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東方鬼人伝

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「こりゃ夕暮れに帰れるか怪しいなあ」


山で拾った木の実を袋に入れて腰に結わえると

九郎はその場に腰を降ろした



すると


《グオオォ!》


熊の鳴き声が聞こえ、九郎の体が強ばる


霧の中で熊に見つかれば確実に命は無い


相手は鼻が利く為に自分を追いかけることができるが


こちらは霧のせいでなかなか思うように進めないのだ

とりあえず移動しなければ

そう思って一方を目指してひたすらに歩いた
そうする内に九郎は開けた場所にでた


「ここら辺……俺らの椎の木が生えとるから山の中程か?」


たまに踏む木の根をつたって木を探し当てると木の種類を確認する


椎の木には九郎が遊びでつけた傷と

近くに木こりが切り倒した古い木の切株があった


此処は山にのぼる際の休憩地点だった



「降りるつもりがのぼってきちまったみてえだあ。 こりゃあいけねえな」


緊張や霧で視界が悪いせいか

彼を疲労が襲い


九郎は仕方なく古い切株に腰かけた


近くに熊がいるかもしれない、


そう感じていたためか

九郎の服は汗で湿っていた


切株に腰掛けて息を殺す九郎少年に


獣の足音が届いた



そして



《ギャアウウ!!》


同時に獣の悲鳴も届いた


体が無意識の内に強ばり

足がすくむ


おおよそ体験できる訳もない状況に九郎は少なからず危機感を募らせていた


(せめて……霧が晴れれば、でもどうする?)


山から一目散と言いたいが、疲れたところを狙われるかもしれない


もしくは、先ほどの獣に悲鳴をあげさせた『何か』が霧が晴れ、露になった自分を狙うかもしれない


あれこれと思念がまとまらず四散する


そんな九郎を急かすように


霧が薄れていく



そして、200メートルほど先に


熊が血を流しながらこちらにくるのが見えた


その刹那


何か光のようなものが熊の脳天を撃ち抜いた


鈍い音を立てて倒れた熊は自分のちょうど50メートルほどまで近づいていた



「死んだのか?」


いつの間にか九郎は熊に向かって歩き出していた


妙な高揚感を感じ

恐怖感は感じない


熊の傍に寄る


ぐちゃ、と嫌な音を地面が発した

つい先ほどまで熊に満たされていた命が地面に溢れて、地面を赤黒い泥に変えていたのだ


「熊……」


「私の獲物に触らないでくれるかな?」


急に声が聞こえ

九郎は辺りを見回す

作品名:東方鬼人伝 作家名:faust