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物体もじ。
物体もじ。
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よくわからない15のお題_TFマイ伝

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03) ・・・冗談だろ?

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 平和なんてものは、案外とあっけなく崩れ去ってしまうものなのだと、確かに、解ってはいたつもりだったけれど。

 それが何も、ただ今実感中の、地球及びセイバートロン星及び宇宙の危機に関することなら、もう今さらちょっとやそっとでは驚かないぞ、と妙な自信も持っていたはずなのに。


 それがこと、心の平穏、なんてものになると。


 思いもしなかった奇襲攻撃に、あっけなくも吹き散らされてしまうものなのだ。



「なあ、カルロス。三角関係って、どう思う?」

「…………はあっ!?」


 思わず飲んでいたジュースを噴き出さなかったのは、我ながら快挙だと、半ば現実逃避気味に、カルロスは自分を褒めてやる。

 大真面目に馬鹿なことを言い出したのは、幼馴染みであり、遊び友達であり、かつ現在は秘密を共有する仲間である、ラッド。

 普段は凡そ生真面目で、思慮深い性格をしていて、度を超えてふざけることすらないくせに、唐突に、何がどうしたと言うのだろう。


「三角関係って、あの三角関係、かぁ?」

「他にないだろ?」

「いや、だけどさぁ……何なんだよ、いきなりさ」

「うん……」


 言いよどんだラッドがちらり、視線を走らせる。

 無意識なのか、それともそうでないのか。

 解らないけれど、つられてカルロスも、そちらへ顔を向ける。


 のんびりとおやつを楽しむ彼らの視線の先には、いつもながら、忙しそうにキーボードに指を躍らせる、アレクサの姿。


「……まさか、ラッド……」

「うーん……」


 カルロスにとっては、ラッドもアレクサも同じ幼馴染みで、今は仲間で。

 あまり考えたことはなかったけれど、それでもアレクサはやっぱり、女の子、ではあるわけで。


「…………なあ、ラッド。さすがにアレクサは止めたほうがいいんじゃないか……?」


 いつも口うるさく文句を言う彼女に、一体どうしてそんな感情を抱くのか、カルロスには甚だ疑問ではあったけれど、友人のことを思い、一応の忠告を試みる。

 だが。

 覗き見たラッドの目が、ふ、と剣呑な光を浮かべる。

 そのすぐ下、べこ、という妙な音がして、カルロスは思わず身を引いた。


「…………ラッドー……?」


 恐る恐る視線を下げれば、ラッドの手の中で、ジュースの入っていた紙のカップが中に入っていた氷ごと握りつぶされている。


「…………………………」


 一体何、と、硬直したような彼の視線を追えば、そこには、変わらずアレクサと、彼女に話しかけている、コンボイの姿。

 何か冗談でも言い合っているのか、ふと、アレクサがほころぶような笑顔を見せた。


「あれ、コンボイじゃん。いつの間に……」

「なあ、カルロス」


 びくりと、思わず背筋を正してしまうような、圧力を持った声が、すぐ隣から発せられる。

 小さなパソコンの画面を覗き込んでいるコンボイとアレクサを見たまま、ラッドはにっこりと満面に笑みを浮かべていた。


「やっぱり、三角関係なんて、早めにどうにかするに越したことはないよな?」


 カップを握りつぶしていた手を鋭いモーションでひらめかせれば、すこん、と、投げ入れられたカップが屑篭に当たっていい音を立てる。

 そのまま立ち上がってコンボイたちのところへ歩いていくラッドを、カルロスは呆然と見送った。


「……え、ちょっと待て、三角関係って、え? まさか……」


 いやにきっぱりとした背中が目指しているのは、どう見ても、アレクサとコンボイのところで。

 さっきの視線の先も、やっぱりそうであって。

 それ以外には考えようもないのだけれど。





「……………………………………冗談だろ?」






 地球とか、セイバートロン星とか、宇宙とかの平和も、そうなのだとは、知ってはいたけれど。

 心の平穏だって、いともあっけなく、崩れてしまうものなのだ。