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ふざけんなぁ!! 7

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なんでもチャレンジというけれど(涙) 前編





「いぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! まさおみの、ぶわぁぁぁぁぁかぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 無理!! やだ!! 絶対駄目ぇぇぇぇぇ!!」

そう涙目になって叫んだ帝人だが、「往生際が悪い!! さぁ行くわよ♪」『そうだ帝人、ファイト♪』と、速攻狩沢とセルティにとっ捕まり、襟首を引っつかまれ、ずるずるとカーテンの向こう側へと連行された。
この場にはワゴン組みの残り三人、トムさん、新羅先生までいるのに、誰も助けてくれない。
静雄に至っては、かちんこちんにフリーズして固まっている始末である。

酷い。
酷すぎる。

(……こんな事になるなんてぇぇぇぇぇぇ!!……)

企画したのは確かに自分だ。
だが、アドバイザーに正臣を選んだのは失敗だ。数時間前の自分に蹴りをくれてやりたい。
何をやらかしてくれやがったんだ、あの幼馴染のアホンダラは!!

(明日、絶対に園原さんにチクってやる。二人がかりでボコボコに殴ってやるぅぅぅぅぅぅ!!)

腕力に自信がないから、剣道の達人……杏里を巻き込もうとする時点で、帝人も結構悪賢いが、本当にそのぐらい怒っていたのだ。


(私はただ、静雄さんを…………、幸せに喜ばせたかっただけなのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!)


★☆★☆★


きっかけは本当に単純だった。
三者面談の後、静雄と二人で楽しくカラオケを二時間歌っている最中、彼がぽつりと口を滑らせたのだ。

「俺、生まれて初めて人とカラオケやったけどよぉ、結構面白いもんだったんだな」
「ちょっと待って。静雄さんってば、家族とも歌った事なかったんですか?」
「ああ。幽はそんなタマじゃないし、親父もお袋も、共稼ぎで家に居なかったしな」
「今までどれだけぼっちだったんですか?」
「ああ? ノミ蟲と同類にするんじゃねーよ」

怒ると怖いので口が裂けても言うつもりはないが、孤独さから言えば静雄の方に軍配が上がると思う。
確かに臨也の友人は新羅だけだろうが、その代わり『臨也教の信者』連中は腐る程いる訳で。
きっと集団カラオケぐらい、あっちこっちでやっている筈。

逆に静雄は、採点バトルとかのゲームもした事がないのだ。
あれはチームを組んで遊ぶと、すっごく楽しいのに。
こんな善良で良い人なのに、哀れすぎる!!


だから帝人は、家に帰って静雄がお風呂に入っている間に、速攻で携帯をウチウチし、メールを四方八方飛ばしたのだ。
『唐突で申し訳ございませんが、明日の夜八時からカラオケ大会をしたいと思いますが、ご都合いかがでしょうか?是非とも静雄さんに、高校生時代に味わえなかった馬鹿騒ぎを体験させてあげたいのです。皆様、何とかご協力お願いします(ぺこぺこ)』


そう門田達ワゴン組み四人とセルティ経由で新羅に送り終わった時、突如肩をつんつん突付かれた。
振り返ると、パジャマ姿の幽が無表情のまま、白いちょっと大きめの長細い封筒を差し出していて。


「俺は今外出できないから協力できない。だから代わりにこれ……、景品にでも使って。社長がくれたものだけど、賞品があると、きっと盛り上がると思うし」
「うわぁ♪ ありがとうございます♪」


何かな~♪と中身を覗けば、8月16日という、帝人がモロ実家に帰っているであろう時に行われる東京ドームでのライブチケット四枚だった。
絶対自分が行けないと判ってしまったため、個人的にはがっかりだ。
でも、折角幽の心使いだから……と、早速写メールで、座席と日付と場所がしっかり読めるようにチケットを大きく撮影し、『貰い物ですが、これを勝ったチームに贈呈します。皆さんファイトですよぉぉぉ♪♪』と追加メールで送ったのだ。



