リヒャミュで忠犬5題
4 勇敢なるパートナーへ
「とっつげきぃ〜」
いつもながら、緊張も深謀も存在しない命令に、部下たちはよく従ってくれる。
誰よりも先に敵陣に突っ込み、無造作に兵を斬り捨てながら、鼻歌を口ずさんだ。
―――彼まで、あとどれくらいだろう。
敵のただ中へ、たとえ単身だろうとも飛び込むことには、欠片のためらいも恐れもない。
―――邪魔するものは、すべて斬ってしまえば良い。
部下がついてきているかも確かめず、ただ馬を進めながら、次第に深くなる笑みに、鼻歌のテンポを上げる。いつもどおり。ただこのまま、進めば良い。
―――ああ、わかる。彼は確実にこの先に。
味方も敵も、関係ない。ただ、邪魔するものを排除するだけ。
―――彼との間を隔てるものなど、彼以外の何ものたりとて、ゆるすつもりは毛頭ない。
「待っててね、ミューラーさん♪」
―――ああ、さあ、みんなどいて。
だって、その先には彼がいるから。
作品名:リヒャミュで忠犬5題 作家名:物体もじ。