鈴鳴の秘宝 第三章 離苦
Episode.16 暗い笑顔
「……」
ああ、もう皆さんは二日目の見回りをしているんでしょうか。
そんな事を思いながらティオは食器の片付けをしていた。
「ティオ、これどこにもどすの?」
「ああ、それは…」
言いながら、届かない所だという事に気づく。
「…明日の朝、ランディさんが帰ってきたら戻してもらいましょう」
「はーい」
「すんませーん、誰かおりますー?」
聞き覚えのある声に二人は玄関先まで行き、扉を開けた。
「あ!やっぱり変な喋り方のおにーさんだ!」
「…キーア、知ってるんですか?」
「にちよーがっこうで本読んでくれたりするんだよー」
「キーアちゃんここの子だったんですか」
「…何の用ですか。今は私とキーア以外誰もいませんが」
「俺は君に用事があってきた」
「…なんでしょうか」
「この子の耳に入れたくはない話やな」
「…わかりました。ならエニグマで連絡入れてください」
「…わかった」
「私はキーアさんに用事が。これを」
「あー!本!」
「忘れて行ってたみたいやからな。今度からは忘れへんようにな」
「はーい!」
「明日、朝10時。教会で待ってます」
「……」
「んー?」
「また明日」
「また明日ねー!」
出ていく二人は笑って、見送る二人に手を振った。
その後、キーアが眠った頃に。
人影はほとんどなく、もう少ししたらロイド達が帰って来るような時間帯に。
何かを話す、少女の声。
「どうしろと…いうんですか」
通信を切るティオ。暗い声で、彼女は呟く。
不意に想い人の笑顔が彼女の脳裏を過った。
作品名:鈴鳴の秘宝 第三章 離苦 作家名:桜桃