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東方鬼人伝

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九郎自身は半信半疑の極致だったが

生来人を疑うことを知らぬ彼は茂村の話をジッと聞いていた


「俺も森原のじいさまのは妖怪の仕業さ思っとる、確かに狼にやられりゃ骨も残んねし、熊にやられりゃそりゃずたぼろにもなる。
だがな、森原のじいさまはな……いくつも体に風穴さ空けられてたんだぁ
ありゃ猪や人だってつけらんねぇ
できるとしたら妖怪くらいのもんだ」


「風穴……」


九郎は風穴と聞いた時、ふと思い当たる節があった


(そうだ、確かに俺らが見たのも霧の濃い日だあ)


「じいさまよ、もしかすっと俺らもその妖怪さ見たかもしんねえ」


「なに?! お前もか?」


「おう……小さくて……そうさな、女のわらしだった。
山にゃ霧が出たから危ねぇって声をかけようと思ったんだが……」


そこで一旦言葉を区切り

山の山頂をちらっと見てから続けた


「傍に寄ると、そのわらしはまるで幽霊みたく空を飛んでたんだ……」



二人の頬をぬるい風が撫でた



「間違いねぇのか?」


「うん、そのわらしが熊を仕留めるのも見たんだ。――――





森原老人が亡くなる数日前に


九郎は山に入っていた


「山ぶどうさ取って近所の皆と一緒に食うか」


小さな頃の九郎は山に頻繁に出入りし

いたずら盛りの為に祖父母が止めるのも聞かず山ぶどうや野イチゴを拾い歩いていた


「最近新しいやつが俺ら達の組に入って来たんだっけか、
こりゃもそっと多く拾わんといけんね」



駄菓子屋なども希少なほどの田舎では九郎が山に入って取ってくる山ぶどうが貴重な甘味であり


皆が怖がる山に平気で入る九郎は度胸と甘味の供給の二点で皆のリーダーになっていた



その日はなかなか木の実が集まらず

早朝から出かけたにも関わらず日は高く上っていた


「うーん、落ちとるはずなんだがなぁ……」



九郎はそのまま山の中を歩き続けていた


すると


にわかに霧が立ち込め始め
九郎は前後を把握出来なくなってしまった


「難儀だ、まさかこんな昼間に霧がかかるなんて……」


足元の感覚からどうにか右側が斜面、つまりは崖であることがわかった


しかし前に進めば麓なのか山頂なのかは以前としてわからず


九郎もさすがに困っていた

作品名:東方鬼人伝 作家名:faust