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物体もじ。
物体もじ。
novelistID. 17678
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01/Tio estas farebla.

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 許されるのなら、誇りたかった。

 ただ、彼を守りえたことだけは。





「……やっぱ、バレたか」



 気づかれないはずなど、ないと。わかっていたから、やったのだけれど。



「当然だろう。俺を誰だと思ってる」

「決まってら。俺の、この俺の、「相棒」だ」



 ……本当は。

 これ以上、期待、させないで、欲しかった。

 時間を、与えないで欲しかった。


 そうすれば、これ以上巻き込まれることもないまま、すべてを、この場で、終わらせることが出来たかも、しれないのに。



 この、長い生の中、ただ1人の「親友」にして、かけがえのない「相棒」を守るという、この上のない大義名分を、掲げて。





kara geamiko / 03

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 思考も何も、すべて、手放して。

 ただひたすら、前へ、遠くへと願った、結果がこれかと。


 テッドは、自分自身の馬鹿さ加減に、心底愛想が尽きた心地がした。



(よりによって……一番、離れなきゃやべぇ場所だってのに……それとも、俺にも帰巣本能なんてモンがあったってことか……?)



 もっとも、「帰りたい」、などと思ったのは、この「家」ではなく……ただ1人の、面倒くさそうな顔をした、この少年のところに、なのだろうけれど。


 それこそが一番避けたかった事態なのは確かで、でも、もしや、これが運命と呼ばれるものなのだろうかと、口唇を歪ませる。

 「運命」なんていう言葉は、気に入らない事を自分に無理やり納得させ、どうしようもないことの言い訳にするためだけに存在する言葉だと思っていたし、その考えは変わってはいないけれど、もうひとつ。


 何より避けたい、けれど本心のどこかでは望んでいたのかもしれないことを、引き寄せるための口実にも使えるのだと、そんな場合でもないはずなのに、妙に感心しながら、思った。



「……で? どういうことだか、説明はしてもらえるんだろうな?」



 ぱらぱらと首筋にかかる黒髪を鬱陶しそうにかきやって、目の前の少年が睨み据えてくるのを、埒もない思考を中断し、テッドは苦笑と共に受け止める。


 面倒くさそうな、嫌そうな顔と、声。

 けれど、それだけでないことは、きちんとわかっているから……きちんと、「聴こえた」、から。



「ああ。どこから話して欲しい?」

「時間はそうないだろうな」

「だーな。手短に済ますか……」



 ぐっと、右腕に力を込める。

 傷つき、血を失った身体では、それは思った以上の重労働で。

 せめて、目の前の相手には、それを悟られないようにと祈りながら、その、薄汚れた皮手袋に包まれたままの右手を、差し出した。



「……グレミオさんも……これだけは外さずにいてくれたんだな。いい人だよな……俺なんかにもこんな、気を使ってくれて……」



 戦争で負った、火傷の痕。

 そんな嘘を、本当に信じていたんだろうか?

 それだけで、ここまで神経質に隠す自分を、疑ったことは、なかったのだろうか?



(きっと、ないだろうな。あの人なら……)

「テッド」

「……ああ、分かってる。見ろよ、ルイ」



 ばさりと、皮手袋を、脱ぎ落とす。

 誰かの前で、それをするのは初めてのことで。

 陽に灼けることのなくなった、白い肌に、寄せられる視線を痛いほど、感じた。



「……紋章……? だが、これは……」

「見たことのない、形だろう? これの名前は……「ソウルイーター」……27の、真の紋章のひとつ、だ」



 禍々しい、その名を告げる声は、震えてはいなかっただろうか?


 頼む、から。

 どうか、嫌悪の目だけは、向けてくれるなと。


 心底から、願って、琥珀の双眸を、見上げる。



「……真の、紋章。それで、あの時……」

「そうだ……それが、拙かったようだけどな」

「テッド?」

「俺の……ミスだ」



 真摯な瞳に、見据えられて。

 ふと、耐えられないかもしれない、と感じた。


 間違いだったとは、思わない。

 唯一、胸を張れる、誇るべきことだったのだと、断言できる。


 けれど、それがために、ゆるされない失態を犯し、あまつさえ、目の前の少年を、自分の生に巻き込もうとしている、今の自分は。


 そんな資格などないのだと、わかっている。

 それでも、それでも。それでも。


 ただ、子どものように、泣いてしまいたいと、思ってしまう。



「俺は……お前たちと別れてから、城の、宮廷魔術師、ウィンディのところに、連れて行かれた」

「テッド?」



 すべてを、告げる。

 守りえたという誇りと、晴れ晴れとした気持ちを持って、そう決めたのは、まだほんの、昨日のことだと言うのに。


 今はそのすべてが、自分を苛む。



「あいつは……ウィンディは、真の紋章を、狙っているんだ。目的は分からないが……そのせいで、俺は、300年間……逃げ回り、放浪する羽目になった……」



 もし、あのとき。

 親友を守れた、呪わしかったはずのこの力でルイシャンを守れた、そのことに、浮かれてさえいなければ。

 やさしかったこの2年間という時間に、あの300年という時間を、埋もれさせていなければ。



「……ルイ。頼みが、あるんだ」



 今、こうやって。

 かけがえのないはずの人間を、無限地獄に巻き込む苦しみと、その裏腹な、昏い悦びを、知ることも、なかったかもしれないのに。



「友情に……縋って、こんなことを言うのは、厚かましいだろう。友に不幸をもたらすと解っていて、それをするのも、正しいことじゃない」



 今さらの、言葉。我ながら、見苦しいのは、わかってる。

 だけど、ルイシャン。

 本当は……



「俺には、お前しかいないんだ……「一生のお願い」だ」



 本当は。



「この紋章を……守ってくれ……!!」



 断って、ほしいと。

 それでも、思っている。


作品名:01/Tio estas farebla. 作家名:物体もじ。