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【Secretシリーズ 2】Truth -真実-

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第3章 遠い記憶



「だから、4時間おきに、嫌がっても無理に飲ましなさいと、あれほど言ったじゃないの!」
「ごめん」
ハーマイオニーの声は甲高く、ドラコの頭に響く。
うるさそうに寝返りを打った。

「あら、起きたみたいよ。薬が効いている、兆候ね。よかったわ」
冷たく冷やされたタオルに交換されて、気持ちがよかった。
少し目を開くと、ハーマイオニーとロンの顔が飛び込んできた。
その違和感に、ドラコは顔をしかめる。

(なぜ、自分の近くに、あいつはいないんだ?)
ひどく不機嫌な気持ちになった。
黒髪の誰かを探してしまいそうになる。意識せずに──

「気分はどう、ドラコ?」
ドラコはジロッと相手を見る。
「――すまないが、ミスグレンジャー。僕は馴れ馴れしくファーストネームで呼ばれることがキライでね。ドラコではなく、マルフォイとよんでくれないだろうか?」

ハーマイオニーとロンはびっくりした顔で見合わせた。
「ああ、それと、ロン。君のことはウィーズリーとは呼ばないから、安心しろ。この家にはウィーズリーがたくさんいるようだからな」
フンと鼻をならす。

「なんてイヤなヤツなんだっ!」
ムッとした顔でロンが毒づくのを、ハーマイオニーはたしなめた。

「――――じゃあ、ご気分はどうかしら、ミスターマルフォイ?」
「悪いね。最悪だ」
「それはしょうがないわ。あなたが昨日、お薬を飲まなかったせいよ。ちゃんとハリーに渡したのに」
「そのうわさのポッターが、今日はいないようだが?」
その言葉にロンは噛み付いた。

「ああ、寝ているさ。別の部屋でなっ!君がハリーを部屋から追い出すから、暖炉の火も消えた大広間で、毛布もかけずに眠ってしまって、高熱を出している。かなりひどくて、肺炎も起こしかけているよ。本当にハリーが動けなくて、君の見舞いにも来れなくて、すまないね!」
「――――肺炎だって?」
「ちょっと、やめなさい。ロン!ドラコも病気なんだから!」

ドラコは口をゆがめて皮肉を言った。
「かなり自己管理が甘いんだな、ポッターのやつ。そんなところで毛布なしで寝ると、肺炎を起こすくらい分かるくせに、まったく!」
ロンはたまらず、口の減らないドラコの襟首をつかんだ。

「いいか、おまえのせいだぞっ!お前が追い出すからだっ!ハリーはきっとショックで、昨日は何も考えることができなかったんだ。――――ああハリー、ごめん。僕がもっと君のことを気にかけていれば…………」
ロンの瞳が涙ぐむ。
ハーマイオニーは隣で我慢できずに、泣き出してしまった。

ドラコは意味が分からず、顔をしかめる。
「――――僕のせいだって?」
「そうだ!おまえがハリーを傷つけたんだっ!くそーっ!!」

「もう、やめて、ロン!ドラコのせいじゃないわ。あの子は、あんなにもハリーのことを慕っていたじゃない。ハリーはこうなることも、もうずっと前から分かっていたはずよ……。ここにいるのはドラコじゃないわ。普通に戻ったマルフォイよ。……もう素直なあの子は、どこにもいないのよ…………」
ポロポロとハーマイオニーは涙を流して、ロンを説得する。

ドラコは頭痛がしてきた。
意味が分からないからだ。

(こいつらは、いったい何を言っているんだ?僕がポッターに懐ついていただって?何をバカなことを言っているんだ?)
気分がひどく悪くなった。
風邪の悪寒よりも、ひどい気分だ。

心のどこかで、何かがひっかかる。
あれはいったい何の記憶だろう?
ひどく暖かくて幸せな感触がする。



――――あれはいったい何だ?



自分の父親でもない、母親の記憶でもなかった。
それなのに、とても心地がいい記憶だった。
無理に思い出そうとすると、雲を散らすようになくなってしまう。


──あの記憶は何だろう?


――それは、ポッター。おまえと僕に関係することなのか?