないだろうか。
「うん……あるんじゃないかな」
「えっ?」
ウィンリィは予想していなかった答えに驚き顔を上げた。
アルフォンスはベッドに腰掛けて夜空を見上げている。
「兄さんが泣くことのできる場所、あるんじゃないかな。きっと兄さんはわかってるんだ」
「それって…」
どこ。 と聞きたくて、しかし聞いてはいけない気がしてウィンリィは言葉を飲んだ。
自分の知らないエドワードの世界。そう、よく考えると私は彼のほんの一部しか知らないのだ。
この兄弟はふたりで色んな世界を見てきて、生きてきた。私の知らない場所に行き、知らない人に会って、知らない思い出が増えていく。
そうして、エドワードには大切な場所ができたのだろうか。
「そっか……そうなんだね」
淋しさと切なさが胸をしめつける。けれどエドワードが本当に素直に思いを吐き出せる場所が、誰かが傷つくとか悲しむとか言って自分をおさえこまなくていい場所があるなら。それはウィンリィに少しの安堵と諦めをもたらした。

「私も強くならなきゃ」
何も知らずに守ってもらってばかりではなくて。悲しんでいる幼なじみ達を、戦っている彼らを大きく包んでいられる存在になりたい。
代わりに泣いてるだけじゃだめだ。
ウィンリィは涙をぬぐった。
「アル、ありがと」
弟のように一緒に過ごした、今は鎧姿のアルフォンスを見る。
本当は誰よりも心もとない状況で、そして誰よりも前進したいと歯がゆいほどに思っているのは、アルフォンスに他ならないのだ。
こうして長い長い夜を、彼は眠ることもできずに毎晩過ごしているのだ。
今でも目を瞑れば、3人で一緒に過ごしたあの頃の彼らの姿が見えるというのに。
「ウィンリィ、兄さんはね」
「うん?」
「ウィンリィの前ではかっこつけていたいんだよ」
「アル・・・」
「今でも十分、ウィンリィは僕らを元気付けてくれてるよ」

ウィンリィはアルフォンスを見つめる。その鎧の顔に、昔の彼の面影が重なって見えた。
兄よりも少し濃い金髪に黄金色の瞳。いつも優しかったその笑顔。
あの頃は私よりも背が低かったのに。
また目元に熱いものが込みあげそうになって、ウィンリィは窓際に寄り空を見上げた。
すん、と鼻をすする。
「ありがと、アル・・・」
大切な私の幼なじみたち。



『守るべき人がいるから』
かつてのリザの声が脳裏に響いた。


今ならよくわかる。あのときの彼女の言葉。


これから先ふたりに何があっても、あたしは最後まで信じて、守る。




  

   

   

作品名:FAアニメ派生集 作家名:吉野ステラ