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本望にて

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トーヤは馬の群れへとゆっくり寄っていく。
すると、さっきトーヤが指さした馬は勘づいたように群れを離れて遠ざかっていった。
もちろんトーヤはそれで諦めたりはしない。
逃げていった馬を追う。
相手は放牧で半ば野生化した荒馬である。
トーヤは自分の馬を駆けさせ、一気に距離を詰める。
機をのがしてはならない。
今だ。
そう判断すると同時に、逃げる馬めがけて馬上から縄を放つ。
空を鋭く飛んだ縄は狙ったとおりに馬の首に巻きついた。
馬がバランスを崩す。
その頃にはもうスレンが近くにいて、首に縄が巻きついた馬を横倒しにした。
大地が震動した。
トーヤは迅速に自分の馬からおりる。
すぐにスレンのそばに駆け寄り、倒れている馬に覆いかぶさった。
馬は足をばたつかせて暴れている。
それを腕の力だけでなく体重も使って一生懸命おさえつける。
一方、スレンはおさえつけつつ、馬の口の中の前歯と奥歯とのあいだの歯の生えていない隙間に鉄製の棒をかませた。
さらに、スレンは棒の両端にある輪に手綱をつける。
馬具をつけおわると、トーヤとスレンは馬を立たせた。
スレンはその馬の手綱を引き、トーヤは自分の馬の手綱を引いて、見物人たちのいるほうにもどる。
「やるねえ」
お嬢ちゃんとトーヤをからかった青年が褒めた。その称賛に嘘はないことがトーヤに向けている眼から伝わってくる。
他の者たちは同意するようにうなずいた。
トーヤは笑う。
「あとはまかせてもいい?」
「ああ」
承諾した青年に、スレンが手綱を渡した。
放牧中だったのを捕らえて間もないので、馬を慣らす必要がある。
それをまかせることにした。
まかせて問題ないだろう。
トーヤとスレンは彼らから離れる。
しばらくして。
「……あれぐらい、あのひとたちもできるんだろうな」
トーヤは自分の馬の手綱を引いて歩きながら明るく言った。
「私よりも、もっとうまくやるのかも」
馬の捕獲についてである。
「ああ、そうだな」
スレンが穏やかな声で返事をする。
「皆、強そうだ」
「うん」
トーヤはうなずく。
ここはトーヤたちの部族の宿営地ではない。
騎馬民族の連合軍の駐留地だ。
軍を率いているのはもちろんライネイスで、そして、集まっているのは間近に迫った戦で兵となる者たちである。
振帝国と戦うのだ。
作品名:本望にて 作家名:hujio