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【ギルエリ】 「痛いキス」 ノベリスト版に改訂

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でも、エリザベータは眠ってる・・・・・。
夜明けもまだだ・・・・・・・・。

再び反応しそうな自分を押さえながら、ギルベルトはずっとエリザベータの寝顔を見つめていた。
ギルベルトの心に、ある感情が灯った。
彼は、生まれて初めて、それを自覚した。
それは、この先ずっと果てしない時間、永遠に彼の心から消えることのないものだった。




雨の落ちる音が静かにエリザベータの寝息と重なる。

ギルベルトは眠る彼女の頬に、そっと口づけた。


はだけていたシャツの下の彼女の肌・・・・・。

暗い洞窟の中で、白く浮かび上がる女の体・・・・・。



(愛おしい・・・・・。)


そんな言葉が心の中に浮かんで、魂の奥底に刻まれる。



(ああ・・・・そうか・・・・・・。)


この感情が・・・・そう・・・・か・・・。




たった一人でいい。

生涯に、たった一人、と思った「人」。
その「人」と出会ってしまったら・・・・もう二度と、「その人」以外は考えられなくなってしまうものだと・・・。

彼の国王が言っていた言葉をギルベルトは思いだした。

「その人」と少年の時に出会った国王は、「彼女」と結婚することを夢見た。
それをかなえてくれるはずだったオイゲン公は亡くなった。
幼い国王は、暴力と、絶望の中で、夢見た彼女を失った・・・・・・。
そして、国王の「夢」は「自分=プロイセン」だけになった・・・・。
それでも、あの時の思いは忘れられない・・・・国王は、忘れていない・・・。

たった一人の女性だけを、生涯、思い続ける。

それは国王とギルベルトの数少ない共通点・・・・・・。



エリザベータは女性だった・・・・・。
ギルベルトは男に生まれた・・・・。


白く浮かび上がる美しい体。
もう少年ではなく、しなやかな女の姿・・・・。


抱いている腕に力が入る。

手を触れたい。
その肌に。

ギルベルトの腕の中で眠っているのは、幼馴染みではなくなってしまった・・・・・。


  ( Meine Lieblingsfrau.............)



背中には冷たい岩があたっている。
エリザベータはギルベルトに寄りかかりながら、静かに眠っている。

もう一度その頬に唇を這わせた。

閉じられた唇に、自分の唇を合わせる。


(・・・前にもあったな・・・・。眠ってるこいつにキスして・・・・。)


ギルベルトは思いだした。

どうしても、彼女にキスしたくて、怪我をして眠っている彼女の唇に触れた・・・・。



(・・・ああ・・・そうか・・・・。あの時・・・あの時から・・・俺は・・・。)


彼女は深く眠りについていて、起きる気配がない。

ギルベルトは、そっと腕を動かして、寄りかかっているエリザベータの体をもっと自分に引き寄せた。

彼女の体も、ギルベルトと触れていないところが冷たい。
少し向きを変えて、彼女の冷たい部分を温める。

今、彼女を起こしたくない。


やっとわかった。
やっと知った。


この思いがなんであるか。

フリッツがいつも笑って言う「それは恋だろう」というその「恋」が。

安らかな寝息がエリザベータから漏れる。


ギルベルトは、もう一度、彼女の唇に自分のそれを重ねた。






雨は小止みになりかけていて、洞窟は冷たい風が吹いていたが、初めて知った感情に、ギルベルトは熱せられる。


( Mein ewiger Liebhaber.................)



この熱をエリザベータに分けてやりたい。
この体を温めるのは、俺だけでいい・・・・・。



彼女が起きないように、そっと静かに、ギルベルトはキスを繰り返した。



























*********************************


ウィーンの宮廷の中は、外の激しい雨をよそに、暖炉の火が暖かく燃えて乾いていた。

何百本というろうそくが水晶のシャンデリアにきらめいている。
窓の外の暗さとは反対に、真昼のような明るさに満ちて、優雅な女帝のテーブルの上を照らしている。


華やかなウィーンの宮廷内。

激しい戦闘が行われている戦場とはまったく無縁の世界だった。
マリア・テレジアの前で演奏していたローデリヒは突然、立ち上がって歩きだした。


「・・・・もう待てません・・・・・。ハンガリーを探してきます。」
「ええっ?お待ちなさいな!オーストリア!」

女帝があわてて、いきりたつローデリヒを止めた。

「もう、半日連絡がないのですよ?!戦場から帰ったという報告もありません!なにかあったに違いありません!」
「戦場に残って、ちょっと様子を見て来るとの連絡がありましたよ。少し落ち着きなさい、オーストリア。」

女帝は侍女を呼ぶと、お茶を持って来させた。
ローデリヒは、土砂降りの雨が降る窓の向こうをにらみつけている。

「さあ・・・・座って。お茶を召し上がりなさい。この雨です。ハンガリーはどこかで雨宿りをしているのでしょう。心配はいりませんよ。ハンガリー軍と一緒にいるのですから。」
「ええ、そうでしょうが・・・・。」

雨のせいで帰還が遅れているのだと思うのだが、さっきから何か悪い予感がしてならないのだ。
戦場の視察をしてから帰るという報告を受けてから、エリザベータからの連絡がない。
視察の後、ハンガリーに直接戻ってもおかしくはないのだが、いつもエリザベータは律義にウィーンに寄って戦況の報告をしていくのだ。
それが今日に限って、何も連絡すらないとは。

「雷も鳴っていますね。こんな雷雨の中、無理に帰ってくればかえって危険です。
大丈夫です。ハンガリーは無事でいますよ。」
「ええ。そうですね・・・きっと雨宿りをしているのでしょう・・・・。」

落ち着かないローデリヒを見て、女帝は苦笑する。

プロイセンが突然攻めてきてシュレジェンを奪ったことは、オーストリアであるローデリヒに打撃だったことはわかるのだ。
自分だって、煮えたぎるように悔しい思いをしたし、あのプロイセン国王が憎い。
しかし当初は、ローデリヒも宮廷の皆と同じように、演奏会があるだの、楽器を持って行けないなどとほざいて、真面目にプロイセンと交戦する気があったかどうか・・・。
それが、ハンガリーが参戦することとなったとたんに態度が変わったのだ。
必死でハンガリーを止めようとするローデリヒ。
ハンガリーが戦場に出るとなると、渋っていた彼も一緒に戦場へと向かう。

プロイセンの暴挙に対して、怒りはするものの、どこかローデリヒは相手を馬鹿にしているようだった。
ところがハンガリーが来るとなったとたんに、目が覚めたかのように動き始めた。
慣れない軍服を着て、ハンガリーと一緒にいくと言い張った。
困ったのはハンガリーの方だった。
なんとかローデリヒを戦場に近づけないようにしてくれ、と女帝はハンガリーに頼まれた。
そうでないと、自分は戦えないと。

内心、オーストリア=ローデリヒの軍隊のふがいなさを指摘されたようで苦笑したが、今はハンガリーに頼るしかない。