永遠に失われしもの 第14章
・・静まった気配の中で、
グレルの変な声が聞こえる・・
セバスチャンの名を呼んでいる・・
何をしてるんだ?お前は・・
(セバスチャンに似た少年が、
ベッドに横たわっている)
*************************
セバスチャンと同じ漆黒の髪、青白い肌、
紅茶色の目を持つ少年が、
寝台に横たわりながら、空をつかむ様に
手を上に伸ばしている。
その手首の形、骨の出方は、
やはり、僕には見覚えがある。
その白い指は、セバスチャンの指の特徴と
同じように、やや女性的で細く長い。
顔の造作も、今のセバスチャンを幼くした
ようで、全体的な印象は変わらない。
無表情で無感動なその眼には、
それでも奥に高い知性を感じさせ、
決して狂気の世界に入っている訳ではない
ことを物語っているのに、
一言も発する様子もなく、
体を動かすこともほとんど無さそうだ。
少年の上には、金髪の男が
圧し掛かっている。
息をしているのかさえ分からぬ様子の
少年とは真逆に、その男は急くように、
荒々しく息をし、
その度ごとに背中までが動く。
男は熱情を込めた目を少年に向け続けて、
次第に、時々うわ言のように、
口を同じ形に動かしている。
・・L・・E・・O・・と。
*************************
サンカリストの地下墓地の魂の
シネマティックレコード・・・
僕は何か大きなものを見過ごしている・・
作品名:永遠に失われしもの 第14章 作家名:くろ