The Beautiful Beast.
徐々に冷たくなっていく彼女の身体。俺の頬を撫でた右手が力無く落ちる。
そのとき俺は初めて、人のために吠えたのかもしれない。
雨が降っている。
城も崩れてしまって、君も消えてしまって。
残されたのは、この…永遠を生きる身体だけ。
「ああ――」
虚無感しかない心とは裏腹に、口元は笑みを象る。
「これが、」
好きって気持ちなの?愛だというの?
ならばもっと君を愛せば良かった……!
頬に伝う涙を拭って、違和感を感じる。
温かい。
自分の身体を抱きしめた。
俺は彼女に何も与えることが出来なかった、でも彼女は俺に残してくれた。
冷たさしか知らないこの身体に、人の温もりを。
「…」
顔を上げて、立ち上がる。
君に愛を与えられなかった代わりに、人を愛そう。
それが俺に出来る、唯一のことだから。
胸を焦がすのは、また貴方に会いたいという一つの想い。
=END=
作品名:The Beautiful Beast. 作家名:普(あまね)