二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【ギルエリ】 「痛いキス」 ノベリスト版に改訂

INDEX|4ページ/18ページ|

次のページ前のページ
 

「だからそんなの甘いって言ってるんだ!オ―ストリアさんは皆を引き連れて、お前から取り戻しにこようとするぞ。そしたら、お前なんかひとたまりもないじゃないか!」
「俺がそんなに弱いってのか!」
「お前は公国になったばっかりだろ!?オーストリアさんは、大国だ!その気になったらお前はつぶされてしまう!なんでいつもけんかばっかりなんだ!もう少し、考えて行動しろよ!下手したら、世俗化する前のひどい状態になっちまうぞ!」
「そんなへまはしねえ!俺だって考えて行動してるんだ!俺はやっと「国」になった。
誰の支配も受けてない国にな!チャンスがやっと来たんだ。こんな好機を見逃せるか!」
「それがよりによってオ―ストリアさんか!いいか、あの人は見た目は優しげかもしれない。でも、その気になったら敵でもなんでも自分に有利な味方に変えてしまう。お前の味方してるフランスやザクセンだって、いつお前を裏切ってオーストリアさんにつくかわからないぞ。心配してやってるんじゃない!」
「余計なお世話だ!なんだお前は。坊ちゃんの肩ばっかりもちやがって!支配されてるのが長いと、そうやってへーこらしないと、生きていけなくなっちまったのかよ!」
「なんだと!?お前・・・・人の話をぜんぜん聞いてないな!私は警告してるんでしょう。素直に忠告を受け入れる事も出来ないの!?」
「それが余計なお世話だってんだ!お前はいったいなんなんだよ!坊ちゃんのまわしものか?!坊ちゃんの言うとおりに軍隊まで出してきやがって!本来お前が出る幕じゃねえじゃねえか!」
「私の上司は、今はマリア様なんだ!女帝のいうことを聞いて当たり前だろう!」
「ふん!その女帝様がお前んところに通って頭を下げ続けたっていうじゃねえか!
断ることだって出来たろうが!」
「今、断れたって、いずれは要請にこたえなきゃならない!ただ時間の問題だっただけだ!」
「それでも、お前は、お前の意志で出来たんじゃねえか!俺と戦うためにな!」
「ああ、そうだ!俺はお前と戦う。それが俺の上司と国民の意見だ!」
「へっ!それでも遅かったぜ!シュレジェンは俺のもの!いずれ、オーストリアの土地は全部俺が奪ってやる!」
「そんなことをさせるものか!私がいるんだ!お前に勝手なことをさせたりしない!」
「へって!ずいぶんとえらそうじゃねえか!他人の家で、ぬくぬくとしている間に、お前自身の土地も国民も皆ウィーンに取られちまってよ。頭が腐っちまったのかよ!ハンガリー様は!」
「なんだと!俺が腐ってるってのか!」
「そうじゃねえか!反抗もしねえで、飼い犬っみてえにご主人にしっぽふりやがって!」
「お前に何がわかるってんだ!」
「何もしないで、他人ちのいいなりになってる奴のいいわけなんて聞きたくねえ。」

エリザベータがパンッとギルベルトの頬を張った。
負けじとギルベルトもエリザベータの頬をたたく。

「この野郎!!」

お互いにカッとなってつかみあいになった。
昔の子供の頃だったら、すぐに剣を抜いていただろう。
剣の練習も兼ねてだったが、すぐに切りあいのケンカをした。
今は、剣を抜いたらどうなるか、お互いにわかっている・・・・・・・。
だから、体を使っての殴り合い・・・・。
そう思ったが、勝手が違う事にギルベルトはすぐに気がついた。
殴りかかってくるエリザベータに対して、ギルベルトは彼女が本気なのかを疑ってしまった。
ショックを受けた。

(・・・昔は・・・もっとこいつは力が強かったんじゃ・・・・・・。)

