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ふざけんなぁ!! 7

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長い足を折り曲げ、勢い良くバイクの座席部分にケリを食らわすと、鉄の塊は搭乗者の男諸共、華々しく宙に舞い、燃料に引火して爆発した。


「「「「てんめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」」」


手に手に鉄パイプやバッドを持った仲間達が、ぐるりと静雄の周りを取り囲みやがる。
大乱闘の始まりだった。



★☆★☆★


その頃2年C組の教室では、会社を早退し、三者面談に赴いた贄川修二の目が点になっていた。

「は、はるなぁぁぁぁぁ、一体これは何だぁぁぁぁ!!」

絶叫したのも無理は無い。
担任から突きつけられた物、……娘が記入した進路志望の用紙には、三段ぶち抜きで「平和島静雄の恋人」ときっぱり記してあったのだから。

贄川修二は東京災時記のルポライターだった。
平和島静雄=【池袋の自動喧嘩人形】または【池袋最強】と言われる魔人。
勿論、そんな渾名で呼ばれる彼に、直で会った事など無かったけれど、彼の『ヤクザも泣いて逃げる』という悪名や、『普通車でも、サッカーボールのように蹴り飛ばせる』という人間離れした伝説諸々は耳に入っている。

そんな、末は立派なヤクザになるのが決まっている、悪名高きチンピラの恋人になりたいなどと、進路志望用紙に書く馬鹿が己の娘なんて、情けなくて悔しくて。
贄川修二は握り締めた拳を振り上げた。

「お前、春は那須島隆志とかいう不良教師に入れあげて、刃傷事件起こしておきながら、夏もこれか!? 一体何時になったらまともになってくれるんだぁぁぁぁぁ!! 進路志望は就職先か専門学校か、大学名を書くって、そんな基本的な事が何故判らない!!」
「お父さん、贄川さん、落ち着いて!!」
担任教師が慌てて羽交い絞めにしてきたけれど、暴れる贄川修二の双眸にはうっすらと涙が溜まる。

「男狂い!! 破廉恥娘!! お前がそんな風に問題ばかり起こすから、母さんは嫌になって出てってしまったんだぁぁぁぁ!!」
詰る父親の顔は醜かった。
彼自身仕事が上手くいかず、収入が激減し、妻に見切りをつけられ捨てられた事が認められず、精神的に一杯一杯だったのだろう。
八つ当たりの矛先は自然……、川の水が上流から下流に流れるように、か弱い娘に一方的に向いてしまっている。
そんな異常な家庭環境になっていても、当事者な父親は気がつけなくて。

「贄川さん!! 今日お越し頂いたのは、贄川春奈さんの将来を話し合う為ですよ」
「そんなに男が好きなら、AVでもソープでも、嵌めまくって好きに稼いで来い!!」
「贄川さん!! 自分の娘に何を言うんです!!」

贄川春奈はそんな一方的な父の暴言を、黙って聞き流していた。
教師も男親のヒステリックさにも驚きつつ、教え子の今の能面のような無表情さに恐怖を覚えた。
この親子はおかしすぎる。
家の中で罵りあいの喧嘩するならまだしも、ほぼ初対面な娘の担任の目の前で、親と思えないキレた罵詈雑言と涙は異様だ。
どうやらこの二人には、教育指導より先に、精神カウンセラーが必要らしい。

