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永遠に失われしもの 第12章

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 シエルの身体は、おぞましい、
 その闇の集会の片隅に出現していた。

 その細く華奢な手足は枷に繋がれたまま、
 心の瞳は開いているものの、
 現実には深い眠りについたかのように、
 目は閉ざされたままだ。

 死神の盛った薬液は、
 シエルの四肢も中枢神経も完全に犯し、
 ただそこに無機物のように
 存るだけだった。


 淫行に励んでいた黒いローブに、
 仮面の男がシエルに気がつき、近づく。
 ローブの下には、
 明らかに上等そうな絹のシャツが見える。


 祭壇では次々と、生贄が運ばれては、
 刃で心臓を抉られ、殺されている。

 赤子や幼い少女、少年、
 およそ社会では弱者として
 保護されるべきものが
 ここでは生贄として、
 彼らの奉ずる悪魔に捧げられていく。

 そして、
 シエルに近づいた黒ローブの男が叫ぶ。
 

「生贄をこんなところに
 放置したのは誰だ?」


 一斉に近くで淫猥な楽しみに耽っていた
 男女がシエルを凝視した。


「捧げよ」誰かが叫ぶ

「捧げよ」衣服がナイフで切り裂かれる。



 ・・やめろっ!!・・

 ・・僕に屈辱を与えるな・・

 これはいつか見た夢なのか?・・

 僕を苦しめるいつもの悪夢なのか?・・




 闇の司祭が騒ぎに気が付き、近寄る。


「生贄の予定に、
 この少年は入っていないが?」


 見た目は昏睡状態で、
 生まれたままの姿にさせられたシエルを、
 司祭が足で軽く蹴って転がすと、
 その背の烙印が蝋燭の火に照らされる。


「ふん、どうせどこかの
 貴族の慰み者だったに違いない。
 こっそりここで
 処分してしまおうというわけか。
 まぁいい。
 
 この者を今夜の最後の贄に!」


 彼こそが、自分たちが呼び出した
 獣の烙印を持つ悪魔であったのにも
 かかわらず、
 また、自分たちの唱えた、
 悪魔召還の文言の意味を考えることなく、
 シエルは、多くの血まみれの死体の
 積み重なる祭壇へと運ばれる。


 片手で事足りる、その白い足首に巻きつく
 枷を持ち上げられ、
 闇の司祭の両肩に
 シエルの足首が載せられた。
 

 闇の司祭が高らかに叫ぶ。


「さあ、私が貫くと同時に、
 この少年の心臓を!」
 

 ・・セバスチャン!! 来い!
 殺せ! 殺せ!!
 やつらを殺せっ!!


 闇の司祭のものが
 シエルを突き立てる前に、
 彼の首から上は、
 すでに胴から離れていた。

 絶する前の何秒間かに、
 闇の司祭であったその眼がみたものは、
 自分の身体が、全ての関節から
 切り離され、宙に舞っていく、
 その光景だった。


「お待たせしました。
 ぼっちゃん。

 本当に貴方は--

 召還されておきながら、
 生贄になるとは--

 よくよく、
 そういう運命にある方なのですね」


 セバスチャンは、そう言って、
 祭壇上の血塗られた死体の上に、
 人形のように寝かされている
 シエルの裸体を見つめる。


「大変そそる光景ですが、
 このままにもしておけません。

 他の方々にお見せするのも、
 勿体無いですからね」


 セバスチャンはシエルを抱きかかえ、
 地下教会の壇上に天井から下がる
 鮮血色のベルベットの天幕を切り裂き、
 シエルを中に包み込んだ。


 そしてこれらの間群集の誰一人として、
 声を上げられるものはいなかった。