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こらぼでほすと 漢方薬1

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「わからんぞ? こうやって、睡眠学習させれば、目覚めた時に、俺に恋をしてくれるかもしれないだろ? いいから、おまえさんたちはいちゃいちゃしてきなさい。」
 軽い冗談だとは思うのだが、八戒も悟浄も呆れてしまう。昏睡している人間に、囁き声なんて届くわけがないのだ。
「反応はしないと思いますよ? 鷹さん。」
「いいだろ? 暇つぶしなんだから。ほら、行った、行った。」
 手で追い払われて、まあよかろう、と、沙・猪家夫夫も医療ルームを後にする。二日、ほとんど徹夜しているので、仮眠はしたいところだ。絶対にやってはいけないことだけは注意して、別荘に上がった。それを見送って、鷹は椅子を持ち込んで、ベッドの隣りに陣取った。
「痩せちまったなあ、ママ。これで、少しは持ち直してくれよ。・・・・子猫たちが心配して離れられなくなっちまうぞ? 」
 最初から様子を見ている鷹にすると、かなりニールは痩せてしまった。体重を戻すことができないらしい。体力的にも、相当落ちているので、じじいーずも気にしていた。なんでもいいから、回復させないと、これからの事態に対応が出来ない。漢方薬なるものが、どれほどの効力があるのか、鷹にも、さっぱりだが、わざわざ時間をかけて、八戒がやるのだから、それなりの効果はあることを望んでいる。遺伝子の異常による細胞異常が進めば、ニールは確実に天国行きだ。治る見込みは薄くても、延命できる限りは、そうするが、それだって時間に限りがある。出来るなら、子猫たちが無事に、全部終らせて戻って来るまでは生きていて欲しいのだ。そうでないなら、子猫たちの帰る場所が喪われてしまう。
「あんまり心配させるな。俺まで保護者の気分になるだろ?」
 親猫の前髪を撫で上げて、鷹は微笑む。腕に取り付けているバイタルサインの装置は、正常に心臓が動いている数値を、横のパネルに表示している。ただし、昏睡しているから、脈拍は少ないし体温も通常よりは低い。二日から三日は、この状態だと説明はされているので驚かないが、まるで植物人間のようだ。手が冷たいので、擦ってやる。すると、少し温度が上がる。
「おや、反応するじゃないか。じゃあ、睡眠学習も有効なのかな。」
 また、いろいろと囁いて鷹は遊んでいる。ハイネと交代制なので、この時間は仮眠するべきなのだが、そういう気分でもなくて、ここに来た。やっぱり、ニールのことは気にかかっている。
「愛してるよ、ママ。いっそ、俺のものにならないか? 俺は、ママの亭主よりは優しいよ? 」
 いや、微妙かもしれないなーとか、セルフツッコミして笑っている。鷹も、過去に死んだり生き返ったりしているから、誰かに必要とされることや、帰る場所の存在は大切だと考えている。たぶん、マリューが必要としてくれたから、元のムウ・ラ・フラガに戻れたのだと思うからだ。
「うちの女房もいい女なんだよな。」
 でも、ママのことも愛してるんだ、と、囁いたら、背後から手刀が振り下ろされた。軽くはないが、致命傷ではない微妙な力加減だ。
「なんだ? 嫉妬か? ママの間男くん。」
 やったのは、ハイネだ。どうやら、こちらも様子を見に来たらしい。管制室に誰もいないのは、まずかろうと注意しようとしたら、「シンとレイが来た。」 と、言われた。こちらの交代要員には名乗りをあげていたから、やってきたらしい。
「だからって、俺とママの愛の語らいに水を差すのは、どうなんだ? 」
「意識不明の人間に、痛い台詞を囁いているって自覚したほうがいいぜ? 鷹さん。危ない人確定だぞ? 」
 こちらも居座る気らしく、ベッドの足元のほうに座り込んだ。パネルの確認だけして、顔を覗きこむ。かなりの怒鳴り声でも反応はないらしい。まったく、数値には変動がない。
「三日は、このまんまだ。今、何を囁いても、ママには聞こえないのさ。」
「わかってる。俺は、覚醒する寸前に呼んでもらって、インプリンティングに勤しむさ。そのほうが効果的だろ? ちょうど、俺と三蔵さん、同じような髪の色だしさ。『おまえの亭主は俺だぜ? 』って、目覚めた瞬間に囁くほうがさ。」
「バカ、その前に、俺が眠り姫よろしく、キスで目覚めさせるさ。蕩けるぐらいの熱いキスで、メロメロだぞ? おまえさんの顔なんて忘れちまうぐらいのをさ。」
 どっちも冗談の応酬をしているので、笑顔だ。そんな気は、微塵もない。ただ、目が覚めて少しでも体調が快方に向かうのを願っているだけだ。
「プラントのほうは順調だ。」
「まあ、今のところ、うちへ喧嘩は売らんだろう。」
「一機目は、ロールアウトしたらしい。それと、ヴェーダとのリンクも成功した。紫子猫から、それだけ届いた。」
「一機目ね。あと、三機か。一年かかるだろうな。」
 ロールアウトした機体の調整を順番にしていく作業は、短期間のものではない。何しろ、太陽炉搭載のマッチング作業もある。そうなると、組織に唯一現存のマイスターである紫子猫が、それらのテストも調整も、何もかも請け負うことになる。四機揃うのは、かなり先だ。
「組織の再構成は、なんとかなったみたいだから、多少は加速するはずだ。黒子猫ちゃんにも帰還命令出てるしな。ふたりになれば、もう少し早まるんじゃないか? 鷹さん。」
「黒子猫ちゃんが、大人しく従えば? の話だろ? あれ、扱えるのはママだけだ。ママに現状の報告ができないんだから、従うとは思えないな。」
 紫子猫が、一応は、黒子猫に宇宙に上がるように伝言はしているが、それだけでは、黒子猫は従わないだろう。黒子猫本人が、納得しない限り、組織への帰還は有り得ない。
「つまり、黒子猫ちゃんが、宇宙へ上がる時が、第一次接近遭遇か? 」
「そんなとこだろう。地上へ降下するには、組織の力が足りないからな。・・・うちのほうでも、地上でのバックアップも考慮するべきだな。虎さんが戻ったら、一度、そこいらも詰めるか。」
「うちが遠征できる場所ってのも考慮すべきとこだぜ? まさか、エターナルで物資運ぶなんてのは無理だ。」
 『吉祥富貴』には、艦船が少ない。旗艦としてのエターナルはあるが、あれは宇宙艦で地上用ではない。オーヴから借り受けることは可能だが、それだって大きなのは無理だ。そうなると、物資を運ぶ手立てが問題になる。
「海の中で居座っていただかないと、うちは無理だな。」
「あと、あいつらの地上施設のほうへ運びこんでおいて、そこからの運搬ってことなら、MSでも、どうにかなるから、そこいらだな。」
「けど、王家のは使えないから、地上施設のほうは激減だ。」
 王家の所有する土地にある組織の地上施設は、こちらから利用はできない。あれだけ派手に、歌姫様とやりあったから協力はしないだろうし。こちらも使いたくない。
「ふーん、やっぱ、うちは救助に専念するべきってこったな。」
「そうなるな。・・・てか、ハイネ。ここで語るべき話題じゃないな? 」
「まったくだ。」
作品名:こらぼでほすと 漢方薬1 作家名:篠義