「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

突如、外で火薬か何かが爆ぜる爆音が聞こえた直後、腹にずどんと響く、男の野太い咆哮が轟いた。
と思いきや、今度は次々と大人数の男達の悲鳴が響き渡る。


「平和島さんだ♪ 平和島さんだわ♪♪」
また、今まであれ程何事にも無関心だった少女が、嬉々として席を立つ。

「春奈!!」
「贄川、戻りなさい!! まだ面談は終わってないぞ!!」
廊下に飛び出す娘を、贄川修二は教師ともども追いかけた。

「平和島さん♪ 平和島さぁぁぁぁん♪♪」

春奈は廊下の窓から身を乗り出し、歓喜してグラウンドに向かい手を振った。
ここは七階、バランスを崩せば転落しそうな勢いだというのに。

「贄川、危ないから止めなさい!!」

担任教師は大慌てで、受け持つ少女の腰を背後から引っつかむ。
でも、嬉々として動く娘の動きは全く止まらなくて、いつ手が滑って転落してもおかしくない状況だった。

「お父さん、貴方も手伝ってください!!」

担任が初めて親に怒鳴り散らしたが、贄川修二はそれどころではなかった。
グラウンドを窓越しに見下ろし、ガクブルに足が震えている。

「い、一体……、何なんだあの男はぁぁぁぁぁ!!」


★☆★☆★


同じ頃、帝人も溜息つきながら、大勢の奇声や歓声、または驚愕の声を出す野次馬生徒や父兄達と一緒に、一階の廊下でグラウンドを眺めていた。
どんどん増す暴走族達を、静雄が標識一本を手に、リアル無双でふっ飛ばしている。

(あーあ、あの人達、どうやってお家に帰るんだろう。早く逃げればいいのに)

人だけならまだしも、鉄の塊な筈なバイクも宙に飛んで弾けていくから悲しい。
あんな高い乗り物が、次々スクラップになるのだ。
貧乏性な帝人にとって、我慢できない無駄だ。

それに静雄が折角買ったばかりの青色スーツが、泥や血で汚れていくのも悲しいし、携帯のデジタル時計を見ればもう14時で、予定では帝人の面談が始まる時間である。
保護者を迎えに行った杏里もまだ戻ってくる気配がないし、喧嘩が始まってしまった以上、静雄は絶対間に合わないだろう。
これで、今日欠席したお爺ちゃん先生の代わりに、扉の向こう側で手薬煉(てぐすね)引いて待っている教頭に、盛大に嫌味を言われるのが確定だ。

(あー憂鬱)
はふっと大きく溜息をつくと。
「次、竜ヶ峰帝人。とっとと入れ」

教室の扉越しに、教頭から乱暴に呼ばれ、カチンと癇に障る。
他の子は皆、親同伴な手前『さん』づけなのに、帝人だけ呼び捨てにしやがって。

現状、外で彼女の保護者が暴れているから、教頭もさぞかし気が大きくなっていて、帝人を15分嫌味で嬲る気満々なのだろう。
静雄が遅れて来てくれるとも思えないし、教頭を待たせれば今度は鬼の首を取ったかのように、ますます調子づくのも目に見えていて。
溜息つき「……畜生……」と毒づきつつ、一人うな垂れ教室に入る為に扉に手を置いた。
所がその時。


「お待たせ。さぁ、行こうか♪」


ぽんと軽く肩を叩かれ振り向けば、白と黒のもふもふコートを身に纏った、暑苦しい情報屋の姿があった。

「え、何で?」
「いいからいいから、さぁ入ろう♪」


臨也が帝人の肩を抱きよせ、さっさと扉を開け室内に入ってしまう。
窓際の席で偉そうに座っていた教頭も、臨也登場に何故か目が点になり、そのうちダラダラと冷や汗を流しだして。
帝人はますます小首を傾げた。

「臨也さん、お知り合いですか?」
「うん、とぉーってもね♪ お久しぶりです佐々木先生♪ 俺が在籍していた頃は学年主任だったのに、たった五年で教頭とは。順調に出世できて何より何より♪」

「……お、折原、何故お前が……?」
「そりゃあ、帝人ちゃんは俺の大切なお気に入りなんだしぃ。あんた、随分と俺の大事な娘を甚振ってくれているんだってね。噂に聞いて、俺、珍しくマジギレしちゃった♪ ははは、今度たぁっぷりとお礼してあげるよ、覚悟してねせ・ん・せ・い♪」

どす黒い底冷えるような笑みを浮かべたまま、机の上に置かれた進路希望の用紙を見降ろす。
作品名:ふざけんなぁ!! 7 作家名:みかる