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ノースキャロライナ

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同情で好きになってもらっても



 翌日、それをそのまま栄口へ提案したらあからさまに嫌そうな顔をした。迷惑とも言わんばかりの態度に水谷は少し面食らった。
「無理すんなよなぁ」
 既に着替えを終わらせた栄口は部室の外でボールを磨いていた。他の部員たちが着替える間の暇潰しらしい。
「水谷だって中学の子のこと、好きになんなきゃいけないって思って好きになったわけじゃないだろ」
「そりゃまぁそうだけど」
「同情で好きになってもらっても……」
 好きになってもらっても、何なんだろう。水谷は続きを待ったが、栄口は言葉を止めたまま磨いたボールをカゴへ放った。
「栄口を好きになってみたいんだよ、オレ」
「何気にひどいことをさらっと言うんじゃねーよ」
「なんでひどいんだよ」
「それを言わせるか」
「だって栄口はまだオレを好きなんだろ?」
 ぴたりと手を止め、栄口は顔を上げた。
「あれ? 違う?」
「……オレは器用じゃないから」
「うん」
「そんなにすぐに気持ちを変えられない」
 水谷からしてみれば栄口は十分器用な部類に入ると思う。ボールだって水谷より早くきれいに磨くことができる。でもそれが今の話にどういう関わりがあるのか理解できない。
「え? だから?」
「なんかマチダの苦労がわかってきた……」
 絶対そうやっていつも相手の話の腰を折ってたんだろう、栄口の鋭い指摘が水谷を黙らせる。はぁ、と力無いため息をつき、栄口はまた作業へ戻った。慣れた手つきでどんどんボールをきれいにしていく。
 人から遅れて笑うことがある。栄口は水谷を好きになった理由をそう述べた。そんなこと言われるまで知らなかったから、今日一日誰かと話す際、水谷は自分の笑うタイミングばかり気になって仕方なかった。
 検証してみても栄口がオレに惹かれてしまった理由が見当たらない。むしろ顔がいいとか声がいいとかのほうがよっぽど納得できる。

作品名:ノースキャロライナ 作家名:さはら