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ふざけんなぁ!! 7

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『平和島静雄の嫁』と、真っ赤なマジックで、でかでかと書かれているのを手にした途端、彼は問答無用でびりびりに引き裂いた。
「ちょっと、何するんですか臨也さん!!」
「ねぇ佐々木、新しいのはぁ?」

教頭相手なのに敬称すら既に無い。
なのに命令口調で手を伸ばした臨也に、教師は顔を青ざめ、ぶるぶるに震えながら白紙を手渡した。

彼はもう目も合わせられないぐらい、臨也を恐れている。
一体、何したんだこの男は?
気まぐれな黒猫を髣髴させる情報屋は、鼻歌交じりにやっぱり三段ぶち抜きで、「折原臨也の助手」と、でかでかと書き殴りやがった。

「という訳だからさぁ、もしこの子を埼玉の親元に返すようなマネしたら、わかってるよね♪ ♪」
にまにまと口の端を歪めて笑う。
嘲りと侮蔑がたっぷり篭った、真っ黒い微笑みだ。

「今もいいカネになってるんでしょ。月に大体二十万円の副業? あははははぁ~、学校の先生がいっけないんだぁ♪♪」
「折原!! その話は!! 生徒の前では!!」
「言ったでしょ。帝人ちゃんは俺の大事な助手だって。秘密はなぁんでも共有に決まってるじゃない♪ ね♪」

背後からぎゅっとティディベアを抱くように抱っこされた。
馴れ馴れしすぎにムカつき、よっぽど手の甲にシャープペンをぶっさしてやりたかったけれど、何とかぐぐぐと堪える。


「いやらしい系の雑誌にぃ、脅した女子高生の生着替えとか、公衆トイレでの盗撮とかを、『バージンスノー』とか言うペンネームで投稿して、小遣いを稼いでいるエロ教師。
かれこれもう20年もやってる、筋金入りの変態が教頭先生さまだもんね。
週刊誌、TV、教育委員会、手当たり次第に大々的に暴露したら、さぞかし大騒ぎになるだろうねぇ♪ 楽しいなぁ帝人ちゃん♪ 楽しみだよねぇ♪」

心底嬉しくなって、帝人を抱きしめたままくるくる回転する臨也の機嫌と裏腹に、帝人の顔は引きつり、おぞましさと気持ち悪さに吐き気をもよおした。

(ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! 一生知りたく無かったよ!! そんなのがなんで教頭にぃぃぃぃ!!)


もしばれたら、こいつに未来はない。
TVで大々的に報道されれば間違いなく、親戚友人全てから白い目で見られるだろうし、学校解雇も確実で、退職金も支払われないだろう。
社会的に抹殺も間違いないし、家庭持ちならきっと一家離散だ。

それに、もし自分達のトイレや着替え姿が既に盗撮されてて、その映像が売られてしまってたらどうしよう?
不特定多数の変態に、何処で見られているかもしれないと思うと、おぞまし過ぎてぶん殴りたくなった。

「だ、黙っててくれるよな、竜ヶ峰……、いや、竜ヶ峰さん。私達はとても仲良くやっていける筈だ!!」

目をぎらつかせて擦り寄ってこないで下さい。
猫なで声も気持ち悪いし、変態と仲良しなんてとんでもない。

罵りたい事は山程あったけど、こういう時は口を噤んでいた方が得策だと、帝人は経験上知っている。
そうすれば勝手に脳内で、己にとって最悪の事態を想像して自滅してくれるのだから。

それにこの教頭の怯え具合からして、きっと臨也は高校の時にこの事実を突き止め、散々便宜を図って貰い、色々利用していたに違いない。
悪魔だ。

「ねぇ佐々木ぃ♪ 俺の大事なお気に入りの娘にさぁ、とりあえずどう接すればいいのか、判るだろう?」

体育の成績表の点数を暗示するかのように、臨也は【体育】の項目に、赤マーカーで【3】と書いた。
来良学園は十段評価なので、当然平均以下になったけど、帝人が運動音痴なのは、家族全員周知の事実だし、【1】という情けない成績より全然マシで、ほっとする。
教頭だって、この程度の捏造で臨也が引っ込んでくれるのなら、お安い御用だろう。
脂汗に塗れていた顔が、にっこりと安堵に緩む。

