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353訓~360訓ネタバレ銀桂小話集

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糖度が足りなかったので(ツッコミ不可の断片)



桂の家で、エリザベス失踪事件の真相を知ったあと。
「おまえら先に帰ってろ」
銀時は新八と神楽に言った。
すると、新八と神楽は首をかしげた。
「どうしてアルか」
「まさか、銀さん、危険だからって僕たちを遠ざけて、桂さんとふたりで解決するつもりじゃ……」
「そんなんじゃねーよ」
真顔で銀時は告げる。
「欲情した」
「「はァ!?」」
「そーゆーわけだから、おめーらにここにいてもらっちゃ困るんだよ。この先は子供には見せらんねーから」
「私はもう子供じゃないアル!」
「いやいやいや、子供だよ、神楽ちゃん! わかりました! 先に帰ります」
新八はすっかりあせった様子で神楽の腕をつかんで家の外へと向かう。
しかし、ふと、思い出したように銀時を振り返った。
「でも、ちゃんと万事屋にもどってきてくださいね!」
「あー、わかったわかった」
銀時は手のひらを軽く振って答えた。
新八と神楽は家から出て行った。
しばらくして。
「もう行ったよーだな」
ちゃんと新八と神楽が遠くまで行ったかどうか耳をすませていた銀時は、桂のほうを向いた。
「そのようだな」
桂はうなずく。
真面目な表情。
切れ長の眼は鋭い。
「それで、ふたりを帰らせて、いったい、なに……、え!?」
桂が戸惑いの声をあげた。
間近まで迫っていた銀時に押し倒されたからである。
「え、じゃねーだろ」
銀時は桂を見おろす。
「さっき、ちゃんと、欲情したって言っただろーが」
「あれは新八君たちを立ち去らせるための嘘ではなかったのか!?」
「ああ、そーだ、嘘じゃなかったんだ」
「銀時! この緊急時に冗談じゃない!」
「冗談のつもりはねえよ」
抵抗する桂の手をとらえて、畳へと強引に押しつける。
さらに、その身体にのしかかった。
至近距離で告げる。
「忘れないでくれ」
「なにを……」
「エリザベスがいなくなったのに気づかなかったのは、記憶を消されてたからだろ」
エリザベスに記憶を消す薬を飲まされたのだ。
だからこそ。
とはいえ。
「でも、なんか、ついうっかり想像しちまった。なんでか、おまえが俺のことを忘れるのを想像しちまった」
バカげた想像だ。
しかし、バカげているとわかっていつつも、胸がチクリと痛んだ。
「俺ァ、おめーにロクなことしてねーが、俺のこと、忘れないでほしい」
自分から去ったこともあるくせに、忘れられることを想像すると、無性に寂しくなった。
「おめーん中にある俺の記憶、くだらねーことばっかりだろーが、俺にとっちゃあスゲー重要だから」
幼い頃までさかのぼる、桂の中にあるはずの、いくつもの思い出。
それを忘れないでいてほしい。
わがままなのはわかっているけれど。
桂にだけは忘れられたくない。
その胸のうちに自分との思い出を残していてほしい。
もしも忘れ去られたら。
どうしようもなく寂しい。
「……なにをバカなことを」
少し間があってから、桂は言った。
「俺がおまえのことを忘れるなぞ、ありえん」
そうきっぱりと告げたあと、ふっとその表情がゆるんだ。
笑ったのだ。
優しく。
眼に見えない力で引っ張られた気がした。
だから、身を寄せていき、唇を重ねた。

「……ところで、忘れないと言ったのだから、もういいだろう」
「いや、欲情したって言っただろ、さっき」
「いや、この緊急時に冗談じゃないと言っただろうが、さっき」