まさかこんな事になろうとは(涙)



「ライブに行きたいかぁぁぁぁ!!」
「「うおおおおおおおおおおおおお!!」」
「聖辺ルリちゃんに会いたいかぁぁぁぁぁ!!」
「「うおおおおおおおおおおおおお!!」」
「絶対勝つぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「「うおおおおおおおおおおおおお!!」」


集合場所である正臣が予約してくれたカラオケボックスの店先前で、はっぴ姿をした渡草の額には、『I LOVE RURI』とペイントされたハチマキが巻かれ、彼の振り上げる拳にあわせ、目をぎらつかせている遊馬崎と狩沢が追従の奇声を上げている。
それを見た時点で帝人の腰は引けた。
ストッパー役である筈の門田は、諦めてしまっているのか、少し離れた場所の壁に持たれかけ、他人のふりをして缶コーヒーを啜っていて、止める素振りもありゃしない。


「帝人、俺、家に帰りてぇんだけど?」
「駄目です!!」

逃すものかと、ぱしっと静雄のバーテンベストを引っつかむ。
本日のメインである静雄に消えられたら、何の為に人を集めたのか判らないし、彼女だって立つ瀬がない。

「奴ら、凄い迫力だべ。何でまた?」
同じく、静雄に『帝人がどうしても来てくださいって言ってて。夕飯食うつもりで付き合ってください』と、今日突然誘われ、とことこやってきたトムも、訝しげに小首を傾げている。


「田中先輩こんばんは。でも仕方ないんじゃないかな。あの集団にとって、賞品が凄すぎたんですよ」
新羅はアルカリックスマイルを浮かべ、いつものように白衣を纏って歩み寄ってきた。
その後ろでセルティも、ネコミミヘルメットのまま、ぺこりと頭を下げている。

「帝人ちゃんが昨日提示したのって、大金積んだってそうそう手に入る筈もないプレミアム・チケットでしょ?」
「そうなのか?」
「そうなんですか?」

がさごそと手提げバックをまさぐり、幽から貰った封筒を取り出してみる。
途端、向こうで奇声を発していた三人組が、ぎんぎんに目を光らせて駆け寄ってきた。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、帝人ちゃんそれ、本当に印刷じゃねーよな!! 本物だよな!?」
「見せて見せて!! ああ、マジでアリーナ一列目、しかも中央よぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「アニソンサマーフェスタ、ああ、夢の祭典♪ 七時間ぶっつづけでアニソン、もうサイコーっす♪ 俺、ライブ終わったら死んでもイイっす♪」

「あの、渡草さんは聖辺さんのファンなんですよね? 遊馬崎さんと狩沢さんなら判るんですが、どうしてそんなにも?」
「サイトを調べてみたら、ルリちゃんオンステージが、一時間もあったんだよ。それに他のアニソンシンガーとのコラボも所々でやるし。持ち歌じゃねぇリクエストソングだってファン投票で受け付けてくれる。このまま票が伸びればルリちゃんがエヴァンゲリオンだぞ? 剣聖のアクエリオンだぞ? マクロスフロンティアのシェリルだぞ!? 兎に角、レアな彼女が生で見られるんだ!! そんな機会って滅多ねぇだろがぁぁぁぁぁ!!」
「………はぁ……、そういうものなんですか……」
帝人には判らない異世界の話だった。
彼の紡ぐ言葉全てが、意味不明の呪文に思えてならない。

狂喜乱舞する渡草、狩沢、遊馬崎と対称的に、静雄とトムの目もどんよりくすんだ。
「……頼まれたっていきたくねーよな……」
「うすっ」
帝人も、あまりの迫力にタジタジだ。
もしうっかり勝ってしまったら、後も怖そうだし。

大体、このチケットを手に入れたってどうする?
作品名:ふざけんなぁ!! 7 作家名:みかる