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こらぼでほすと 漢方薬3

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 事情が事情なので、悟浄も、トダカの援護をする。黒子猫を早く出発させるためなのだから、ノッてやってもいい。何を確認したいのか謎だが、黒子猫が、急ぐほどのことなら、かなり重大なことではあるだろう。
「わかりました。では、薬のほうを引き上げられるように手配してきますから、トダカさん、刹那君に報告してもらえますか? 」
 八戒が、ようやく是の判断をしてくれたので、ほっと、ニールも息を吐く。刹那さえ出発させてしまえば、後はどうとでもなれ、という気分だ。組織への召還命令を無視して行きたいというなら、行かせてやりたい。




 トダカが、ラボへ報告に赴いたら、刹那は驚いた顔をした。整備と調整は終っていて、今はキラからフリーダムについての簡単な講義を受けていた。アスランは、なんとなく理解したらしい。視線でトダカに了解と告げてくる。
「もう少ししたら、私の家のほうに帰るから、挨拶だけしておけばどうだろう? きみは、まだ、こちらに残るだろ? 刹那君。」
 出勤時間になったら、ヘリで、そのままトダカ家のほうへ戻る、と、言われて、黒子猫は首を傾げる。まだ、熱が下がったところだ。いつもなら、二、三日は大事をとって安静にさせられている。それが、急に回復したと言われても、それはないだろう、と、反論したいところだ。
「元々、漢方薬治療という臨時の治療を受けていただけなんだ。だから、熱さえ下がれば、問題はないんだよ。」
「だが、ニールは、まだ食事が摂れていない。」
「うん、それも明日には落ち着くらしい。だから、大事をとって、うちの家に帰るんだ。大したことはない。私が過保護なだけだ。」
 もっともらしくトダカが言うが、黒子猫は不審な目を向ける。黒子猫の経験から言えば、親猫が回復したといえるのは、食事がちゃんと摂れて、顔色も良くなっていなければならない。昼食の時の顔色は、どう見ても良くはなかったし、食事だって無理矢理に黒子猫が口に放り込んで食べさせていた。そんな状態で、いつもなら、帰宅の許可は降りていない。
「何か、ここにいて問題があるからか? 」
「問題はないね。・・・そんなに信用できないのなら、直接、ニールに確認しておいで。」
 その言葉に、黒子猫はラボを飛び出した。やれやれ、用心深いな、と、トダカはアスランに微笑む。
「だからこそ、無事なんですよ、トダカさん。・・・つまり、ママは刹那を出発させたかったんですね? 」
「そういうことだ。・・・キラ様。今夜、フリーダムの発進許可をお願いいたします。刹那君は、調査の最中で中断したことが気にかかっていて急いでいるらしいのです。」
 トダカの説明に、キラもピンッときた。「いろいろと厄介なことがある。」 という親猫の言葉の意味も理解した。なるほど、自分が邪魔だったからか、と、キラですら苦笑する。キラが刹那に命じたことが、ネックになって出発できなかったのだ。
「そういうことなら、さっさと行って、さっさと戻ってもらおうね、トダカさん。」
「はい、そうしていただけると、ニールも安心します。」
「先に出発のための資材を運びこみます。俺たちは、少し遅れて出勤しますから、ミーティングは八戒さんに頼んでください。」
「わかった。では、こちらはお願いいたします。」
 トダカの用件は終った。フリーダムについての講習をして、資材の積み込みを終えれば、発進できる。アスランが、整備スタッフに、それらの手配を連絡すると、ぴとっとキラが背中に張り付いてくる。
「刹那が羨ましい。」
「ん? 」
「だってさ、たぶん、刹那は、そういう愚痴なんか言わないじゃない? でもママは、ちゃんとお見通しで、刹那が出かけられるようにしてくれるんだもん。すごい以心伝心だよね? 」
「慣れっていうのか、普段からの修行の成果っていうか、そういうものだよな。キラが、無口で無愛想だったら、俺も努力して、ああいうことができたかもしれないな。」
「フォーメーションとかだったら、以心伝心できると思うんだよね。でも、日常は無理。」
「日常で種割れしてたら、疲れるじゃないか。俺もおまえも、そこそこ喋るから、刹那みたいに以心伝心する必要はないだろ? 」
「まあね。僕、アスランには言いたいことは、全部吐き出してるから。」
「俺も、そういう努力はしてるつもりだ。」
「うん、アスランは努力してる。刹那っぽいとこあるけど、言葉にしてくれるよね。」
「俺は、あそこまで酷くないつもりだ。」
「うふふふ・・まあね。」
 キラとアスランは、そんなやりとりをして、準備の手配をしている。キラのほうは、簡単なマニュアルを作っているし、アスランのほうは、積み込む資材の確認をしている。パイロット席は、それほど広い空間ではないが、そこにしか食料や衣料は積み込めないので、そこへ詰められるだけ詰めておく。人革連の西部やら、AEUとの境界なんてものは、おそらく人家地帯はないだろう。そこいらを考慮して、一か月分くらいの携帯食の用意をしておくことにした。




 黒子猫が、親猫の部屋にダッシュで引き返してきたら、すでに、親猫は普段着に着替えていた。
「刹那、シーツは取り替えておいたから、こっちで休むなら、ここを使え。」
 何気ない様子で、ベッドメイクまでしている親猫は、とても元気そうだ。とはいうものの、顔色自体は、それほどいいとは思えない。
「回復したのか? 」
「ああ、熱も下がったし、家に帰ってもいいって許可は貰った。だから、俺のことは、もういいぞ。」
「俺も付き添う。」
「いや、トダカさんと一緒だからいい。おまえ、フリーダムの調整とかあるだろ? さっさと出発したいなら、やることやってこい。」
 掛け布団を直して、ベッドカバーを被せると、ニールは、パンパンと手を叩く。床に置かれている取り替えたシーツやカバーを、ざっと持ち上げて、親猫は歩き出すので、黒子猫が立ちはだかる。
「ニールッッ。」
「俺は、ここに居る。おまえはやるべきことがある。そういうことだ。」
「だが、あんたのことは、俺の責任だ。」
「たから、それは終った。俺は、この通り、家に帰れるほどに回復した。それとも何か? 俺が、「いってらっしゃい。」 って見送らないと、出て行けないのか? おまえさん。」
「そんなことはない。」
「なら、行け。・・・・用事が済んだら戻って来い。どこかへ一緒に出かけような。楽しみにしてるぜ、刹那。」
 ゆっくり黒子猫の横をすり抜けて、親猫は居間へ移動する。こんなふうに、あっさりと置いていかれるのは、初めてだ。いつもは、煩いぐらいに世話を焼いてくれるのに、今回は、そんなこともなかった。やはり怒っているのだろうか、と、黒子猫でも不安になる。
「刹那、出て来いよ。」
 その黒子猫に、親猫の大きな声が聞こえて、顔を上げたら、扉から顔だけ覗かせて笑っている。こいこいと片手で招いて、呼んでいる。
「最優先ミッションは終了だ。次のミッションに移行しろ。それだけだ。」
「怒っているのか? 」
「はあ? 何に対してだよ? 」
「俺が、あんたをダウンさせたことだ。」
作品名:こらぼでほすと 漢方薬3 作家名:篠義