FAアニメ派生集
第二八話<強きを欲せ>
弟以外の誰かと肩を並べて戦うなんて久しぶりだった。
誰かに背中を預けて戦うなんてめったになくて。
だからちょっと調子を崩したんだと、思う。それだけ。
『エド!!』
なんだか何度もそう呼ばれた気がする。
戦いの最中に戦意喪失するのは自分の悪い癖だって分かっているのに、その時俺はまたやってしまっていた。
東の国から来た、胡散臭い自称皇子のリン。ほとんど同じ歳のくせに、俺よりも背が高くて生意気なあいつが一緒にいなければ、とっくにエンヴィに踏み潰されていただろう。
あの絶望的な暗闇の中でその存在があったことは、自分にとって大きな救いだったから。
だからちょっとだけ気を許してしまっただけなのだ。
それだけ。
…リンを見て、あいつを思い出してしまうのは。
リンは、強い。決して迷わない。
(そう、似ているんだ)
リンも、あの男も、人の上に立つ男。
人の命と心を、責任という名に代えてその背中に背負って生きているから。
だから強い。
だから
「…グリードに負けるな」
リン
今度は俺が、何度でもそう呼んでやる。
お前を待ってる人が
お前に命を預けている人がいるんだから。
這いずってでも生きて戻って来い。
お前の目が、お前の声が。
まだまだこれからだと、あきらめてなんかいないと言っていたから。
俺も信用してやる。
「待っててやるから」
帰って来い。