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そうして愛をむさぼって 2

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「エリザさーーん、支度はどう??」
「こら、ここをどこだと思ってる。もう少し静かにしないか」
「ヴェー、ルート厳しいよ!今日くらいはいいじゃん」
ノックとほぼ同時にドアが開いて、フェリシアーノとルートヴィヒの二人が入ってきた。
二人とも上品なフォーマルスーツで、胸のポケットにはハンカチを挿している。いわゆる正装だ。
フェリシアーノはおしゃれなカフェで飲むモカ色の、ルートヴィヒは冬の夜空みたいに凛としたブラックのスーツ。
それぞれが「いかにも」な格好だなあ、とエリザベータは口元を綻ばせた。


花嫁のベールはまだつけていない。
振り向くと結い上げた金茶色の髪の毛がさらさらとこぼれて、小さく美しい輪郭を縁取った。
「うわぁぁー、きれい。エリザさん、女神様みたい」
そう言われて悪い気がする女はいない。さすがイタリア男。
エリザベータはいたずらっ子のようなウインクをしてみせた。
「ありがとう、フェリちゃん。フェリちゃんもとってもかっこいいわよ」
「本当?じゃあ俺、エリザさん奪って逃げちゃおうかな~」
「こら」
フェリシアーノの首根っこを掴んでいるルートヴィヒが眉を寄せた。
まじめな彼には、このような場で交わすには不謹慎な会話に聞こえたのだろう。


このような場。
エリザベータはぐるりと周囲を見回す。
飴色に変色したオーク製の長窓からは5月の煌めく光が入り、その更に上には15世紀の作だろうか、豪奢なステンドグラスがはめられて、部屋に鮮やかな宗教絵巻を投げかけている。
先ほどまで髪とメイクを担当してくれていた侍女は下がり、代わりによく冷えたミネラルウォーターがコーヒーテーブルに置かれていた。
ここは伝統のある教会の香部屋―――要するに、花嫁の控え室だ。
本来なら身内以外の男性が入る場所ではないが、この二人は所謂「弟分」、血がつながっていなくとも十分その資格があるとエリザは思っている。