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ふざけんなぁ!! 8

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「遊馬崎、53番だ」
「はいっす!!」

フットワークの軽い彼が、ダッシュで衣装を取りに走っていく。
そして数秒後、「おおおおおおおおおおおお!!」と、物凄い歓声を上げた。
嫌な予感に、じくりと背筋が寒くなる。

「門田さん、やりました!! 凄いっす♪ ジャジャジャジャーン!!」
竜ヶ峰の時と同じように、明るく【運命】の冒頭に合わせ、彼が満面の笑みで見せびらかしたのは、真っ赤なノースリーブのシャツに、ブーツカットの真っ黒いスラックスだった。
胸の部分を大きく抉ってあるあのエッチくさいハートマークを見た瞬間、門田はぶんぶんに首を横に振った。

「俺無理、それ【キューティー・ハニー】だろ!!」
「ドタチン喜んで♪ 倖田來未バージョンの方だったから、現代風の歌よ♪」
次の予約曲を入力した狩沢が、とっても良い笑顔で親指を立てる。

「どっちでも同じだろがぁぁぁぁ!! 俺がそんなぱっつんぱっつんな、ちっちゃい服着れるかぁぁぁぁ!!」
「大丈夫ですよ門田さん、生地の素材、程よく伸びるジャージみたいっすから」
「だから、コスプレは拒否するって言っているんだ!!」

だが、そう叫んだ瞬間、門田は真っ赤なゴスロリ人形に扮した、渡草に胸倉を引っつかまれ、ぎゅうぎゅうに締め上げられていた。
「……なぁ、ここであんたが勝手にリタイアしてマイナス100点喰らっちまったらさ、俺達の掴み掛けた夢、すっげー遠のくんだけど?……やる前から敵前逃亡するなんて、あんたそれでも、俺が認めた漢(おとこ)かよ?」


ギラつく視線が尋常ではなく、ここで拒否したら最後、ナイフか何かでマジ刺されるかもしれない。
もう腹を括るしかなかった。
どんなに見苦しい、筋肉隆々な【如月ハニー】ができようと、またどれだけ自分が恥ずかしい思いをしようと、真剣にやり遂げなければ三人の仲間は納得しない筈。
門田は肩を落として黒いニット帽を脱ぐと、デジカメを手に持つ黒バイクを仰ぎ見た。


「あんた、武士の情けと思って、くれぐれも俺の情けないコスプレ姿を、映像に残さないでくれ」

彼女もまた、狩沢と同じように、親指をぐぐっと突き立ててくれる。
妖精の人情が心に染みて泣けた。


作品名:ふざけんなぁ!! 8 作家名:みかる