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【ギルエリ】 「痛いキス」 ノベリスト版に改訂

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幼い息子を抱きかかえてハンガリーの議会に頼みに行ったかいがあったというものだ。

押される一方だった戦局は、見事なまでにプロイセン軍を押し返し、なんとかシュレジェン以外の領地は守り通した。
あとは、ハンガリー軍のように、オーストリア軍を鍛えなおすだけ・・・。

女帝の眼に、いらいらと部屋の中を動き回るローデリヒはか細く、ひ弱にみえた。


あの暴虐なプロイセン。

「彼」のいる戦場には絶対にハンガリーを近づけさせないようにローデリヒが手配したのを女帝は知っている。
それでもハンガリーはローデリヒの気持ちを知ってか知らずか、猛烈な勢いでプロイセン軍に向かっていった。
そして押されっぱなしだったオーストリア軍はようやく一息つくことが出来たのだ。

ハンガリーを味方につけられて本当によかった。
ハンガリーの議会に足しげく通って説得したかいがあった。
今ではハンガリー軍は最も頼もしい味方だ。
それでも、自国のだらしない軍隊と議員たちを一掃しなければ・・・・・!
あの憎いプロイセン国王、フリードリヒの思うままにさせておくものか!
軍を立て直し、改正を薦め・・・・・そう優秀な司令官を育成し・・・。
かつてフランスから奇跡のようにオーストリアにやってきたプリンス・オイゲンはもういないのだ。
オイゲン公に匹敵するような将軍を育ててシュレジェンを奪還しなくては!!

女帝マリア・テレジアはローデリヒの細い腕を見ながら決意する。
窓の外を見つめるローデリヒ。

振り止まない雨を見つめながら、それぞれの思いが交錯していた。





****************************************








































そぼふる雨の音が聞こえる。




まどろみの中で聞く雨の音は、故郷の森の中で、木々の葉に落ちる水音に似て、心地よい・・・・・。

でも、心はなにか物悲しい・・・・・。そんな思いがした。

ふとエリザベータは目を覚ました。

暗い洞窟の中に、静かに雨音が響く。




「よお・・・・目え醒めたか。」

すぐ後ろでギルベルトの声がした。
起き上がると、彼は軍服を身にまとって、剣をつりさげているところだった。

「まだ雨はやまないけど、もう夜は明けてんだ。馬達を探しに行ってやらねえとな。」

「ああ・・・・・・・。」

エリザベータは自分がギルベルトのシャツしか着ていないことに気がついた。
はっとなって、シャツの前を閉じるが、ギルベルトはこっちを見もしない。
彼はもう軍靴まではいてしまっていた。

「まだ服は濡れてるけど、どうせ雨の中でるからまた濡れるだろ。そのシャツは着とけよ。お前んちの軍服じゃ、雨が染み透る。もう少し、分厚い生地で作れって言っとけよ。戦場ですぐに破けちまうぜ。」

軍靴のひもを縛りながらギルベルトは怒ったように話している。

「うちの軍服なんかねえよ・・・・。適当なのをひっかけて着てるだけだ。」
「支給品ですらねえってのか?」
「ああ、そうだ。うちはまだ、そういうのを大量に作れるわけじゃねえ。」
「・・・・いろいろ大変だな・・・・お前んちも。」
「まあ、軍服もだけど、今は装備の方が大事だからな。お前んちのマスケットの数、すげえよな・・・あれは圧巻だった。」
「うちには、フリッツのおかげで、変な技術者が集まる。おっといけねえ。軍事上の機密はもらせねえよ。」
「へん!銃そろえてる割には、竜騎兵は動きがなっちゃいねえけどな!」
「だから、軍事上の話はしねえって。おい、お前もそろそろ服着ろよ。腹減っただろ?馬見つけて、飯にしようぜ。」
「ああ・・・なあ、このシャツお前の国王がくれたんだろ?それをわたし・・・俺がもっていっちまったら怒られねえか?」
「フリッツはそんな事で怒らねえよ。あと、お前とやたらと話したいって言ってるから、今度会いに来てやってくれよ。まあ、出来たらでいいからよ。」
「もう話したぜ。お前んちの国王とは。」
「へっ?もう話した?!どこで?!」
「さっき・・・・・お前に会う前に。お前がここに居るから会ってこいって言ったのはフリードリヒ国王だぜ。」
「なんだ・・。お前フリッツに会ったのか・・・。俺に会ってこいって言った?!」
「ああ。だからここに来れたんだ。でなきゃこんな敵陣に一人で入ってこれるかよ。」
「フリッツが・・・・。」

ギルベルトが絶句している。

「お前のとこの国王、すげえな。私を見て一目でハンガリーとわかったし、敵兵がいても平然と寄ってきたぜ。」
「あんの馬鹿!敵に近付くなっていつも言ってんのに!・・まあ・・・フリッツはちょっと変わり者なんだ・・・。」
「すごく人懐こくて、人の話は聞いてなくて、強引だったぞ!お前んちの国王は!!」
「ああ。あいつは気にいった人間にはそうなんだ・・・・。まあ、何か色々言ったかもしれねえが、悪気があるわけじゃねえからよ・・・。」
「へえ・・・珍しいじゃねえか。お前が上司をかばうなんてよ。いつもなら「つまんね奴」とか言いたい放題なのによ。」
「うんまあ。フリッツは生まれた時から見てるからな・・・・・。あんな奴は初めてなんだ!頭がいいだけじゃねえ。あいつの根性はすげえよ。まあ、俺が言うのもなんだけどな。」
「ふーん・・・・・・。お前が夢中になる「上司」、か。」
「まあ、久しぶりだからよ。あんなにわくわくする奴は・・。」
「・・・・・私にも・・・・いればな・・・・そういう奴が・・。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「まあ・・・・今のところは無理、か。」
「お前・・・。」
「へっ!気にすんなって。私・・いや、俺はまだ人んちにいるんだしな。」
「それが・・・・本気で悔しいのなら俺と来い!」
「な、何言ってやがる!?」
「ハンガリー!お前が独立したいのなら、俺と来い!プロイセンは、オーストリアとこれからも戦う!お前が奴に反旗を翻すなら、今だろう!シュレジェンは俺のものになった。お前が俺の味方になるなら、お前を助けてやれる!」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「なあ、考えろよ!お前にとって、一番いいのは何だ?このままあの坊ちゃんの支配下で過ごすのか?俺の手をとって、独立を目指すのか?!」
「・・・・・・・・・・・ばーか。」
「馬鹿とはなんだ!俺は本気だぜ!」
「だから・・お前は・・・・・!いいか、今はお前が勝ったかもしれない。だけど、このままオーストリアさんが黙ってるわけねえだろ!!フランスはお前の味方かもしれないが、なんたってオーストリアさんは「神聖ローマ」の冠を持ってるんだ!他のドイツ諸国を味方につけて、お前をやっつけに行くに決まってるだろう!」
「そうかもしれない。だけど、お前は!」
「いいんだ・・・・・・。俺は、オーストリアさんを助けたい。そう思ってこの戦場に来たんだ・・・・・・。お前とだって本気でやりあったろ?俺の国民が望むまで・・・俺に独立出来るはずがない・・・。」
「だからって!じゃあ、俺と戦うっていうのか!お前はこのまま!」
「そうだ!仕方ないだろ!俺達は「国」だ!民の声、民の望むままに生きるしかない!
民の意志が俺の意志だ!」