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永遠に失われしもの 第12章

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 古び、朽ち落ちかけた古い教会の、
 割れたステンドグラスから、
 月の光が差し込んでいる。

 もうそろそろ初夏だというのに、
 虫の鳴き声一つせず、
 雪解けの水の流れる音がかすかに、
 遠くから聞こえるばかりである。


 灯のついた黒い蝋燭を手に持ち、
 闇に溶けそうな黒いローブで
 頭から覆った人々の列が、
 その古びた教会の中に消えていく。

 教会の中では、
 背中に仮面をつけた司祭がゆっくりと、
 血の色の布をかぶせた祭壇へのぼる。

 聖書を逆さまから詠唱し、悪魔を賛美し、
 参加者に血の色のワインが配られた。

 そして今夜の贄となるべき、黒い布で
 目隠しをされた若い少女が
 祭壇へと運ばれる。

 少女は、悲鳴をあげたくとも、
 口にかまされた猿轡のせいで、
 せいぜい微かな呻き声しかあげられない。


 衣服が裂かれ、その肢体が月光によって
 青白く照らされる。
 淫靡なその光景に、息を呑む気配と、
 つづいてすぐにその興奮とともに
 荒くなる息が聞こえてくる。

 司祭は悪魔を召還するための呪文を、
 徐々に声を高くしながら、
 詠唱し続けている。
 ふっと、蝋燭の灯が消えた。


 ・・呼べ・・・呼べ・・
 ・・呼ばれている・・呼ばれている・・


 体は何一つ自由が利かないながら、
 シエルの意識が水面下から浮上してくる。


 ・・セバスチャン・・・


 また薬のせいで、シエルの意識は、
 混濁の海の底へと沈んでいく。


 
 葬儀屋は、一人掛け用椅子から
 立ち上がって、セバスチャンに
 問いかける。


「手伝うって?」

「デスサイズで空間を切ってくだされば、
 それで良いのです。
 少々遠いところなので--」

「どこだい?」

「ロシア帝国のウファと
 エカテリンブルグの間の小さな教会です」

「ふぅん...」


 葬儀屋は、壁に立てかけてあった、
 死神の大鎌を手に取ると、
 大きく空間を切り裂いた。


「どうもありがとうございます」


 セバスチャンは、胸に手をあてて、
 軽く礼をした。


「小生もついていっていいかな~...」

「どうぞ、私もそうして頂ければ、
 助かります。
 ぼっちゃんの声の反応が弱いので--」


 光の立ち込めた空間に、
 二人は飲み込まれていった。