SLAMDUNK 7×14 作品
あの後、目が覚めると学校に行く時間で、部屋の片付けもそこそこに、三井サンと二人で水戸の家を出た。開いていた襖の向こうの部屋では、高宮たちが大いびきをかいていたが、花道と水戸の姿は無かった。
明け方に扉が閉まる音を聞いた気がするから、あの時に出て行ったのかもしれない。
鞄を担いで、朝の町を二人で歩いた。
なんとなく気まずいのは、昨日オレがひどいことを言ったせいだ。
無言のままの空気に耐え切れず、意を決したオレは三井サンに並び、顔もろくに見れないまま、ゴメン、と謝った。
「何でオマエ? 謝んのは俺のほうだぜ」。
「え?」
「その、なんか、申し訳ねーんだけどよ。覚えてねえんだ、昨夜のこと…」
いかにも言いにくそうに、バツの悪そうな顔で前を向いた三井サンは、だからお前らに迷惑かけたんじゃねーかと思って、と言った。
覚えて、ない? いま、この人確かにそう言ったよな?
「覚えてないの?」
「おう…」
「…そう」
口の中は乾いていて、まともな声にはならなかった。
隣の人はその、とか、うー、とか、言葉になってない声を発している。
「いいんじゃないデスカ、それで」
思いのほかあっさりとそう言えた。
昨日の夜にあれこれと悩んでいた自分にしては、本当にあっさりとそう思ったのだ。
覚えてないんなら、それでいい、と。
俺、きのう何かした? と聞いてくる三井サンに、いいえ、と曖昧に笑ってこたえた。
学校に着いて、授業を(寝て)受ける。
昼休みになった頃に見た三井サンは真っ白な顔をしていて、気持ちが悪い、としきりに唸っていた。
ま、それくらい。我慢しなよ。
だってオレはさ、おバカなアンタのせいで、謝りそこねた上に、告白までしそびれたんだから。
「な、オマエほんと、大丈夫?」
またトリップしていたオレを見て、三井サンは心配そうに言った。
大丈夫スよ、とにやりと笑う。
「そうかよ」
そのまま首にかけたタオルで汗をぬぐう。あちぃ、と彼は何度も繰り返した。
「決勝リーグ、始まりますね」
体育館の入口でバカ笑いする桜木軍団を見ながら、オレも流れてくる汗を拭いた。
「この三井寿のおかげでな」
「あー。じゃ、それでいいです」
自信たっぷりなあの人に、そっけない返答を返すと。
それでいいって何だ、と予想通りの反応が返ってきておかしかった。
いつかアンタが言ったように。
「話はゆっくり、でいいですよね」
急接近できなかったのは残念だけれど。オレ達にはもう少し時間が必要なのかもしれないね。
自分自身の気持ちとも、もっと真剣に向き合ってみよう。
いきなり突拍子も無い事を言い出したオレに、今度はいたわる様な視線を向けてきた。どうやらオレの頭の中を心配してくれているらしい。
集合の声がかかった。
立ち上がり、コートの中央に向かって走り出す。
その先にあるものを目指して。
全国に連れて行ってやるよ、三井サン。
オレたちは、そこからだ。
作品名:SLAMDUNK 7×14 作品 作家名:鎖霧