エリザベータの力は拍子抜けするくらい弱く感じた。
動きもギルベルトの方が数段速い。

(ああ・・・・・こいつ・・・女だから・・・・・。)

それでもエリザベータはむきになってギルベルトの服をつかんだ。
互いの服を引きちぎりそうになりながら、もう片方の手は腕をつかむ。
ギルベルトは2、3歩、エリザベータを引きずるように揺り動かす。
左右にエリザベータが振られる。
以前は自分がのされてしまうこともあったのに、今はエリザベータの腕を簡単におさえこめる。


(・・・ちきしょう・・・!!なんて細い腕してやがる!!)

先に冷静になって、すっと手を離したのはギルベルトの方だった。
女性であるエリザベータとの体格差は、ギルベルトに現実を突き付けた。

(こいつは・・・・・女で・・・・もう・・・俺の「ダチ」じゃねえ!!)

哀しみと怒りがないまぜになって、ギルベルトの心をゆさぶった。
それでもギルベルトの口からは、罵りの言葉しかでてこない。

「けっ!もういいぜ!腑抜けになっちまった奴なんて、相手にするかよ!
お前はもう昔の俺の相棒じゃねえ!!ただのつまんない、坊ちゃんちの召使だな!」

今度はもっと高い音で頬が鳴った。

「・・・・お前に・・・お前なんかに・・・・!!」

以前の彼女なら平手ではなく、こぶしで殴ってきたはずだ・・・・・・・。
そんなことが、今のギルベルトの心を惑わせる。
それを振り払いたくて、怒鳴り続ける。

「わかりたくなんかねえよ!!トルコと戦ってた時のお前はかっこよかったよ!
自分のすべてをかけて真剣に逆らってた!今のお前は、何もかも全部、なあなあで済ませて「国」としてのプライドもなんもないただの負け犬だ!」
「負け犬だから、負け犬らしくしてるんじゃねえか!!私・・・俺にはもう何も残ってないんだ!!「国」としての誇りも独立もなにもかもねえ!
逆らったら国民がひどい目にあわされる!!そんな俺の気持ちなんか・・」
「俺がわからないっていうのか!!俺が知らねえっていうのか!!
負け犬のまま、ずっとこらえて生きてきた俺に言うのか!「国」にもなれず、土地もねえ、民すらもいねえ!それでもずっと俺は・・・・・!!」

エリザベータがくるりと後ろを向いた。

「そうやって私・・俺をののしってりゃいいさ。俺はもう・・・俺にはもうどうにも出来ねえんだ!!どんなに・・・・悔しくたって・・・国民や俺の上司はトルコよりはオーストリアに併合されて、喜んでるんだ!独立しようにも、それに反対する奴らばっかりで・・・。
俺が、「俺を独立させようとする国民」を取り締まってるんだ!!
信じられるか?俺は俺のために働いてくれている国民を、俺が捕まえて牢やに放りこんでるんだ・・・・!今の俺にはなんの希望も残ってねえ!負け犬らしく、ご主人にしっぽふって何が悪い!」

顔をゆがませて怒鳴るエリザベータの瞳に涙が光っている。
ぐっと、ギルベルトは言葉につまった。

ぽつりと肩に雨のしずくがかかった。

エリザベータはうつむくと、低い声で絞り出すように続ける。

「いつもなら、ウィーンの宮廷で・・・・・ドレスを着ろだの、礼儀作法がなってないなんて・・・怒鳴られてるところだけど、戦場なら・・・・・戦ってる間なら、私・・・俺がどんな格好してようがなんも言われねえ・・・・・。どんな言葉づかいだろうと、何をしてようと・・・な・・・・・。馬の上で立って走ろうが、馬鹿扱いされねえ!!俺はもう・・・・俺は・・・・戦場でしか「俺」でいられねえんだよ!!
この悔しさがお前にわかるか!!男のお前にわかるか!!