ノースキャロライナ
水谷とマチダは三年になって初めて同じクラスになったのだが、それにしてはわりと仲がいいほうだった。出席番号が前後なのもあってテストの際、一度だけサインを決めてカンニングを画策したこともあったが、もうわからんと早々に水谷が寝てしまったため、その企みは失敗に終わった。
水谷の好きな子が露呈してからはよりその距離が縮まった。相手の子に「あんたらホモっぽい」と言われ、その場はゲラゲラと笑っていたけれど後になって反省会を開いたこともある。
マチダに相談することはしょっちゅうだったが、最終的にはいつも「告らないの?」と聞かれ言葉に詰まっていた。そんなとんでもなく勇気の要ること、とてもじゃないけど自分には無理だった。
「でも好きなんだろ?」
「それはそうなんだけど」
「多分あいつと高校別だろ? いいのか?」
「だから余計悩むんだよ」
水谷とマチダの志望校は一緒だったが、その子は一ランク下の高校を希望しているようだった。
悩みに悩んだ末、年が明けてだいぶ経ったあたりで水谷はひとつの結論を出した。好きだった、それだけで十分だ、告白はしないことにする、と。マチダは黙って水谷の結論を受け止め、オレも言わなきゃいけないことがあると神妙な面持ちで語った。
「昨日三者面談で言われたんだけど、オレ西浦無理だわ」
「なんで、お前オレより余裕で頭いいじゃん」
「いや、ダメダメ。だから担任もランクひとつ落とせって」
仲の良いやつと同じ高校に行けないのは残念だったが、マチダがそうしたように、水谷も相手の決断を受け入れることにした。春にはお互いちゃんと高校生になってるといいな、と笑いながら小突きあった。
合格発表の日に一番真っ先にメールをしたのはマチダへだった。すぐに返事が来て、相手もまた受かったことを教えてくれた。自分のことよりもマチダの合格がうれしかった。
違う高校へ行ってもきっと友達でいられるはず。水谷はそう思っていたし、相手もまたそうだろうと考えていた。
けれどマチダからの連絡はそれ以来、ぱったり無くなった。