永遠に失われしもの 第11章
不思議そうな顔をして、首を横に傾げ、
光線の加減で、いつもより明るく
琥珀色に染まった瞳で、
セバスチャンは、葬儀屋を見つめた。
「知れば君は命を賭けてでも、
行くだろう?」
「ええ、我が主のためなら、いつ、
如何なるときでも、
我が身を投げ打つ
覚悟はできておりますから」
葬儀屋は立ち上がり、漆黒の執事に
静かに歩み寄り、鷹の爪よりなお鋭く、
長く伸びた黒い爪で、彼の心臓の場所を
軽くつついた。
「そして、何もかも、
消え去ってしまうだろう..
その身も、その魂も...
すべての記憶も、全ての想いも...」
「別に構いません」
至極当然のことと言いたげな、
セバスチャンの瞳はなお陽に照らされ、
明るく透明な琥珀の輝きを放つ。
「そうだろうねぇ...
でも小生には残念でたまらないのさ。
君たちは実に面白いものを
見せてくれるからねぇ...
伯爵と君が、小生の前から姿を消したとき
どれほど失望したか、
君にはわかるまいね。
ああ、公爵だった..」
「いいですよ、
もう公爵でも伯爵でも--
わかりますから」
軽くため息をついたセバスチャン。
「ヒヒヒ...
いや、君ならばわかるか...
長すぎる時を過ごすこの退屈さを。
正直、伯爵が悪魔になったと知ったとき、
もう彼とて、この永遠の退屈の波に
早々に飲み込まれてしまったもの
とばかり思っていたよ...
でもやはり、彼は彼だったね」
「ええ、それが我が主ですから」
セバスチャンの顔に、
主への賞賛と憧憬の表情が浮かぶ。
「そして君...執事くん...
小生は期待しているよ...
君の企みがどうなっていくのか、
本当に楽しみでしょうがないんだ..」
と言って、黒いローブの袖先から、
銀色の鍵のついた首飾りをすっと出し、
ひらひらと指に絡ませて、
セバスチャンに見せつけるように
動かした。
作品名:永遠に失われしもの 第11章 作家名:くろ