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【Secretシリーズ 2】Truth -真実-

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ハリーは迷うことなくドラコを抱え上げると、屋敷の中へと入っていく。
扉を開け、大階段を駆け上がり、たくさんの人がいる大会議室へと急ぐ。
息が上がり、目がくらむ。
それでも、ハリーは走り続けた。

必死だった。

ドラコ、君が死んだら、もう自分は生きてはいけない。
生きている意味すらない!


ハリーは部屋の中心に座っていたドラコの両親に、彼のからだを差し出した。
「古い呪いを自分でかけました。──ドラコを助けて下さい。どうかお願いします」
そう言うと、ハリーは深く頭を下げた。


ドラコのことが好きだった。

ニセモノとか本物とか、そういうものではなく、ただ、ただ、ドラコのことが好きだった。

愛したかった。

好かれたかった。

大切にしたかった。

幸せにしたかった。

ハリーは涙がこぼれてどうしようもなかった。


「ドラコはとても純粋だから、いつも誤解ばかりされていました。思っていても言えないことを、彼は恐れもなく、相手に告げる勇気がありました。馴れ合いの甘えた関係を嫌い、それを選ぶくらいならと、あえて、孤高の中でずっと立っていました。いつも彼は、強い逆風の中で、ひとりでしっかりと立っていました。僕みたいに、仲間や友達に甘えることもなく、愚痴も言わず、弱音も吐かずに、ずっと一人で頑張ってきました。――――だから、助けて下さい。ドラコを助けて下さい。彼が助かるのでしたら、何でもします。僕の命なんかいりません。だから、彼のことを助けて下さい。お願いします」

ドラコの両親は交互に、ハリーと彼の腕の中でぐったりとしている、帰ってきた自分の息子を見て戸惑っている。

「ドラコは本当は、とてもやさしい性格です。彼ほどやさしい性格の者はいません。こんな僕ですら、助けようとしてくれました。だから助けて下さい。お願いします。僕は彼の幸福だけを願っていました。ずっとずっと、彼のことだけを思っていました。ドラコの幸せだけを願ったのに、こんなことになるなんて…………」
ハリーは言葉に詰まって、何も言えなくなってしまう。

ルシウスは無言で、ドラコのからだを抱え上げた。
そして、そのまま奥の部屋へと消える。
ナルシッサは集まっているものに会議の解散を告げると、ハリーに「いらっしゃい」と呼び、夫のあとへと続いた。
長い回廊を渡り、たどりついたドラコの部屋のベッドに、彼は横たえられる。

「――――まったくなんということだ」
ルシウスは苦い顔で呟いた。
「この呪文は本当にドラコが呟いたんだな?」
ハリーは頷く。

「なんていうことだ。ドラコが貴様を選ぶなんて!」
いまいましそうにハリーをひと睨みすると、自分の杖を振った。
深くて長い文言のような言葉が続き、それに呼応するように、ドラコのからだが痙攣する。
意識を失っている彼の額に汗が浮かび、苦悶の表情に変わる。
低い旋律に、ドラコの体が強く強張る。

いくら時間が流れたのか分からない。
ゆっくりと戒めが解かれるように、緊張した体から、次第に力が抜けていく。
杖を下ろし最後の呪文を呟くとその途端に、ドラコは深く呼吸を始めた。
まるで息を吹き返したように。

ハリーはほっとした顔になる。

ルシウスは目を細めて、ドラコのほほを撫でた。
やさしい顔をして。
冷や汗で濡れた前髪をぬぐってやる。
そして、何も言わずに部屋から出ていった。

「ドラコはどうなったんですか?」
ハリーはナルシッサに尋ねた。
「もう大丈夫よ。呪いは解けたわ。あの呪文を解くのは、この家の代々の当主にしかできないの。一族の長のルシウスに頼ったあなたの行動は、間違ってはいなかったのよ」
彼女はにっこりと笑った。

「ドラコのかけたの呪文は、先祖から代々伝わるもので、めったに使わないし、使うこともできないものなの。とても古くて、深くて、重いものよ。あの呪文は、自分ではなく、相手を守るためにするの。自分の命より大切な守りたい相手にしか使えないし、その効力もないわ。ドラコはあなたを守りたかったのね。誰よりも、あなたのことを──」
ナルシッサはドラコの肩に毛布をかけて、その額に優しくキスをした。

「ドラコの選んだ相手が、あなただったなんて」
フフフと笑う。
彼によく似た、それよりも深い水色の瞳で微笑んだ。

「ドラコはいつもあなたのことを言っていたわ。怒ったように、癇癪までおこして。あれは嫌いだから言っていたのじゃなくて、逆の意味だったのね」
ナルシッサはハリーの手を取った。

「……ありがとう、ハリー。ドラコは本当に生き方が下手で、いつも誤解ばかりされて、まわりは敵だらけだったわ。もっと上手に立ち回ったら、こんなにも一人ぽっちにならなかったのにと、ひどくわたしたちは心配していたの。プライドが高いから、弱音も言わないし、いつあの子が倒れるか心配で仕方なかったわ。あなたがそれに気づいてくれて、本当によかった。ドラコが目を覚ますまで、ここにいて頂戴ね」

「――えっ?でも僕は、あなたたちの敵だ。あいつに差し出されるのでは?」
ハリーは驚き、目を見開いた。
「確かに、憎い敵だけどしょうがないわ」
ナルシッサは肩をすくめる。

「だって、わたしはあの方の傘下にいるけれど、それよりも、ドラコの母親ですもの。子どもの幸せを願わない親なんて、この世にはいないわ。それはルシウスも同じよ。明日の朝までならば大丈夫。それから以降の保障はしないわ。ルシウスもわたしも、ひどく気分が変わりやすいの。明日になって、まだこの屋敷でぐすぐすしていたら、敵の陣営に落ちた裏切り者は、身内だって容赦しなくなるかもね。――――お分かり?」
そう言って、意味深に目を細めた。

ハリーは意味を理解して頷いた。
「ええ、ドラコは僕たちの仲間です。裏切り者じゃありません。そして、彼を大切にします。もう絶対に泣かせたり、寂しい思いなんかさせません。誰よりも大切にしますので、安心して下さい」
しっかりとした声で答えて、頭を下げた。

ナルシッサはもう一度微笑むと、ハリーのほほにキスをして、部屋から去っていった。