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こらぼでほすと 漢方薬1

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 いつもなら、聞かせないために、ニールのいない場を選んでやっている話を、堂々と目の前でやっていることに、ふたりして苦笑する。昏睡しているから聞かれる心配はないと解っていても、そこにある寝顔で、ちと心が痛む。
「おまえさん、休んで来いよ。」
「そういう鷹さんこそ、仮眠時間だろ? 年寄りは、無理すると後で響くぜ? 」
「まだ、そこまでの苦労は感じないな。だが、実際問題、ふたりも必要じゃないんだし、独占タイムを折半しないか?」
「そうだな。インプリンティングの前フリで、俺も囁き作戦をやるとするか。じゃあ、じゃんけんで?」
「ま、そんなとこだな。」
 いい大人が、「最初は、ぐー」 と、じゃんけんして、結局、鷹は負けた。若い者に先行は譲ってやる、と、嘯いて医療ルームから出て行った。そういう問題じゃないだろう、と、ハイネは呆れつつ手を振って見送る。
「なんか、この展開だと、三日後には、お里のお父さんも参戦してきそうだな。」
 店は休業しているので、本業の人間は暇にしている。いや、店をメインにしている対人間チームとトダカは暇だ。爾燕は、のんびりと休んでいるだろうし、紅亥児は、本国に戻っている。残っている暇人は、寺の坊主とサルとトダカだ。トダカも、暇とは言えない身だが、時間の都合はつくから、顔ぐらいは見に来るだろう。トダカに関しては、別荘までの距離も、オーヴ軍のもので勝手に来るから、神出鬼没だ。どういうシステムになっているのか、トダカはタクシーのようにオーヴ軍関連の乗り物は使えるからだ。トダカーズラブのものは、ほぼ軍人だから、一個小隊以上の軍人だって勝手に使えるはずだ。そりあたりは、どういうことになって、そういうことができるのか、ハイネにも謎だ。たぶん、ウヅミーズラブの会員ナンバーが、一桁組に所属している関係だろうとは推測している。
「過保護なお父さんだもんなあーママニャン。絶対に三日以内に来るのに、金賭けてもいいぞ。」
 精神的に不安定なニールを知っているから、気になるらしい。トダカだけでなく、じじいーずは、みな、そうだ。鷹や虎ですら、何かと気にかけている。この春ぐらいに、ようやく落ち着いたところだから、まだ目を離すつもりはないらしい。

 何事もなく、二日は過ぎた。これといった特異な変化もなく、ニールの体温と脈拍は上昇して意識が戻るレベルに達した。ただし、そのまま、熱は発熱ラインへと上昇してしまった。やはり、体力的な問題があるらしい。活性化させるために、もうひと暴れといったところだろう。
「悟浄、保冷剤を頼んでください。・・・・さて、取り掛かりますか。」
 一度で、活性化させられなかったところが、再度、同じことを繰り返す。取扱説明書がなければ慌てるところだが、そういうことも、きちんと書かれていた。体力的に問題のあるニールだと、一度では無理だったのだから、しょうがない。
「ありゃ? まだ起きてないのかよ? 」
 気楽な声がして、ハイネがやってくる。インプリンティングさせろ、とか、ほざいていたから現れたらしい。
「まだ、無理ですね、ハイネ。」
「おや、それは残念。何か手伝えることは? 」
「今のところありません。」
「じゃあ、退散する。」
 治療の邪魔になるようなことは、ハイネもしない。それに、あちらもプラントとの連絡やら何やらで忙しいはずだ。活性化を促進させるべく、八戒も気功波を送る。とにかく、さっさと、この活性化を終らせないと、ニールの体力では弱る一方だ。弱らせすぎたら、回復させる段階で、手間がかかる。なんせ、一発逆転的な化学療法の栄養剤は使えないからだ。こういう場合が、漢方薬の弱点でもある。じわじわと効能を効かせていくから、すぐに回復させることはできない。
「もう、使ってもいいのか? 」
 届いた保冷剤を手にして、悟浄も戻って来る。
「体温の確認してください。」
「まだ、危険値じゃないな。」
 四十度を越えてはいないので、悟浄は、備え付けの冷凍庫へ、それを収納する。そして、ちょいと息抜きと、外へ出て行く。どうせ、長丁場なのだ。すぐに、どうということはない。一服する時間はある。全館禁煙なんてことはないが、医療ルームは、喫煙場所が決まっている。そこまで移動して、タバコに火をつけた。そこへ、シンがやってくる。
「うちのねーさん、目が覚めた? 」
「まだ無理そうだ。」
「・・・そっか・・じゃあ、また来る。」
 シンとレイも、ラボの手伝いをしながら、ちょこまかと顔は出す。何かと、こちらの手伝いも申し出てくれているが、今のところはない。
「シン、心配しなくても、すぐに目は覚めるぞ。」
「当たり前だろ、悟浄さん。そうじゃなかったら、俺、すぐにドクターを呼ぶぜ。」
 シンも、漢方薬なんてものには疑心暗鬼だから、口調が荒い。まあ、そりゃ、科学の粋を集めた場所に暮らしていたのだから、そういうことになるだろう。
「呼んでも来ない。俺らが、引き渡すって言うまでは、不干渉の約束だ。おまえ、漢方薬をバカにしてるみたいだけどな、ありゃ、普通の風邪薬みたいなもんじやねぇーよ。わざわざ、三蔵が本山から貰ってきたんだからな。」
 霊験あらたかというか、霊験そのものというか、人外のクスリは、怖ろしいほど効く。なんせ、普通は死なないはずの人外のものに効くのだ。
「わかってるよ。でもさ、俺にはわかんないんだから、しょーがねーだろっっ。」
「それもわかるけど、これだけは本物だ。体調が落ち着いたら、かなりママニャンは楽になってる。・・・おまえらな、別荘のほうにママニャンを移したら、適当に看病してくれ。俺らは、店のほうの予約を捌いてくるからな。」
 何件か予約は入っているので、そちらには対応することになっている。トップのキラはいないが、それ以外の指名は受けてある。主に、三蔵と八戒だ。こちらは、対人間組のほうで、対応することになっている。今夜、客の予約があるのだが、さて、どうしようかなーと、悟浄は考えている。指名は三蔵なのだが、ヘルプかサルだけなんていうのは、ちと寂しい。
「シン、ハイネのシフトはどうなってる? 」
「今、働いてるから夜には休憩が入ってるはずだ。」
「わかった。」
 ちょうど、一本吸い終ったので、悟浄も医療ルームに戻る。シンは、何も言わずに、ラボへ引き返す。わかっちゃいるのだが、シンも、どうにも不安になって怒鳴ってしまった。わざわざ、本山から持ち帰っているクスリなのだから、それなりの効果はあるのだろう。ただ、昏睡する状態というのが、不安だ。刹那と約束した。ママのことは、ちゃんと様子を見ているから、と。もし、寝込んだりしたら、と、思うと気になる。




 何時間か、発熱は続いたが、どうにか熱は下がった。また眠っているだけの状態だから、これといってやることはない。店のほうへ行かなければならない時間だから、悟浄とハイネ、シン、レイがヘルプの仕事に戻ることにする。鷹が当直で、ラボのほうは、とりあえず稼動させておけるからの処置だ。あまりホストがいないのは、お客様にも失礼だろうと、手の空けられるのは、連れて行くことにした。
作品名:こらぼでほすと 漢方薬1 作家名:篠義