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【ギルエリ】 「痛いキス」 ノベリスト版に改訂

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(くっそ・・・・!馬鹿か、俺達は!!怒鳴りあってるひまがあれば、どっかに逃げてればよかったのによ・・・・!!)

エリザベータは、ぐいぐいと腕をひっぱるギルベルトの力に、自分の非力を痛切に感じていた。

(お前よりも・・・・私・・・俺の方が・・・・腕力あったのにな・・・・・。)

もうどうにでもなれ、という気持ちがエリザベータを支配していて、雷も、そう気にならなかった。

  稲妻に打たれるなら、打たれてしまえ・・・・・。
  こんなみじめな自分を消してしまえ・・・・・・・・!!

それでいて、腕をつかんで離さないギルベルトを振り払うこともしなかった。

ギルベルトは必死で逃げ込む場所を探す。
土砂降りの雨で前方は良く見えなくなっている。

目を凝らすと、森の奥に崖のような岩肌が見えた。

(どこか・・・・逃げ込めるところを・・!)

駆け寄ると、崖は森の切れ間にそびえていて、進路をふさいでいる。

ガラガラっと音を立てて、一瞬、目が光で見えなくなった。
世界が紫に染まる。
雷の振動で体がびりびりとする。

(やばい!!すげえ近かった!!)

その時、ギルベルトは目の端に洞窟を見つけた。

「あそこだ!!あそこへ逃げ込むぞ!!」

雨と雷の音に負けないようにギルベルトは叫んだ。

エリザベータは、濡れた体が重いのか動きも鈍くなってきている。
ビシャァっとまたすぐそばで雷が落ちた。

必死で洞窟の中へと走った。
なんとか洞窟の中へ逃げ込んだ時には、体じゅうずぶぬれになっていた。
ふとエリザベータを見ると、息を切らしながらも茫然と立ちつくして洞窟の外を見ている。

彼女の様子を横目で見ながらも、ギルベルトは洞窟の中をぐるりと見回す。
自然に出来たであろう洞窟は雨はしのげるものの、崩れた岩棚で出来ている奥もそれほど深くはなく、二人が入るのがやっとの狭さだった。
それでも、そこら中に落ちる雷と土砂降りの雨の降る外に居るよりはずっといい。
滝のような雨で、外の景色が見えないほどだ。
雷はすこしずつだが、遠ざかっている。
安全とは言い難いが、ここにいればなんとかなるだろう。

ほっとすると同時に、濡れた体がじんわりと冷えてくる。
さっきまでは、雨に打たれても怒りと苦しみで、心も体も煮えたぎるようだった。
それが冷静になってみると、震えるほど寒い。
洞窟に入りこむ風は冷たく、痛烈な寒さが体を襲ってきた。
エリザベータを見ると、怒りはこの雨と雷のせいで収まったのか、落ち着きを取り戻していた。
落ち着き、というか、茫然としているようだが。
雷は遠ざかっていくが、雨はやみそうにない。
ギルベルトは、辺りを見回すが、たき火のたきつけにできるようなものはまるでない。
外に落ちている小枝や、枯れ葉なども、あるものはすべて濡れてしまっている。

エリザベータが体を抱えて震えている。

どうしようか・・・・。このまま、濡れたままでいれば風邪をひく。
かといって、火をつけることも出来そうにない・・・・・。

心の中で、葛藤する。

(こいつは女で・・・・・俺は・・・男・・・・。)

エリザベータは気にするだろうか・・・・・。
ハンガリーに居たころ、冬のさなかにお互いに体を寄せ合って温めあって眠った夜もあったが、それは遠い昔だ。
でも、今の状況で、互いの体を温めるのに、それ以外の方法があるだろうか・・・。

(ええい!!もう、どうでもいい!!)

なかば、やけになって、ギルベルトは濡れた服を脱ぎ始めた。
その姿を見て、エリザベータはぎょっとする。
昔の子供の頃ならなんとも思わなかったろう。
だが、今は・・・・・。
否応なしに意識させられた。

(こいつは男で・・・・・・自分は・・・・女・・・・・・・・。)

次々に遠慮なく衣類を脱いでいくギルベルトの引き締まった体・・・・。
細身だが筋肉がしっかりとついていて、体に無数に走る傷のいくつかはなじみのものだ。
見まいとしても目がいってしまう。

(こういう体が欲しかったのに・・・・。こんな軟弱な体じゃなくて・・・・。)

ウィーンへ行ってから、ローデリヒに何度も言われている。

『貴方は女性なのですから、女性らしくなさっていればいいのです。無理して体を痛めつけることなど、必要ありません。』

戦いに出るな、ということなのだろう・・・・。
気を使ってくれているのだろう・・・・・。
次々にドレスや華やかな飾りを贈ってくれる。
ウィーン宮廷でエリザベータが皆に見劣りしないように。
ローデリヒなりの優しさなのだと思う。
戦いに行けば傷つくのは避けられない。

今回の戦いでも、ハンガリーが戦闘に出ることを、ローデリヒは最後まで必死で止めた。
それでもエリザベータは、剣をふるい、馬上で弓を放ち、野を駆っていたかった・・・・。
男だったらそれが許されたのだろうか?
女性だから・・・・ウィーンの宮廷で、行儀作法だのマナーだのに苦しめられている。
プロイセン=ギルベルトがオーストリアを攻めてきて、やっと戦闘に出られた・・・・。
馬に乗って、剣を持っても、ののしられない。
むしろ、オーストリアの人々は、ハンガリー兵の勇猛さに感謝・・・いや、畏敬の念を持ってこの戦いに送り出してくれた・・・・。

そして戦場に出た。
しかし・・・・・・・。

男との体の差を思い知らされた・・・・・。
エリザベータはハンガリー軍の戦闘指揮官だから直接の戦闘があるわけではない。
だが、戦地での逗留はエリザベータの体力を奪い、あれだけ乗りたかった馬も、相次ぐ戦闘に駆られると息が切れた。
自軍の兵士には気づかれていないが、ギルベルトのうちの上司・・・・あの鋭敏な国王はいとも簡単にエリザベータの疲労に気付いてしまった・・・・。
労わりの言葉すらかけてきた・・・・・・・・。
そのうち、自軍の皆にもわかってしまうのだろう・・・・・。

「国家様」は、戦闘についていけない・・・・。
「女性」なのだから、もっと気をつかって差し上げないと。

ハンガリーの国民に、そんな事を言われるくらいなら死んだ方がましだった。

ギルベルトは上半身、裸になってしまった。
濡れた衣類を奥の岩棚の上に放り投げている。
ふと、彼の背中を見て思った。

(・・・ここで俺がこいつを刺したら?「国」は死なないけど、こいつが動けなくなったら、少しは戦局が変わるだろうか?それとも・・・・・。)

卑怯な手だよな・・・と思っていると、後ろを向いたまま、ギルベルトが言った。

「刺したきゃ、刺してもいいぜ。」

心の中をのぞかれた様な気がして、エリザベータはぎくりとする。

「俺が憎いんだろ・・・?シュレジェンを取り戻したいんなら・・・。」

ギルベルトは後ろ向きのまま、上半身裸で、両手を広げた。

「俺が倒れれば、多少は戦局が変わるだろ・・・・・プロイセン軍の士気も落ちるだろうし・・。」

ギルベルトは腰のベルトに下げていた剣を取ると、エリザベータの方へ放り出した。

「・・・・・・・お前が・・・・坊ちゃんのために生きるなら・・・・
 オーストリアの元で生きるなら、俺を刺しても当然だろ。」

エリザベータはカッとなって叫んだ。