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Crazy Party

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パーティーや社交界の、きっちりと決まったステップを踏むタイプのダンスは得意だったけれど、こういう音に乗って、からだを自由に動かすというパターンは皆目、分からなかった。

しかも、このハイヒールでうまく動ける自信もない。
人がたくさんいるホールで、滑って転ぶかもしれなかった。
それだけはどうしても避けたい。

助けを求めるように、チラリと隣に視線を送ると、ガムを噛んでいたザビニは仕方なさそうに肩をすくめて、助け舟を出してくれた。
「いきなり、入ってきたばかりで、ダンスはないんじゃない。喉が渇いているから、とりあえず何か飲みたいなぁ」
男は頷き、「ああ、気付かなくて悪かった」と謝った。

「なにか飲みたいものある?」
「ギムレット」
「ダイキリ」
それぞれがリクエストすると、男は立ちあがり、早速人が大勢でごった返している、カウンターへと進んでいく。

彼が人ごみに紛れていくのを確認すると、ザビニはドラコの腕を引っ張り、スツールから立たせた。
「さぁ、さっさと離れようぜ、ドラコ」
「――えっ、飲み物は?」
「ばっかじゃないのか。あいつとずっと、いっしょに居てみろ。ろくに話してもいないのに、いきなり、ドラコの腰に手をまわしてきた男だぜ。1時間もしないうちに、ヘロヘロになったドラコを、お持ち帰りする気マンマンだ」

「……僕はそんなにアルコールは弱くないぞ。ちょっとやそっとじゃ、酔っぱらわない自信もあるし、アルコールで失態することのないように、教育はちゃんと――」
ムッとした顔で反論し続けるドラコに向かって、「シャラップ!」と、ザビニはいつもとは全く違う、ドスのきいた低い声で、相手の言葉を遮った。

「アルコールだけなら、ドラコの『清くて正しいお酒との付き合い方マニュアル』も役立つとは思うけれど、クラブでは無理だ。酒にはドラッグも入っているかもしれないと、普通に考えておけよな」
「……粉とか、溶かしてあるのか?」
「もちろん、店のバーテンダーが入れる訳じゃない。今みたいに相手に取りに行って貰って、持ち帰ってきたグラスは要注意だ」
「そうなのか?」
ドラコは眉間にシワを寄せる。
そんな物騒な所へ来てしまったのかと、やや不安そうな顔になる。

「いや、全部が全部って訳じゃないし、そんなに危険がいっぱいある訳じゃないから。ただ、自分の身は自分で守れっていう自己責任で、遊べってことだよ」
ザビニはドラコの肩に両手をまわして抱きつき、耳元に唇を寄せてささやいた。

「それに……、もしヘマやって、一夜のアヤマチがあったとしても、安心しろ。――僕たちは絶対に妊娠しない!」
ハハハと笑い声を上げて、ドラコの肩をたたいた。
自分のジョークに自分自身がウケて、大笑いしているようだ。

ドラコは呆れたように相手を見たけれど、言われてみれば、それはそうだった。
誰もわざわざ女装してまで、こんな場所にやってくるヤツなんて、自分たち以外にそういるはずもない。
「知り合いもいない、性別も変えているから、ここじゃあどんなことをしてもオーケーなんだ。最初言ったとおり、バカやっても、ハメ外しても、バレないんだ!100%の自由だぜ、ドラコ!」
焚きつけるようにザビニが言ってくるから、ドラコもしぼみかけていた気分が、再び盛り上がってきた。

「とりあえずアルコールだ。何か飲みながら、これからどうするか考えようぜ」
「ああ、分かった」

例の男と鉢合わせすると面倒なので、もうひとつ奥のフロアーへと進んでいく。
最初のところより、更に照明は暗めだったけれど、さっきより、かかっている音楽は五月蠅くはなかった。

カウンターの中のひとりのバーテンに近寄り、カウンター越しにふたり分の飲み物を注文する。
わざわざザビニは、代金のコインを胸の谷間のブラから取り出して、相手に渡した。

あからさまな行為に、ドラコは目を見開いたけれど、ザビニは「見せブラだからいいんだ」とか、訳のわからないことを言って、グラスを受取り、その場から立ち去っていく。

「ああ、ついでにドラコのブラも、そのタイプだから、別に見せてもいいぞ」
とか、女性下着に詳しくないドラコに、余計なアドバイスまでする。
「別に誰かに見せるつもりはないが」と反論すると、「まーた、また。ドラコがお堅いのは、最初だけじゃん」と、意味深にウィンクした。


作品名:Crazy Party 作家名:sabure