ロックマンシリーズ詰め合わせ
11/37.5 (流星のロックマン・スバル)
ぴぴぴぴぴ、と測定完了の無機質な音が響く。
ごそごそと布がこすれる音と、次いで、けほ、とかぼそい声が聞こえた。
「…………」
重ねた布団と毛布の中から、くしゃくしゃになった髪と、首が覗く。
表示された体温を見て、スバルは億劫そうにため息をついた。
『37.5』
トランサーから、スバルのものではない声がする。目だけでそれに応えて、頭を重く、枕に押し付ける。
『……って、どういうことだ?』
「風邪ひいた、てことだよ」
『カゼ?』
「病気」
はあ、と漏らす息が熱い。
いっそ、もっと熱が出てしまえばかえって楽にもなるのに、と考えて、寝返りをうった。
母は、もうパートに出ている。家には一人っきりだが、それはすでに慣れたことだ。問題はない。
それにしても、風邪なんかひいたのは、一体いつぶりだろう。やはり昨夜、窓を開けて星を見ていたのが良くなかったのだろうか。
「…………」
『どうした、スバル』
「……水と……冷やすもの……」
自業自得かともう一度ため息をついて、起き上がった。身体の節々が痛む。
のろのろと部屋を出て、必要なものを探した。額に冷却シートを貼って、水を運ぶ。
熱のある身には案外重かったが、今、この家にいるのは自分だけ―――トランサーには住人がいるものの、手伝えるわけもないので除外―――なのだから、自分でやるしかない。
『おいおい。ふらついてんぞ』
「へい、き……たぶん」
『多分って、お前な』
どうにか帰り着いた布団の枕元に水の入ったポットを置き、中にもぐり込んだ。額の冷んやりとした感触を味わいながら、とろとろと目を閉じる。
『スバル……』
「ん……だいじょうぶ、だから……心配、しなくていいよ……ロック」
身体は辛いし、息も少し、苦しい。
それでも、何故だか、そんなにツライとは、思わなかった。
黙りこんだウォーロックに、ぼんやりした頭で、そうか、と思う。
ビジライザーをかけていなくても、わかる。
「……ロックが……いるから…… 」
ひとりじゃ、ないから。
『スバル?』
夢を見た。
どうしてだか、身体がうまく動かせなくて、目も開けられなかった。
ただ、誰かが、何度も何度も、頭をなでたり、額に触れたりしてくれた。
きっと父さんと母さんだ。
そう思ったけれど、それにしては、どの手もずっと小さくて……触れるたび、少しずつ違っているような気がした。
不思議だったけれど、とても嬉しくて。
最後に、声が聞こえた、と思った。
父さんとは違う、低い、男の人の声で、すぐにロックだとわかった。
『早く、元気になれ。スバル』
うまく声が出せなくて、返事が出来なくて。
ロックも、頭をなでてくれればいいのに、と……そう、思った。
(すぐに……良くなるよ。だって、みんなが、待ってる。ね、ロック)
作品名:ロックマンシリーズ詰め合わせ 作家名:物体もじ。