二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【Secretシリーズ 2】Truth -真実-

INDEX|10ページ/16ページ|

次のページ前のページ
 


太陽が真上に昇ったころに、昼食を兼ねた休憩をとることにした。
森の中の少し広くなったところに、ドラコは腰を下ろした。

大きなため息が出る。
ほうきでの移動は思ったよりも、かなり体力がいったからだ。
「あのころは何時間でも乗れたのにな。まったく」
独り言をつぶやくと、となりでなにやら、ごそごそしていたハリーは、顔を上げた。

「――えっ、なに?今何か言った?」
「いや、学生の頃は、ほうきに乗って疲れるなんてことはなかったのに、久しぶりに乗ったら、腕は痛いし、腰も痛いから、運動不足だなと思っただけだ。学校を離れてから、まだほんの少ししかたっていないのに……」
「ついでに、目も風に当たって乾いて痛いし、足を地面につけると、ずっと同じ格好で乗っていたから、しびれてガクガクするよ。まったく、僕もなまったもんだ!」
同意して、ハリーは笑った。

「もっと性能のいいほうきを今度買ってもらおうと、進言しなきゃな。これじゃ、やってられない。でもやっぱり無理か、僕たちは貧乏な陣営だからなー……」
ハリーは愚痴をこぼして、またごそごそ動いて、落ちつきがない。

「……で、君は何をしているんだ、ポッター?」
「昼食の準備。――今大切なトコロだから、ちょっと黙っててくれるかな」
杖を取り出して真剣に何やら呪文を唱えて、やがてバスケットに入った昼食と、白いフカフカの毛布が出てきた。

「あちゃー、間違えた!なんで、毛布なんだよっ!テーブルセットを呼び寄せようとしたのに。しかもこれはハーマイオニーのお気に入りのブランケットだ」
顔をしかめた。
「絶対にやばい!!」
ハリーの顔が引きつっている。

「なんだ?別にそのまま返せばいいだけだろ?」
不思議そうな顔でドラコは尋ねてきた。
「君はハーマイオニーの怖さを知らないから、気楽に考えているんだっ!彼女はこれが気に入っている。僕が勝手に持ち出したのがバレて、もし汚したりしたら、どんな目に合うか……。たしかに君の前では、彼女は甘すぎるぐらい、過保護だったさ。でも僕やロンの前じゃあ、めちゃくちゃ怖いんだ。怒ると、本当にもう……」
ハリーは小動物のようにブルリと震えた。

「頭がいいだけじゃなかったんだ」
「そりゃー、頭はきれるし、口は立つ。ついでに気も強いし、いざとなったらものすごい力も出すんだ」
「……たしかにすごい力はあるな。むかし、そういえば、ハーマイオニーから、思いっきり殴られたことがあったんだ」
あのときの場面を思い出し、ふたりは同時に頭を振った。
「――なっ、分かっただろ?なんで、ハーマイオニーが僕たちのリーダーなのか……」
「ものすごく理解した」

二人は、仲間が用意してくれたサンドイッチを、もそもそと食べた。
あまり食欲はない。
それはハリーも同じようなものだ。

ハリーはまた小さな咳をしている。
この移動で、かなり体力を消耗したようだ。

ドラコは差し出された、甘ったるいココアを飲みながら、言った。
「これを食べたら、もうお前は帰っていいぞ。ここからなら、自分ひとりで大丈夫だから。もうお前はあっちへ帰れ!」
突き放すようにドラコは言った。

「だって、最後まで送り届けるって、約束だから……」
「もう、いい。僕ひとりで十分だ」
ハリーはじろっと、ドラコをにらみつけた。
「君が命令しても、帰らないからね!僕は頑固なんだ。融通もきかない。一度決めたことは、最後までやり通すのが、僕の流儀なんだから」
「それがいろんな敵を負かしてきた、勝利の一因なのか?」
「ああ、全てだね!この意味のない根性だけで、生き抜いてきたんだ!僕のポリシーは変えられない!」
「…………だったら勝手しろ、このバカ」
ふいとドラコは横を向いた。

(せっかく、めんどくさい移動から開放してやるって言うのに、なんだこの恩知らずな態度は!体力も弱っているんだ。さっさと自分の寝ぐらへ帰って、休んだほうが得策じゃないか。……もし、別の自分がそう言ったら、きっと笑ってすぐそいつの言うことは聞いたくせに!何でも全部、きくくせにっ!――――ああ、ハラが立つ!)
結局自分ではダメなんだということが、思い知らされただけだ。

「――少し休む。1時間したら起こしてくれ」
そう言うと木にもたれて、ドラコはふて腐れて目をつぶった。
本当は少しでも休憩をハリーに取らせたかったから、そう言ったつもりだったが、結局自分のほうがすぐに眠りに落ちてしまった。

それを見て、ハリーは毛布を相手にかけた。
きっと汚すと、こっぴどく怒られるのは分かっていたけれども、ハリーは厳罰覚悟をきめる。
(ハーマイオニーの雷の心配より、ドラコのからだのほうが大切だ。戸外での昼寝には寒すぎるからね)

白い毛布に包まれたドラコは、ほんとうにかわいかった。
笑みがこぼれる。

ドラコの寝顔を最後に見たのは、いつだったろうか?
もうずっと見ていないような気がする。

自分といっしょにいた頃は、一人で寝られなかったのに、本当のドラコは一人で寝られるんだと、そんな当たり前なことにも驚いた。
いつもいつもいっしょにいたから、もうドラコの知らないところなど、どこにもないと思っていたのに、本当の彼は、全く別の一面ばかり見せて、余計にハリーをドギマギさせる。

あまりも好きすぎて、どうしようもなかった。

素直だったドラコも、このふて腐れてケンカ越しのドラコも、みんな好きだった。

(――でももう、会うことはないんだ)
ハリーはため息をついた。
咳が余計にひどくなる。

(体力が落ちているな。ハーマイオニーが言っていたけど、この咳はストレスから来てるらしい。……咳ばかりが出るよ。きっとドラコと離れたくなくて、咳き込むんだ。本当僕のからだは正直だな)
ハリーは苦笑した。

(――しっかりしなきゃな。ドラコを送り届ける最後まで、しっかりしなきゃ……)

もうハリーはドラコを思って、泣くことはなかった。
こんなにも幸せなのに、なにも泣くことはない。

いろんな覚悟は最初からしていた。
迷いはなかった。


――――ハリーには、強く心に決めたことがあった。