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「それは－－！？」


　セバスチャンは、
　瞳の虹彩を細くし黒豹のような目をして、
　しなやかに、白く細い指で葬儀屋から、
　首飾りをひったくろうとした。


　葬儀屋は黒く細長い爪に、
　首飾りをひっかけたまま、腕を伸ばして
　言う。


「ヒヒ、その眼を見る限り...
　やっぱりこの首飾りは、
　偶然手に入ったって訳
　じゃなさそうだね...
　
　まだ、駄目だよ。
　時機が来たら、
　ちゃんと君の手に戻るはずさ。
　小生の望むことをしてくれるならね」


　さらにセバスチャンの瞳は
　紅く燃え上がった。


「貴方をここで縊り殺して、
　取り上げましょうか？」


「ああ、綺麗な瞳だねぇ..
　まるでルビーのようだ。

　そうしたいかい？...」


　殺気がその場を一瞬支配した。


「いえ、やめときましょう。
　ぼっちゃんの依頼を受けている、
　貴方を殺せませんから」


「ヒッヒッ君は実に主に忠実な悪魔だねぇ..
　どうだい？

　ここで立ち話も何だから、
　小生のホテルに来て、
　話の続きでもしようじゃないか...

　どうせ君の伯爵は、当分君の元には
　戻れないのだから..」


　葬儀屋は目をあげて、回廊の上から、
　ローマ警察のある方に立ち上る
　黒い煙を眺めた。


「それに執事くんだって、
　おおぴらに人目につく所にいちゃ、
　まずいんだろう？」


　瞳が光をうけた琥珀色にもどって、
　セバスチャンはしばらく
　考えにふけるような表情をしてから、
　言った。


「いいでしょう」