01/Tio estas farebla.
ああ、今の自分は、このちっぽけな滴よりも無力な存在なのだと。
揺れて戸惑う、痛いばかりの眼差しが、目の前にちらつく。
(逃げろよ……ルイ)
だけど、だけど本当は。
ざあざあと、降り続く雨の音を掻き消す、無粋で騒々しい足音が、近づいてきた。
「……坊ちゃん? どうかなさいましたか?」
「あ? ああ……ちょっとな……」
大切な親友から預かりうけた、真なる紋章。
それは、いつでも彼の右手を覆っていた皮手袋に、守られて。
今、感じている温かさが、どこにいるともわからない、相棒に届かないものかと、埒もないことを考えていた。
声より何より雄弁に、叫んでいた、あの瞳が離れない。
「お前は、俺の頼みを聞いてくれた。俺が、お前を守る。逃げ切ってみせる」
「解ってる。必ず、守ってやる。必ず、助けに行ってやる」
「わかってる、ルイ……」
「待ってろ、テッド」
「「俺の相棒」」
お前のために、と。
交わした視線が、互いに、そう叫んでいた。
作品名:01/Tio estas farebla. 作家名:物体もじ。