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永遠に失われしもの 第12章

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「ヒヒヒ..執事君の入れてくれた紅茶は
 本当に美味しいネェ...」


「ありがとうございます」


 セバスチャンは、葬儀屋が飲み干した
 カップを受け取り、
 サイドテーブルに戻しに行く。


 山吹色の壁紙と、白い大理石の柱で、
 明るく仕上げられたこのホテルの客室に、
 おおよそ似合わぬ、古びた樫の棺が、
 サイドテーブル脇に立てかけられている。


「まだ、どなたかのご葬儀をこちらで?」

「それは小生のベッドさ」

「ああ、そうでしたか」


 サイドテーブルの逆側の脇にある
 マスターピースの上に、銀縁の、
 上品なデザインの眼鏡が置かれていた。


「どうして死神を引退なされたのですか?」

「ヒッヒッ...ただ飽きただけだよ。
 眼鏡、かけてみるかい?
 なんなら、
 協会に君を推薦してあげてもいいよ。
 君なら飛び切りの死神になるだろうねぇ」

「遠慮しておきます」


 勝手にその姿を想像しているのか、
 葬儀屋は、椅子の上で笑い転げている。


「君も座りなよ。
 執事君と二人きりで話すなんて、
 そうあることじゃなかったからねぇ」


 勧められて、セバスチャンは
 葬儀屋に向かい合うように置かれた椅子に
 腰掛ける。

 
「何故、そこまで君は、
 伯爵に固執するのかねぇ...」

「それは--多分貴方がぼっちゃんの父上
 ヴィンセント伯爵に興味を持たれたのと、
 同じ理由なのでは?」


 葬儀屋は笑いやめた。


「ふぅん、どうしてそう思うんだい?」

「貴方はヴィンセント伯爵の死後、彼の
 人生の記録をまるで愛でるかのように、

 そのシネマティックレコードを随分長く、
 手元にお持ちになっていらっしゃった
 ようでしたので」

「ああ..単に死神図書館に返すのを忘れた、
 ただそれだけのことだよ」

「ふふ、そういう事にしておきましょう」

 
 セバスチャンは葬儀屋に向かって、
 優雅に微笑した。


「彼はとても面白かったからねぇ...

 どんな非道なことをした後でも、
 彼はあどけない純真な笑顔ができるんだ、
 それも..心からね。

 君も会っていれば、
 とても気に入っただろうよ」

「私にはぼっちゃんがおりますので」

「ヒッヒッ、まるで心に決めた、
 ただ一人の愛する人、
 みたいな言い草だねぇ..」

「悪魔に愛など、ありませんよ」

「ヒヒ、さてどうだろう...」