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【Secretシリーズ 2】Truth -真実-

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第5章 木枯らし



ドラコの体調は、5日くらいで回復した。

しかし、ベッドから離れても彼は、何をするもでもなく、ぼんやりと一日中、部屋から窓の外ばかり見て過ごしている。
食事のとき以外彼は、一歩も部屋から出ようとはせず、中に閉じこもってばかりいた。

ロンやハーマイオニーや、ほかの仲間も、心配をして彼を元気づけようと、部屋を再三訪れるのだが、ただ冷たい視線を相手に浴びせるだけで、ことごとく無視をする。

もう一方のハリーのほうは、ドラコよりもいくぶん回復は遅く、ベッドから立ち上がれるようになったのは、一週間をすぎたあたりからだ。

みんなの話から、ドラコがひどく塞いでいることは聞いていた。
もしかしたらハリーを見たら、ドラコの気分もよくなるのではないかと、仲間が期待をした。
ある日の朝食時、空席だったその椅子に、ハリーが座っていることに、ドラコは気がついた。

でも、ただそれだけだった。
彼は何の感情も驚きもなく、視線を泳がせただけだ。
ハリーの表情も硬いままだ。

二人のあいだには、元から何もなかったような雰囲気までしてくる。
寄り添うように、仲睦まじかったふたりは、初めからいなかったような感じだ。

ハリーはまだ体調が思わしくなく、小さな咳をずっとしている。
時々、ひどい咳の発作で、涙ぐんでいた。
体力は格段に落ちて、時間があれば、いつも横になって眠ってしまう。
そこだけが彼の居場所があるように、夢ばかりみていた。


重苦しい毎日がすぎていく。
空は曇り、木々は葉を落とし、風が冷たく吹きすさんでいた。
冬の日々に暖かさはどこにもなく、もうすぐ雪が降るかもしれない。


ドラコが閉じこもって2週間がすぎ、とうとう痺れを切らしたハーマイオニーたちは、覚悟を決めたらしい。
奥の部屋にいたドラコを強引に、大広間に引っ張ってくる。
不機嫌な顔でドラコは、用意された中央の椅子に座った。
「――で、いったい用事はなんだ?」
横柄に足を組んで尋ねる。

その部屋には、メンバーの全員が揃っていた。
みんながドラコのまわりを、取りかこんでいる。
ハリーは彼から一番遠い席に座り、具合が悪そうに、ずっとうつむいている。
顔を上げることすらせず、小さな咳にからだを震わせていた。

ドラコはそっと、ハリーの様子を観察する。
うつむいてばかりだから、どんな表情をしているのか分からないばかりか、顔色すら伺えない。

(いったいどうしたんだ、あいつは!あんな病気ぐらいでへたるような、甘っちょろいヤツじゃなかったはずだ)
心の中で舌打ちした。

「わたしたちは決めたことがあるの。マルフォイ、――――あなたを解放することにしたわ」
ハーマイオニーはしっかりとした口調で、ドラコに告げる。
「わたしたちはあなたの後を追わないし、ここで見聞きしたことを、あなたの味方にしゃべったとしても、何もしないわ。全てありのままを、しゃべってもらっても結構よ。ただ、この隠れ家は、あなたが去るその日に捨てて、別の場所へ移動するつもりだけど」

ドラコは腕を組み、ゆっくりと全員を見回した。
「このメンバーの顔を、みんなしゃべってもいいのか?情報や呪文、合言葉もか?」
「ええ、いいわ」
みんなが頷く。

「僕を逃がすということは、自分の手の内をさらけ出すことになって、まったく利口な考えではないし、とてもバカな作戦に思えるのだが?」
ドラコは目を細めて、見下したようにと笑う。

「確かにバカな考えかもしれないわね」
その言葉に同意しながらも、ハーマイオニーは頭を振った。
「でもわたしたちは、マルフォイのことを人質だと思ったことはないし、いらない相手だと思ったこともないわ。そうよ、一度もよ……。この隠れ家にやって来たその日から、大切なわたしたちの仲間の一人として迎えたわ。それに、あなたは本当によくしてくれたわ。感謝しているの。本当にありがとう。――――ドラコ――――」
彼女は尊敬の念を持って、彼の手を取った。

その途端、ドラコの顔は真っ青になる。
からだが怒りでブルブルと震えた。

ドラコは知っていたからだ。
彼らが感謝しているのは別の、自分によく似た他人だ。
自分のことではない。分かりきっている。
だからあえて言ったのだ。

――――ドラコとっ!

ドラコはその手を振り払った。
泣きそうになるのを、必死で食い止める。

「ああそうか。分かったよっ!君たちの間抜けで、お人よしな申し出には、感謝するよ。この僕を見逃してくれるなんてね!――ただし、条件がある。君たちが勝手に屋敷から、僕を連れ出したんだ。その責任を取ってもらいたい。――――送ってもらおうか。僕を汚い手で勝手に連れ出した相手に、屋敷まで送ってもらう。それが条件だ!」
ハーマイオニーは少し困った顔をした。

「…………えっ、それは、ハリーのことを言っているの?……無茶よ。ごめんなさい。それは出来ないわ、ドラコ。ハリーは今とても体が弱っているから、別の誰かが、あなたを連れていくことにするわ」
「――――いいや、僕はポッターにお願いしたいね。ポッターが僕の運命を、ひどく捻じ曲げたんだからな!」

その言葉にゆっくりとハリーは顔を上げた。
ハーマイオニーに向かって笑いかける。
「僕ならいいよ。体調のことは気にしなくてもいい。元気になっているんだ。ただ咳が少し出るだけで、調子は上々だ。ちゃんと彼を屋敷まで送り届けるから、安心していいよ」

そしてドラコにも笑いかけた。
何も感情がこもっていない瞳で。

彼はドラコの顔など、なにひとつ見てはいない。
ドラコはその顔を見て、また涙が出そうになった。
叫びだしてしまいそうだ。


『こんな下らない世界なんか、今ここでなくなってしまえばいいのに』
と、心から思ったのだった。