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豊橋まりあ
豊橋まりあ
novelistID. 18949
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宵闇にて

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弐:わたぬきの日


彼は俺を睨んで、嫌いだ、と口にした。
俺が「知っていたよ」と言うとその表情を更に憎々しげに歪めた。
「何も出来ない癖に偉そうなのが気に食わない」「俺の方がずっと優れてるのに」「余裕ぶった顔して」「嫌いだ」「何処かへ消えてしまえば良い」
矢継ぎ早に繰り出される憎悪の言葉に、俺はいちいち馬鹿みたいに「ああ」と頷く。そうする度彼が苛立ちを募らせているのは分かっていたけれど。彼の言葉が止まったころ、ごめんな、と呟くと、彼はとうとう俺を睨むことすらしなくなった。

彼は表情の無い顔で、嫌いだよ、と呟いた。
俺が、そうだろうな、と答えると、そうだよと首肯した。
「そうやって何もかも受け流そうとするのは何にも執着しないからなんだろう、いつでも死ねるように生きてるなんて気持ち悪くて嫌いだよ」
一息に吐き出された言葉は酷く無感動な響きを帯びていて、彼の目は俺を素通りして何処か遠くを見ている。ごめんな、と俺も彼を見ずに呟くと、「そういう処が嫌いなんだ」と返された。

彼はこちらに背を向けて、嫌い、と叫んだ。
俺が、ああ、と頷くと、何処かへ走り去ろうとしたが、数歩進んでからくるりとこちらへ振り向いた。
「僕たちのことが嫌いでしょ」そんなことはないさ。「じゃあ我儘聞いて」俺に出来ることならなんだって。「……嘘つき。偽善者。大嫌い」そうか。
しばらく問答を繰り返すと、やがて彼は口を噤んだ。拗ねたようなその表情に、場違いにも頭を撫でてやりたくなって手を伸ばしたが、その手は振り払われる。ごめんな、と苦笑しながら呟くと、彼は歯痒そうに俯いた。

三人は口を揃えて、俺が嫌いだと言った。
いつも一人で背負おうとする処が嫌いだと。
彼らの為に独り死のうとする処が嫌いだと。
どんな我儘でも赦そうとする処が嫌いだと。
俺は、ああ、そうだろうな、知っていたよ、と頷いた。「だけど、ごめんな」
お前らが俺を嫌いでも、俺はお前らが大好きなんだ。
俺は独りで全てを背負うし、お前らの為に死ぬし、お前らが望むことならなんだって叶えてやるよ。
だって俺はお前らを守る為に生きているのだから。

(島津四兄弟)

作品名:宵闇にて 作家名:豊橋まりあ