5月は恋の季節
5月は恋の季節2
ゴールデンウィーク中もフランシスは散々だった。
一日目は取り乱していたせいで感じていなかったが、気付けば二日酔いがひどく、自分のアパートに帰ってからはベッドから出られない。
おまけに、ホテルにガールフレンドからプレゼントされたブレスレットを忘れてきたらしく、二日目にはそれをさんざん責められたあげくに別れ話をされてしまった。
三日目にはギルベルトとアントーニョには振られたことをだしにした飲み会を提案されたが、酒が遠因で振られたようなものだし、今は怖くて酒に逃げることもできない。
また潰れて、今度は目の前にギルベルトかアントーニョがいたらと思うと心底ぞっとする。
ぶーぶー言われたがどうにか断った。今回はずいぶん傷心だな、と揶揄されたのも笑ってかわす。
まさか、「いやー先日の飲み会の後、本田と寝ちゃってさー」なんて打ち明けられるはずもない。
そんなこんなで、非常に足取りの重い中、連休明けの大学に来たフランシスを待っていたのは、今会いたくない顔NO,1の本田菊だった。
「フランシスさん」
「げっ……」
柔らかい声で呼びとめられて、正直な気持ちが口から出てしまう。それに曖昧に微笑んだ本田は、「先日はすみません」と頭を下げた。
「あ、ああ、あのさ、うん、お互い酔ってたからさ! 忘れようよ! ね、それがいいって!!」
何を話されるのか気が気でなくて、フランシスはさらに言葉を続けようとする本田を強引に遮り、「じゃあね!」と一方的に挨拶してその場から離れた。ダッシュで逃げる背中に「あの…!」という声がかかったのはすっぱりと無視する。
どういう顔をすればいいのかわからない。
しかし、青ざめていておかしくないはずの顔が妙に火照っていた。