「判った、任せておけ!!」

かくして帝人への虐めの芽は、たった2分で無事摘み取られたのだ。


★☆★☆★


「君はとっても頭のいい子だから、この情報の使い道は判るよね。この前は悪い事をした。俺、ちゃんと反省もしたよ。これで償いになったと認めてくれるなら、仲直りしよう♪ だって実際、単細胞な静ちゃんじゃ頼りにならなかったと思うよ。こういった情報戦はね♪」


穏やかに言われつい頷きそうになった。
実際、今日臨也が来なかったのなら、帝人はこの身が危なくなっていたかもしれないのだ。

反撃できない虐めはエスカレートするものだし、教頭はエロで20年も小遣い稼ぎをしていたベテランの変態だ。
後々、狡猾に帝人を陥れ、彼女を使って稼ごうとする可能性は……【平和島静雄の庇護にいる】という保険を鑑みても、高確率であった筈。

でも帝人はぷるぷると頭を横に振った。
絆されてはいけない。
こんな悪党の事をいい人だなんて、絶対騙されてはいけないのだ。

「臨也さんこそ、どうやって私の三者面談突き止めたんですか? 外で今、静雄さんが戦ってる人も、集めたのって貴方でしょう?」
「俺は優秀な情報屋さんだからねぇ」
「また、うちに盗聴器しかけやがったな」
「あそこは静ちゃんの家で、帝人ちゃんのじゃないでしょ。ここ重要」

にんまり笑う男の胸倉をぐっと両手でひっ掴む。

「今日のこと、静雄さんに言いつけますからね!!」
「あっそう。じゃ、俺も羽島幽平の潜伏場所を盛大にばらしちゃおう♪ なんと失踪中に女子高生とラブラブ同棲♪。勿論帝人ちゃんの名前と顔写真と生声つき♪ いやぁ、これで君も時の人だねぇ、オメデト♪」

ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐっと、悔しくてぶるぶる震えてくる。
が、ここで逆切れして怒ったら負けだ。
こうやって、人の感情を逆撫でして遊ぶ陰険男には、怒鳴り罵倒したって耳に爽やかな、笑えるBGMと化すのだから。

これ以上喜ばせたり、面白がらせてたまるか。
興味も持たれたくない。
普通に接して『お前なんか無関心なんだ』と態度で示す事が、プライドが超高いこの男にとって、大ダメージとなるのだから。

「私にしたレイプ未遂は水に流しますよ。でも、正臣にした事は一生許せません。しかし貴方には今回助けていただいたのは事実なので、大嫌いからやや嫌いな顔見知りに格上げします。以上」
「えー、つまんない。俺、静ちゃんより頼れるお兄さんでしょ♪」
「あ、そうそう。静雄さんだ」

帝人はポンと手を打ち鳴らした。
臨也のペースに巻き込まれ、すっかり忘れていたけど、あの人今どうしているのだろう?
耳をすましても、さっきまで響き渡っていた、静雄の怒声も暴走族達の罵声も聞こえてこないし。

喧嘩に関してなら、全く心配していないけれど、携帯を鳴らしても、『おかけになった電話番号は……』と、無情なアナウンスが入るのみで繋がらなくて。
メンタル面がチワワなあの人なら、きっと今頃、自己嫌悪と悔恨のドツボに嵌っているかもしれない。
また臨也の策略に嵌められたと知らずに。
可哀想過ぎて、帝人の胸がきゅんと痛くなった。

「静雄さん、静雄さぁぁぁぁん……!!」
「ちょっと、帝人ちゃんってば、まだ俺、話途中……!!」
臨也なんて無視し、踵を返し、ぱたぱた運動場へと突っ走った。


★☆★☆★

作品名:ふざけんなぁ!! 7 作家名:みかる