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【Secretシリーズ 2】Truth -真実-

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第4章 戸惑い



風邪で体調は悪かった。
ひどい頭痛がする。
足元がふらついた。

それでも真夜中に、ドラコはベッドから立ち上がり、部屋を出る。
左右を確認して、廊下には誰もいないことを確かめた。

廊下はひどく冷えている。
ロンから聞き出した部屋は、この階の突き当たりの部屋だと言っていた。
セントラルヒーティングなど皆無だろう。
旧式の家だ。
素足で歩くと足の裏が氷のように冷たく、ドラコは文句のひとつでも出そうになるのを、ぐっと我慢する。
誰かに、気づかれたら大変だ。

ゆっくりとその部屋に近づき、ドアを開けた。
狭苦しい部屋には、窓すらなかった。
多分ここはずっと物置として使っていた部屋にちがいない。
急ごしらえでベッドが運ばれて、そこにハリーは眠っていた。

――浅い呼吸を繰り返して、苦悶の表情で、ひどくうなされている。
顔色は青く、ぐっしょりと寝汗をかいていた。

それを覗き込むと、ひどく胸が痛んだ。
だが自分は、ハリーが寝込んでいても、同情することことなと、ないはずだ。
彼とはずっと敵対していて、友情などはなく、顔を付き合わせればいつもケンカして、争ってばかりいた。
最悪な記憶しかない。


――それなのに…………


ドラコはそっと相手に呼びかけてみる。
「──ポッター……」
その声にハリーは気づかない。
苦しそうな息を繰り返しているだけだ。

ドラコは思い切って、もう一度、別の名前を呼びかけてみる。
「――ハリー……」
それは一度も呼んだことはないのだけれど、ひどく呼びなれたように、自分の口から自然と出てきた。

ゆっくりと、彼のまぶたが動いた。
何度か瞬きをすると、そこに立っている相手に気づいて、笑いかけてくる。
「どうしたんだい、ドラコ?そんな青い顔をして。また体調を崩したんだね。だから、もっと服を着ろとあれほど言ったのに……」

ドラコの顔がひきつる。
彼は誰かと自分を間違えているのだ。

その「誰か」は、いったい誰なんだ?!

ハリーは自分の体調も悪いはずなのに、ドラコの心配ばかりする。
高熱でほとんど意識がないのだろう。
意識があれば、ハリーはこんな笑顔をもう、ドラコの前でするはずもなかった。

ベッドの上の布団をめくると、「おいで」と呼んだ。
「ここにおいで、ドラコ。外は寒いよ」
ドラコは固まったように動かない。

「まったく君は、本当に手間がかかるね」
笑いながら、ドラコの手を取った。ゆっくりと自分のほうへと引っ張る。
ドラコは大人しく、ハリーのベッドに座った。

「君の手はなんて冷たいんだ」
その手を大切に包み込む。
ドラコはなぜ自分がこんなにも、相手の言うとおりにしているのか分からない。
何も考えられず、ただ──、ただ、ハリーの顔ばかりを見ていた。

「からだも冷え切っているじゃないか。ガウンも羽織らずにそんな薄着な格好で、どこへ行っていたんだい?」
ハリーはドラコの肩を抱いて、ベッドにそのからだを横たえさせた。
毛布も布団も多めに、ドラコの上にかけて、自分もそのとなりに寄り添う。

ハリーが愛おしそうに目を細めて、笑いかけてきた。
ひどく相手の顔が近すぎて、ドラコはドキマギしてしまう。
たまらず、顔をそらせた。

「何か、また君の機嫌を損ねたようだね、ドラコ。いったい、今度は何だい?朝食が不味かったのかい?着る服が好みじゃなかったのか?それともカードゲームでロンに負けたのがくやしかったのか?まったく、君のすねることの原因といったら、子供でも言わないような、ワガママばかりだ」
ハリーはからかうようにクスクスと笑った。
ドラコは真っ赤になる。

「誰がわがままだって!」
にらみつけると、ハリーは笑ってその目元に口付けをした。
ドラコの髪の毛をやさしく撫でて、耳元にささやく。
「いいよ。何を言ってもいいからね。君のどんな望みでも、わがままでも、全部を叶えるよ。――僕はきみはここにいてくれるだけで、とても嬉しいんだ」

眩暈がするほど、甘い言葉だ。

ハリーの瞳が何かを思って、揺れている。
「――本当は辛いよね。帰りたいよね。 ごめんよ、ドラコ。……ごめん。ここに居る君は本当のドラコじゃないことくらい、知っているから。だけどもう少しだけ、夢をみさせて欲しいんだ。あと少しだけでいいから…………」
ハリーはそう言うと、少しうつむいた。

「――僕はどんなことをしても、君を手に入れたかったんだ……」
ポツリと告げる。

その横顔があまりにも寂しげで、ドラコはそっと相手のほほに手を伸ばした。
ハリーはとても嬉しそうに、その手に頬ずりをする。
愛おしくてたまらないように、何度も。

「……苦しいな……。君のことを思うと、苦しくて、そして、なんて幸せなんだろう……」
ハリーはドラコの顔を見つめて泣いていた。

ドラコはどんなときにも泣かないと思っていた相手が、涙を流しているのを見て、愕然となる。
誰かが支えていないと、どこかが崩れてしまうほどの脆さを、ドラコの前にさらしている。
その姿はあまりにも無防備で、本当はひどく彼はもろいのかもしれない、と思った。

自分が思っているよりも、ずっと…………