鈴鳴の秘宝 第三章 離苦
Episode.15 反響音
「…で、その後は爆発して謎の爆発につながる、と」
「市長にその事を謝罪しに行ってそのあとすぐに司祭に呼ばれて小一時間くらい怒られてな…」
「そして、今こうして来たと言う訳です」
「それは分かったんですけど…」
「どうして俺達の所に?」
「―――…鈴の音」
小箱を見せて、ケビンが言う。
「さっき話した通り、俺らはアーティファクトである≪共鳴の鈴≫を回収しに来た。これは残り4つ…これは全てクロスベルにあると言う事は判明してる」
「昨夜のような出来事がまた起こると?」
「いいや。鈴は5つで1つのアーティファクト。それぞれが持つ性質も違う…はずや」
「なら、月の僧院、古戦場、星見の塔にもあるのでは?」
「探しましたよ。ですが見つけられなかった」
「…そのアーティファクト、一定の条件下でしか見つけられないのかもしれませんね」
「どういう事ですか」
「そのアーティファクトに冠された名は≪共鳴の鈴≫。なら鈴の音の鳴る間だけなら探し出せるのかもしれませんよね。或いは鳴った後とか」
「……」
「まぁ、こんな都合のいい話ある訳ないと思いますが」
「貴女、何が言いたいんですか?」
「可能性の提示だけですよ。だれも鵜呑みにしろとは言っていません」
「ま、まぁまぁ…リースさんもティオちゃんもなんでそんなに険悪なの?」
「簡単ですよ。ロイドさんとエリィさんと昔の話をしたいと言って最初に来ましたよね」
「…せやな」
「嘘だったから。貴方達はグノーシス事件の話をしに来たんでしょう」
「はい。ですが…」
「あのタイミングでなければ私は多分、今こうして貴方達を嫌ってはいません」
怖かった。
あの事件の事は思い出すだけで血の匂いが甦る。
泣き叫ぶ皆の声が思い出される。
それを何の感情もなしにみていた教団の人間も。
「……生きたいと、死にたくないと皆思ってた、死ぬ間際まで叫び続けてた…!」
「ティオ…」
「何もかも鮮明に思い出して、あの時何で私―――…」
「待った」
ケビンが遮る。ティオの目が虚ろに彼を見る。
「申し訳なかった。知らなかった…では済まされへんな。あの時の君の反応…おかしいと思って少し、調べさせてもらった」
「……」
「地獄と呼ぶにふさわしい拠点…やな。心の支えになってたロイド君がおらんかったから、よけいつらかったんやな?」
「…こちらこそ、すみません。」
細く出てきたティオの声は弱弱しくも何かを持っていた。
「…ほな、言いたい事はこれくらいやし、最後にこれ言って帰ろか。まだお説教残っとるし」
「…まだ続いてるんですか」
「ああ、この件に関わってる人に説明しに行きますゆうて来たんや」
「ホントケビンさん、怒られるの好きよね…」
「好きなわけないやろ!ただ今回のは…」
「必要な事だったでしょ……まさか私が悪いとでも?」
「い、いや滅相もないです」
「それで、言いたい事って?」
「鈴の音が聞こえたら、それ以上音に気を取られないでください。音が頭に反響して意識を遠のかせ鈴の支配下になります」
「分かりました。心に留めておきます」
その日の夜。ティオを連れていくのを控えて、キーアやツァイトと一緒にいてもらった。
もっとも、キーアは大喜びだったが。
「あらー、今日一人足りないのね?」
「はい…少し」
「ミシェルさん、それは触れないであげて…」
「…分かったわ。さて、今日は―――…」
作品名:鈴鳴の秘宝 第三章 離苦 作家名:桜桃